社内コラムファクタリング関連の情報をお届けいたします

手形の裏書とは?メリットやデメリット、ファクタリングとの違いを解説

最終更新日:2021年12月21日

約束手形はすぐに現金化できないため、時間がかかることによって企業の資金繰りが悪化してしまうかもしれません。
約束手形を少しでも早く現金化する方法には、手形の裏書譲渡という方法があります。

この記事では約束手形の裏書譲渡の具体的な方法やメリット、デメリットについて解説いたします。

手形の裏書とは、手形を早期に現金化する手法のこと

ビジネスにおいては、代金を現金ではなく約束手形で受け取るシーンが発生するものです。手形支払いを受けたときには、振出日から支払期限まで保有した上で換金を行うことになります。
手形の振出日から支払期日までの期間には3~4カ月程度かかるのが一般的です。手形支払いを受けると現金化までに時間がかかってしまい、手形が原因で企業の資金繰りが悪化するケースもあります。

また手形には、支払い時期まで保管しておかなければならないというデメリットも。
手形の中には数百万円という額の手形もあります。
紛失や盗難を避けて保管するためには金融機関に預けるなどの対応が必要となり、保管にコストがかかってしまうのです。

約束手形は基本的に長期間保管しておく必要がありますが、早く資金化したい場合には手形の裏書という方法が使えるでしょう。

手形の裏書とは、他社への支払いの際に手形を譲渡するという形で資金化を行うことをいいます。手形の譲渡をするときには手形に裏書をする必要があります。

手形の裏書譲渡をするときの具体的な記載方法

約束手形は、大きな金額の支払いを証明する重要書類です。
正しい方法で裏書しなければ無効になってしまうこともあるので注意しましょう。
ここからは裏書の記載方法や訂正方法についてご説明いたします。

1. 手形の裏書の記載方法

手形を譲渡するときにはまず、譲渡人と受取人の間で合意を行いましょう。手形の裏面には「表記金額を下記被裏書人または指図人へお支払いください」といった記載があります。
手形譲渡に双方が合意したら、手形の譲渡人はこの欄に必要な情報を記載しましょう。手形の譲渡を個人が行うときには、氏名と住所、屋号を記入します。
法人の場合には社名と住所、代表者の役職と名前を記載しましょう。
さらに、押印欄に印鑑または会社印を押しておきます。

2. 手形の裏書の訂正方法

約束手形は数百万円という金額の支払いを証明する重要な書類なので、裏書きは丁寧に行いましょう。
約束手形の裏側の下部には被裏書人の欄があります。
譲渡人の裏書がこの部分にはみ出してしまうと、手形の不備となってしまうことがあります。
また、文字が十分に判別できなかったり印鑑が不鮮明だったりした場合にも、手形が効力を発揮しないことがあるので注意が必要です。
もしも手形の裏書で書き損じをしたときには、次の欄にあらためて正しい裏書をしましょう。
書き損じた裏書には大きくバツ印を書き、バツ印の中央に押印して処理します。
また、裏書の欄が足りなくなったときには手形の裏面をコピーして添付し、あらためて裏書を書き込みます。
このとき、つなぎ目には印鑑の割り印を行いましょう。

手形の裏書を譲渡するときの注意点

約束手形には決済ができない不渡りのリスクがありますが、これは裏書譲渡をした場合でも同じです。
手形の譲渡後に不渡りになったときには、手形の振出人に代わって譲渡人が金銭の支払いをしなければなりません。
手形の裏書をして譲渡した場合でも、譲渡人は手形が無事に換金されるまで支払いの責任を負うことになるため注意しましょう。
手形には、資金不足により当座預金の残高不足を伴う1号不渡りがあります。手形の裏書譲渡のあとに1号不渡りが出た場合には手形交換所に不渡りの報告がされ、金融機関の信用が落ちてしまうことになります。
複数回の不渡りが出たときには取引停止報告を受けるリスクもあるので気をつけたいものです。

手形の裏書譲渡をしたときの仕訳方法とは

手形の裏書譲渡をしたあとには、社内会計に必ず反映させましょう。手形の裏書を会計に反映させるときの形式は大きく3つに分けられます。
必ず手順をおさえておき、正しい方法で計上しましょう。

1. 直接減額法による仕訳

直接減額法の場合には、手形を裏書譲渡した日に借方勘定科目を買掛金、貸方勘定科目を受取手形として計上します。
直接減額法であれば、手形期日には会計処理をする必要はありません。

2. 評価勘定法による仕訳

評価勘定法では、手形の裏書譲渡をした日付で借方勘定科目を買掛金、貸方勘定科目を裏書手形として処理します。
また、手形の期日には借方勘定科目を裏書手形、貸方勘定科目を受取手形として同様の処理を行います。

