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「信用金庫」と「銀行」の違いを知っていますか?

最終更新日:2022年09月29日

 

 

今回は「信用金庫」と「銀行」の違いについて解説したいと思います。

 

 

資金調達を検討する際に、都市銀行、地方銀行、政府系銀行、信用金庫、ビジネスローンなど様々な方法が存在しますが、とりわけ多くの企業が行っているのが銀行からの資金調達です。

銀行融資は一般的に他の資金調達方法と比較して低コストで資金を調達する事ができるので多くの企業が利用しています。

しかし、一口に銀行から融資を受けると言っても、全国に支店があるような大規模な都市銀行から融資を受けるのか、

その地方で有力な地方銀行から融資を受けるのか、より地域密着型で融資を行っている信用金庫から融資を受けるのかによって若干の違いがあります。

本記事では「信用金庫」に注目して、信用金庫とはそもそも何なのか?銀行ではないのか?どのように信用金庫と付き合うべきなのかについて説明します。

 

 

 

 

信用金庫とは?信用金庫は銀行なのか

 

 

 

 

まず、資金調達について勉強し始めた多くの経営者や財務担当者が初めに抱く疑問は、

 

信用金庫は銀行とは違うのか? 

という事です。確かに融資を受けるという一点から考えれば銀行も信用金庫も一緒の様に思えますが、信用金庫と銀行は制度上大きく異なった機関です。

信用金庫は信用金庫法という法律に基づき設立されていますが、銀行は銀行法という法律に基づき制定されています

このように根拠法が違うので銀行と信用金庫は性質が大きく異なっています。

一番大きな違いは、銀行が利益を追求する為に株式会社の形態で営利法人として設立できるのに対して、信用金庫は会員の出資に基づいて組織された非営利法人となります。

 

つまり、制度上銀行よりも信用金庫は公共性が強い団体となっているのです。この信用金庫の公共性についてもう少し掘り下げて説明します。

明治の時代、日本が近代化するにあたって株式会社という仕組みが導入されて、そこに資金を融資する団体として銀行が設立されたわけですが、

銀行は投資効率の良い大企業や都市部への融資は積極的に行うけれども、地域への投資は行わずに地方から都市部に資金が流出して、地方と都市部で貧富の差が拡大してしまいます。

 

銀行は営利団体なのでこのような動きに制限を設ける事は困難なので地方で資金が循環するようにと設立されたのが信用組合です。

明治政府はドイツの信用組合制度を元に産業組合法を制定し、これに基づき各地方の有力者が設立した信用組合が今日の信用金庫になったのです。

 

ただし、当時の信用組合の活動範囲は今よりも広範で、今でいう、JAや信用協同組合の働きもしていました。

この様な信用組合が信用金庫になったのは戦後間もなくのことで、制度改正によって信用組合が乱立して大蔵省直轄であったものが都道府県管理になってしまったため、

金融機関としての信用組合を大蔵省のもとできちんと管理しようという事で、1951年に信用金庫法が制定されて、

金融機関としての信用組合が一斉に信用金庫という名前に代わりました。このような歴史を経て今の信用金庫があるわけです。

ちなみに現在も存在する団体の中で、信用金庫と同じような機能を果たす団体として信用組合があります。

 

上記の流れを見れば元々、信用金庫や信用組合が同じ経緯で発生したものである事がわかります。信用金庫と信用組合の違いなのですが、

信用金庫は銀行的な性質を持った組織であるのに対して、信用組合はより密着性の高い組織で、預金や融資などのサービスは原則として組合員に対してのみ行う相互扶助的な金融機関です。

 

 

信用金庫からの資金調達を検討すべき場合

 

 

このような設立の経緯からもわかる通り、信用金庫は銀行と比較して営利性の低い組織である事がわかります。

もちろん、非営利組織だからといって貸し出しの審査が甘かったり、返済が遅れても良いという訳ではないのですが、

例えば銀行が相手にしないような地域の零細企業もきちんと融資先として営業してくれたり、事業が少し上手く行っていない時でも、銀行よりも長い目で会社の成長性を見てくれる組織であります。

 

