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支払サイトとは?意味や決め方、最適な期間について解説!

最終更新日:2022年01月04日

企業間で取引を行う場合、取引を行ったその日には代金の支払いを行わずに、後日一定期間分の取引の支払いをまとめて行うようなケースが多々あります。
このようなケースにおいて重要になるのが「支払サイト」と呼ばれる概念です。
支払サイトの設定は、企業の資金繰りや財務状況に大きな影響を及ぼします。

本記事では、支払サイトとは何かを解説するとともに、支払サイトの長さ、手形の支払サイトなどについて説明します。

支払サイトとは

 

支払サイトとは、取引代金の締め日から実際に代金を支払うまでの期間のことを指します。

私たちが普段お店で商品を買って現金で支払いを行うような場合は、取引を行うタイミングと代金を支払うタイミングが同じです。
これと同じように企業間の取引においても、取引が行われるタイミングと代金が支払われるタイミングが同じであれば、「支払サイト」という概念は必要ありません。

ただ一般的な商取引では、取引を行う際に都度支払いを行うのではなく、一定期間の取引分の支払いを決められた日にまとめて支払う、「掛取引」が行われることが多いです。
掛取引を行う際には、支払サイトをきちんと把握しておかなければなりません。

一般的な「月末締め翌月末払い」とは?

支払いサイトは一般的に、「月末締め翌月末払い」で設定されることが多く、月末から翌月末までの期間はおよそ30日なので、「30日サイト」と呼ばれることもあります。

たとえば、仮に「4月末締め5月末払い」だとすると、4月1日~4月末までに行われた取引分の代金を、5月末にまとめて支払うことになります。つまり、4月の月初に行われた取引に関しては、ほぼまるまる2カ月後まで支払いを待ってもらえることになるのです。

支払サイトは長いほうがいいの?

取引には代金を受け取る側と支払う側の2者が関わりますが、支払いサイトの長さの決め方には、両者の意図が関わってくることもあります。
代金を受け取る側と代金を支払う側、双方の視点から支払サイトの長さについて考えます。

受け取る側の支払サイトは短く

代金を受け取る側、すなわち商品を販売したりサービスを提供したりする側としては、支払サイトは短いほうが望ましいです。
支払サイトが長いということは、それだけ自社の利益が確定していない期間も長くなるということを意味します。また、売上を早めに回収してその分の資金を次の仕入れや設備投資、新たな人材の採用などに充てるためにも、支払サイトは短いのが理想的です。

ただし、支払サイトを短く設定しすぎると、自社側の請求書発行業務なども急いで行わなければならず、事務担当者の負担も大きくなってしまいます。現場の状況を踏まえたうえで、無理なく業務を行える程度の長さに設定しておくのがよいでしょう。

支払う側の支払サイトは長く

代金を支払う側としては、支払サイトは長いほうが望ましいです。
支払サイトが長く設定されるということは、それだけ支払いに猶予が生まれるということなので、資金繰りが安定しやすくなるからです。支払サイトが短いと期日通りには支払いできない場合でも、支払サイトが長ければその間に得られた利益を支払いに回すことも可能です。

また、場合によっては手元の資金を短期的に運用するという選択肢が生まれる場合もあります。
取引相手との力関係や関係性などにもよりますが、自社が代金を支払う側である場合は、支払サイトはなるべく長めに設定してもらえるように交渉するとよいでしょう。

支払サイトから会社の財務状況が把握できる

支払サイトは、会社の財務状況を把握するうえでも重要な概念です。

会社の財務状況を把握するためにチェックすべき要素のひとつに、「仕入債務」があります。
仕入債務とは、仕入れを行ったもののまだ代金の支払いを行っていない債務のことです。買掛金ともいいます。

仕入債務は、まさに支払サイトが設定されている取引で仕入れたことを意味するものです。今後支払わなければならない義務があることから、仕入債務は賃借対照表上では「負債」に分類されます。
つまり、仕入債務が多ければ多いほど、経営が苦しい状態であるということが分かるのです。

以下では、仕入債務を用いて算出される2つの指標、「仕入債務回転率」と「仕入債務回転期間」について、説明します。

仕入債務回転率

仕入債務回転率は、仕入債務の支払いをどの程度効率的に行っているかを示す比率です。
経営の効率性を分析する際に用いられる指標のひとつで、以下の式で算出されます。

仕入債務回転率=(売上原価÷仕入債務)×100

式からも分かるように、仕入債務が多くなればなるほど仕入債務回転率は低くなりますが、これは支払いに時間をかけていることを意味しています。
「支払いに時間をかけている=支払サイトが長い」ということなので、支払いに猶予があるという点では望ましいです。しかし、場合によっては支払い条件が悪化していたり資金不足のために支払いを遅延したりといったことも考えられます。
実情を踏まえたうえで、必要な対処を考えなければなりません。