3. 対照勘定法による仕訳

対照勘定法を使うときには、手形の裏書譲渡日に2つの仕訳が必要です。
まずは借方勘定科目を買掛金、貸方勘定科目を受取手形として計上します。その後、借方勘定科目を手形裏書義務見返、貸方勘定科目を手形裏書義務として同額を計上しましょう。
手形の期日には借方勘定科目を手形裏書義務、貸方勘定科目を手形裏書義務見返として計上すれば問題ありません。

手形の裏書譲渡をするメリット3つ


手形はすぐに現金化できないため、資金繰りのためには裏書譲渡という方法が有効です。手形の裏書譲渡には以下のような多くのメリットがあります。

1. 支払期日よりも前に現金を手に入れられる

約束手形の裏書譲渡を行う最も大きなメリットは、手形を早期に現金化できるという点にあります。一般的に、手形の振り出しから実際の支払いまでの期間は3~4カ月程度です。
手形の裏書譲渡をすれば手形の金額を割引されることなく、全額をすぐに現金化できます。

2. 手軽に取引ができる

手形の裏書にはそれほど手間がかからないので、気軽に取引を行えます。
正しく裏書をして押印するだけというハードルの低さは、裏書譲渡の大きなメリットといえるでしょう。

3. 手数料がかからない

手形の裏書にあたって譲渡人が振込手数料などの諸費用を払う必要はありません。
また、割引料を轢かれてしまう心配もないため、取引のコストを削減することができます。

手形の裏書譲渡をするデメリット3つ

手形の裏書には、既存の手形を手軽に現金化できるというメリットがある一方で、いくつかのデメリットもあります。
ここからは手形の裏書譲渡のデメリットについて見ていきましょう。

1. 不渡りがでたときに支払いの責任が生じる

約束手形が万一不渡りになった場合には、裏書譲渡の受取人から支払い請求を受けることになります。
この場合には、手形の振出人に代わって譲渡人が支払いをする必要があります。
裏書譲渡をしてしまえば譲渡人には支払い責任がなくなるように思えますが、譲渡後にも支払いの責任は続くため十分に注意しましょう。

2. 全額を譲渡しなければならない

手形の裏書をするにあたって、約束手形に記載されている金額の変更はできません。裏書譲渡をするときには手形に記載されている全額を譲渡しなければならないのです。

通常の場合、裏書手形の受取人に支払う金額は手形に記載された金額とは異なっています。手形の裏書譲渡の際にはこの過不足を調整する手間が生じます。

3. 受取人の合意を得る必要がある

手形の裏書譲渡には、譲渡人と受取人の合意が必要です。相手が了承しなかった場合には手形による支払いはできません。
手形の銘柄によっては相手先に断られてしまうことがあります。また、手形の裏書譲渡をしたときには相手先が取立手数料を負担しなければならないため、これが原因で断られてしまうケースもあります。

手形の裏書譲渡とファクタリングとの違いとは

起業の資金調達には、手形の裏書譲渡のほかにファクタリングという方法も。
ファクタリングとは、債権者が所持している売掛債権を買い取って債権の回収をする金融サービスのことで、売掛債権買取業務とも呼ばれます。
ファクタリングを行う専門の会社に売掛金を売却すれば、手元にまとまった現金を得ることができるのです。
手形の裏書譲渡とは、振出人から受け取った手形を現金化する仕組みです。
これに対してファクタリングとは、売掛債権を専門のファクタリングサービス会社に譲渡することによって、手数料などを差し引いた金額が支払われるシステムを指します。

ファクタリングを利用するメリット

ファクタリングサービスは会社からお金を受け取るため、ファクタリングはしばしば融資やローンのようなものと思われがちです。
しかし、ファクタリングではもともと所有している売掛金を現金化することになるため、融資やローンのように負債が増えることはありません。
ファクタリングであれば、売掛債権の回収はファクタリングサービス会社に一任できます。売掛先企業の倒産などで売掛金が回収できない場合でも、ファクタリングを利用した側がファクタリングサービス会社に対して受け取った金銭を返金する必要はありません。
また、ファクタリングは売掛債権を売却するだけの手続きなので、自社の業績や資金状況を問わず利用できます。ファクタリングには、リスクをおさえながら手軽に資金調達できる仕組みがあるのです。

【まとめ】

手形の裏書譲渡のリスクを十分に理解し、慎重に取引を行いましょう

手形の裏書譲渡には、所有している手形を即座に現金化できるという良さがあります。また、手形の譲渡は裏書をするだけで手軽に済ませられますし、手数料の支払いをする必要もありません。

その一方で、手形が不渡りになったときに譲渡先に対して支払い義務が発生するなどのリスクもあるため、取り扱いには注意したいものです。

手形の譲渡をするときにはこういったリスクを十分に理解しておくことが大切です。