経営者や財務担当者の目線で見れば、信用金庫は銀行の営業エリアや融資限度額が少ない版という風な捉え方をしている人もいますし、確かにその通りの認識で大丈夫です。

しかし、重要な事は面倒を見てくれない都市銀行の担当者よりも、サポートしてくれる信用金庫の担当者の方が心強いという事は念頭にいれておく必要があります。

一般的に、都市銀行は売上規模30億円以下の企業はなかなか相手にしてくれませんし、地方銀行も売上で数億円なければなかなか銀行の営業がサポートしてくれません。

 

つまり、銀行は営利組織なので利益を追求する為に零細企業に時間を割く余裕はないのです。

このような点で比較すると信用金庫は地域密着で公共性の高い機関であるため、零細企業でも銀行と比較して手厚いサポートを受ける事が可能です。

 

もちろん、信用金庫が必ずしも銀行よりも素晴らしいというわけではありません。

 

  • ・預金量が数千億円未満の信用金庫もたくさんあり、一件、一件の融資額は銀行よりもどうしても低くなりがち
  • ・その地方の零細企業を相手にしていて融資の失敗リスクが高い
  • ・事業規模が小さいので銀行ほどコストメリットが出せない
  • ・一件の融資の失敗は経営に大きな影響を与えかねない
  • ・銀行と比較して金利が高い
  • ・信用保証協会の保証付きでなければ貸してくれない

とデメリットはあります。

会社を経営する上で、どこか一行に取引銀行を絞るのは賢明ではありません。

そこからの融資の引き上げがあれば、会社経営に大きな影響がありますし、仕入れなどと同様で資金調達も複数の銀行の中から一番良い条件の金融機関を選ぶのが資金調達の基本となっています。

 

このようなことから考えれば、中小企業の経営者は地方銀行一行に取引金融機関を絞るのではなく、第二地銀や信用金庫にも口座を持っておいた方が良いと考えられます。

そういった意味で、とりあえず信用金庫にも口座は持っておいた方がよいでしょう。

 

 

 

信用金庫はつぶれないのか?

 

 

 

 

 

経営者や財務担当者の中には信用金庫って何となく危ない気がするというイメージを持っている人もいるかもしれません。

特にシニア世代の方に多いのですが、信用金庫が危ないというイメージがどこで作られたのでしょうか。

1980年代、銀行は絶対に潰れない日本の経済成長に伴って確実に成長していく企業だと思われていました。

この様な理由から現在50代、60代で銀行に入れば一生安泰だと就職する当時に思っていた人は少なくありませんでした。

しかし、バブル崩壊後、資金難によって潰れる銀行が発生しました。この中で当時一番センセーショナルに取り上げられたのが東洋信用金庫の破たんです。

東洋信用金庫はバブルで不動産投資に国民が熱狂していた時に発生した、尾上縫による架空預金証書事件に東洋信用金庫が関わっていたという事もあり、

経営破綻し1992年に当時の三和銀行(現在の三菱UFJ銀行)に吸収合併されてしまいます。同年に発生した東邦相互銀行の破綻と伊予銀行への吸収合併と合わせて、

絶対に潰れないと思われていた銀行も潰れる可能性があるという事を強烈にイメージさせた事件でした。

 

更に2000年前後には銀行の中でも大手であった日本長期信用銀行や日本債券信用銀行などの銀行が次々と経営破綻してしまいます。

 

この様な事実から21世紀になり、金融機関でも潰れる時代になったので、事業規模が小さくて体力のない信用金庫は特に銀行の中でも特に危ないのではないかというイメージを持たれる様になりました。

 

しかし、このイメージだけで信用金庫にレッテルを貼るのは必ずしも正しいわけではありません。

バブル崩壊後、様々な銀行が合併を繰り返して、コストメリットが出せる様に大規模化しているのと同様に、信用金庫も金融機関として生き残るために合併やサービスの適正化などに努めています。

例えば、日本で一番大きい信用金庫は京都中央信用金庫ですが、貸付金と預金残高を合わせると2016年時点で約6.5兆円を保有しており、

都市銀行には劣りますが、地銀と比較しても遜色ない資産を保有しています。

 

また、京都中央信用金の他にも、城南信用金庫、岡崎信用金庫など地元の人間でなければ知らないような信用金庫が意外と地銀並みの事業規模であるのです。

この様な事から考えると、信用金庫は漠然と危ないイメージがあるので取引しないというのではなく、きちんとその信用金庫の良さを見定めた上で決定した方が良いという事が分かります。