仕入債務回転期間

仕入債務回転期間は、仕入れを行ってから代金の支払いが完了するまでにかかる期間のことで、日数または月数で表されます。

日数で表す場合は仕入債務回転日数、月数で表す場合は仕入債務回転月数とも呼ばれますが、仕入債務回転日数と仕入債務回転月数それぞれの算出方法は、以下の通りです。

仕入債務回転日数=仕入債務÷(売上原価÷365)
仕入債務回転月数=仕入債務÷(売上原価÷12)

仕入債務回転期間が長いということは、仕入れを行ってから代金の支払いを行うまでの期間が長く、キャッシュが手元に残りやすいということを意味しています。

資金繰りの観点からすると望ましいことではあるのですが、「財務状態が厳しいがゆえに支払いを遅らせている」と捉えられてしまう可能性もあるので、注意が必要です。

手形の支払サイトについて

掛取引を行う場合、支払いは現金もしくは口座振込で行われることが多いですが、業種によっては支払いに手形が用いられることもあります。
現金や口座振込による支払サイトと手形の支払サイトの違いについて、以下で説明します。

手形の支払サイトは長い

手形の支払サイトは、通常の掛取引の支払サイトに加えて、手形振出しまでの期間が発生するので、結果として通常の支払サイトよりも長めの期間になることが多いです。
例えば、「月末締め翌月末起算30日手形」の場合は、手形振出しまでの期間30日に加えて手形サイトが30日となるので、結果的に60日サイトになります。

手形の支払サイトの決め方のポイント

手形の支払サイトを決める際は、手形振出しまでの期間も踏まえたうえで決めることが重要です。
通常の支払サイトを決めるときよりも、考慮しなければならない要素が1つ増えますが、慣れてしまえばそこまで難しくはありません。

また、手形を利用する・しないに関わらず、最初に決めた支払サイトを後から変更するのは難しいことが多いです。支払サイトを決める際は、最初によく話し合い、双方が納得したうえで決めるよう心がけましょう。

下請け代金の支払サイトは60日以内

代金を受け取るのが下請け会社で代金を支払うのが元請会社や親会社の場合、双方の力関係により、支払サイトを通常よりも長く設定されてしまうことが懸念されます。
しかし、下請け代金の支払サイトに関しては、下請代金支払遅延等防止法(通称:下請法)によって、60日以内のできるだけ短い期間で設定することが定められています。

“下請代金の支払期日は、親事業者が下請事業者の給付の内容について検査をするかどうかを問わず、親事業者が下請事業者の給付を受領した日(役務提供委託の場合は、下請事業者がその委託を受けた役務の提供をした日。次項において同じ。)から起算して、六十日の期間内において、かつ、できる限り短い期間内において、定められなければならない。”
[引用元]e-GOV法令検索:下請代金支払遅延等防止法(第二条の二)
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=331AC0000000120

下請法が適用されるのは、発注側と受注側がそれぞれ以下のような規模の会社の場合です。

発注側 資本金3億円超の法人
受注側 個人または資本金3億円以下の法人

発注側と受注側が上述した条件にそれぞれ当てはまる場合は、支払サイトを60日以内に設定しましょう。

支払いサイトで困った際の対処法

支払いを受け取る側にとって、支払サイトが設定されている以上、その期間はキャッシュを手に入れることができませんが、会社の資金繰りの関係上、支払サイトを待たずに現金が必要になることもあります。
そのような場合は、売掛金を買い取ることで現金化してくれる、ファクタリングというサービスを活用するのがおすすめです。

ファクタリングには2社間ファクタリングと3社間ファクタリングがあります。
2社間ファクタリングであれば、売掛金保有企業とファクタリング会社の間だけで手続きが完結するので、取引先にファクタリングを行っていることを知られる心配もありません。
3社間ファクタリングは取引先の許可が必要な分ハードルが上がりますが、その分手数料を抑えられます。したがって、2社間ファクタリングと比べるとコストがかからず、多くの現金が手元に残る点がメリットです。

どちらにもメリット・デメリットがあるので、それぞれのメリットとデメリットを踏まえたうえで、2社間と3社間どちらのファクタリングを利用するかを判断しましょう。
また、取引先との関係性によっては、前払いでの支払いを交渉したり、売掛金の一部だけを入金してもらえるようお願いしたりといった方法も考えられます。

支払サイトの考え方を正しく把握しよう

支払サイトは掛取引を行うことが多い日本の商習慣においては、非常に重要な概念です。
自社が代金を受け取る側なのか支払う側なのかによって、長いほうがよいか短いほうがよいかは変わってきますが、自社と取引先の双方にとって無理のない期間を設定することが重要です。
支払サイトよりも前に資金が必要だという場合は、ファクタリングの利用や取引先との交渉を検討しましょう。