 

 

信用金庫の上手な使い方

 

 

以上の事を踏まえた上で、信用金庫との上手な付き合い方について考察します。

まず信用金庫は何となく小さい銀行で地銀と比較して危ないイメージなのでわざわざ取引する必要はないという認識はよくありません。

信用金庫も立派な金融機関で地方によっては第二地銀よりも信用金庫が大きいというケースも考えられるので信用金庫にも口座を持っておいた方が良いでしょう

 

一般的に中小企業は、その地域の地方銀行、第二地方銀行、信用金庫に口座を持っておいた方が良いと言われています。

また、できれば都市銀行にも口座を持っておくに越したことはないのですが、信用金庫が相手にしてくれる事業規模の場合は、

都市銀行が積極的に相手にしない規模の会社だと考えられるのであまり気にする必要はありません。

(なお、信用金庫から融資を受ける為には会員になる必要がありますが、法人の場合会員になれるのは従業員300人以下、資本金9億円以下までという風に定められています。)

 

このように複数の銀行に口座を開いたうえで、信用金庫の営業マンを積極的に活用して情報を仕入れてください

信用金庫は地銀と比較して事業規模の小さい会社に対してもきちんと営業してくれるので、会社が小さいうちは信用金庫の営業マンを上手く活用してください。

 

そのうち、信用金庫の営業マンが融資の提案などをしてくれるかもしれませんが、その際には地銀、第二地銀との間で相見積をとってください。

 

もちろん、銀行の方が交渉力が強いので正式に見積もりを貰って後で断りをいれると、その後の銀行との関係に響く可能性もあるので、

あくまでも金利幅や期間についての概算をヒアリングするにとどめておいた方が良いと考えられます。

そうした上で、一番条件が良さそうな金融機関から資金調達を行ってください。

 

なお、事業規模が大きくなって都市銀行が営業に来てくれたり、地方銀行と交渉できるようになったらからといって信用金庫との付き合いを辞めて良いというわけではありません。

銀行は事業規模が小さくなると途端に営業マンの対応が悪くなったり、会社が苦しい時期なのに融資を引きあげてくる可能性もあります。

 

このような場合を想定するならば、地域に密着して会社が苦しい時期にも手を差し伸べてくれる信用金庫との関係は保険として保ち続ける事が重要です。

このような理由から信用金庫とは長期的に良好な関係を保つように心がけた方が良いでしょう。

 

 

 

最期に

 

 

以上のように、信用金庫について説明してきました。

信用金庫は銀行と同じように見えますが、利益追求型の銀行を補完する組織として地域密着して地域の企業の振興の為に作られた金融機関です。

 

このような理由から地域に密着した商売をしている会社にとって信用金庫は心強い味方となりえる組織です。

 

確かに、バブル崩壊後銀行も普通の会社と同じように倒産するようになり、事業規模の小さい信用金庫について漠然と危ないというイメージを抱く経営者もいますが、

実は保有資産を見ると地方銀行と遜色ないような信用金庫はたくさん存在します。

企業の資金調達のリスクヘッジのためには信用金庫と長期的に良好な関係を保つように心がけた方がよいでしょう。

 

まず、資金調達を1本に絞ると、そこからの融資が厳しくなった時に、新しい金融機関を開拓しようとしても遅いので、

リスクヘッジの為に地方銀行にも信用金庫にも口座は持っておいた方が良いでしょう。

さらに、銀行は利益を追求するので、事業規模が大きく儲けさせてくれそうな会社には営業を行いますが、利益がでないであろう企業には積極的には営業をしないと考えられます。

 

これと比較して信用金庫は非営利法人なので事業規模の小さい会社に対してもきちんと営業してくれるので信用金庫に口座を持っておくべきです。

 

またこれに類似する事ですが、銀行は儲けられそうなら融資をしてくれる反面、事業が厳しい時に手を引くのも早いので、

会社が大きくなったとしても、長期的に会社の可能性を見てくれる信用金庫とリスクヘッジのために取引は続けておいたほうが良いでしょう。

 

 

いかがでしたでしょうか?

 

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