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セールアンドリースバックとは? 利用するシーンやメリット・デメリット、利用時のポイントなどを紹介

最終更新日:2024年07月31日

セールアンドリースバックは、不動産を活用した新たな資金調達方法です。一般的な借入や不動産を担保にした融資とどのように違うのか、まだ把握していない方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、セールアンドリースバックの概要や利用するシーン、メリット・デメリット、利用する際のポイントを紹介します。セールアンドリースバックが気になる方や利用を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

セールアンドリースバック取引とは?

セールアンドリースバックは、不動産を金融機関などに売却し、その後も賃借人として使用を継続する取引のことです。個人と法人のどちらでも利用可能で、不動産以外にも車両や機械設備などの資産に適用できるものがあります。

この手法のメリットは、資金調達と経費削減を同時に実現できることです。通常の不動産売却と違って移転の必要がないため、事業や生活を継続できる他、所有権の移転によって維持管理費や修繕費、固定資産税などの負担から解放されます。

セールアンドリースバックは資金を獲得しつつ経費を抑えられるため、キャッシュフローの改善の効果的な選択肢となります。

ただし、リース料(賃料)の支払いは必要です。

借入との違いは?

資金調達の方法には、セールアンドリースバック以外に借入という手段がありますが、両者には明確な違いがあります。

セールアンドリースバックは主に不動産売却による資金調達方法であり、その難易度は物件の価値に影響されます。一方、借入は融資による資金調達方法で、信用力と返済能力があれば比較的簡単に利用できる方法です。

また調達資金の使途については、セールアンドリースバックでは制限がありませんが、借入では使途の条件が付く場合があります。

その他にも、セールアンドリースバックは不動産売却となるため支払義務はありませんが、借入の場合は月々の支払義務が発生します。

これらの特徴や違いを理解した上で、自社の状況やニーズに合った方法を選択することが重要です。

不動産担保ローンとの違いは?

不動産を活用した資金調達方法として、不動産担保ローンがありますが、セールアンドリースバックとは仕組みと特徴に違いがあります。

セールアンドリースバックでは、不動産を売却した後にその不動産の賃借利用を継続します。所有権は失いますが、家賃以外に支払義務はありません。

一方、不動産担保ローンは、所有権を維持したまま不動産を担保として融資を受ける資金調達方法です。そのため、借入金の支払義務が生じます。

またセールアンドリースバックでは、所有権放棄と引き換えに大きな資金を得られますが、不動産担保ローンは資産を保持しつつ資金調達が可能です。

この違いは、企業の財務戦略に大きな影響を与えるため、自社の財務状況や事業計画、不動産の戦略的重要性などを考慮して、適した方法を選択することが重要です。

企業がセールアンドリースバックを利用するタイミング

セールアンドリースバックは比較的新しい資金調達法として知られていますが、実際にはどのようなタイミングで行うものなのでしょうか。

具体的には、以下のようなタイミングで実行されます。

・すぐに資金調達をしたいとき
・移転せずに資金調達したいとき
・融資の利用が難しいとき
・投下資本利益率を改善したいとき

それぞれ詳しく解説します。

すぐに資金調達をしたいとき

セールアンドリースバックは、早急に資金調達が必要な場合に取られる手段です。

セールアンドリースバックのメリットは、所有する不動産などの資産をすぐに現金化できることです。通常の不動産売却とは違い、売却後も同じ場所で事業や生活を継続できるため、事業運営への影響を抑えつつ、大規模な資金調達が可能となります。

例えば、借入金の支払期限が迫っている場合や、予期せぬ大きな支出に直面した際に、セールアンドリースバックを活用すれば、スムーズに必要な資金を確保でき、財務的な危機を回避できるでしょう。

ただし、セールアンドリースバックは長期的な影響を伴うため、利用については慎重に検討しなければなりません。一時的な資金ニーズを満たすだけでなく、将来の事業計画や財務戦略も合わせて考慮することが重要です。

移転せずに資金調達したいとき

事業所やオフィスを移転せずに資金調達がしたいときにも、セールアンドリースバックが利用されます。

不動産の売却では移転が必要です。オフィスと自宅を兼ねた不動産を所有している場合、生活や事業に大きく影響する恐れがあります。

セールアンドリースバックを利用すれば、不動産を売却して必要な資金を調達しながら、同じ場所に居住したり、事業を継続したりできます。また、長年慣れ親しんだ環境を維持できるため、心理的な負担も軽減されるでしょう。

売却後は賃料を支払う必要はありますが、起業によっては大規模な移転や環境の変化を避けられるメリットは大きくなります。

融資の利用が難しいとき

資金ニーズがあるものの、融資を利用するのが難しい場合でも、セールアンドリースバックが利用されます。

融資にはさまざまなものがありますが、業種によっては融資の利用に制限が掛けられることがあり、自由に活用できない場合があります。

また、利用可能な融資があっても、審査に通過できる保証はなく、確実に資金調達ができるとは限りません。

セールアンドリースバックには、業種による利用制限が少なく、不動産を所有していれば比較的利用しやすいというメリットがあります。また、融資のように借入を返す義務がないため、キャッシュフローの改善にも寄与します。

投下資本利益率を改善したいとき

セールアンドリースバックは、投下資本利益率を改善したいタイミングで利用されることが多い資金調達法です。

通常、不動産は直接的な利益を生み出さないケースが多く、投下資本利益率を低下させる要因となるのが一般的です。しかし、セールアンドリースバックを利用すれば、不動産の所有権を手放すことになり、利益を生みにくい資産を資本から外せます。

結果として、投下資本利益率が向上し、企業の生産性と効率性の改善が期待できます。このような影響は、投資家や市場からの評価を高める要因となり、企業価値の向上につながるでしょう。

セールアンドリースバックを利用するメリット

セールアンドリースバックを利用するメリットは以下の通りです。

・コスト削減になる
・資金の使い道を自由に決められる
・貸借対照表に計上されなくなる
・必要なスペースだけ使える

それぞれ詳しく解説します。

コスト削減になる

セールアンドリースバックのメリットの一つが、コスト削減です。

まず、不動産を売却して所有権を手放すことで、固定資産税を負担する必要がなくなります。特に高額な不動産を所有している企業にとっては、大きな節税効果をもたらすでしょう。

また、建物の維持管理に掛かるコストや保険料などの固定費も削減可能です。

さらに、不動産売却時に損失が生じた場合、法人税の軽減につながる可能性があり、企業の税務戦略において重要なポイントとなり得ます。

他にも、減価償却費の計上が不要となるため、会計処理が簡素化され、経理部門の業務効率化や間接的なコスト削減も期待できるでしょう。

資金の使い道を自由に決められる

調達した資金の使い道を自由に決められるのもメリットです。

一般的な融資では、資金の使途に制限が設けられていることがあります。例えば、特定の事業拡大・設備投資にのみ使用できる融資や、運転資金としてのみ利用可能な融資などがあります。

このような制約は、企業の資金ニーズや融資条件とのミスマッチを引き起こす可能性があり、通常融資の対象外の資金使途だった場合、企業は資金調達に苦労してしまうでしょう。

セールアンドリースバックでは、こうした制限を回避しやすく、企業の実情に合わせた柔軟な資金運用が可能です。

貸借対照表に計上されなくなる

貸借対照表に計上されなくなり、いわゆるオフバランスになるのも、大きなメリットです。

不動産を売却すれば、その資産は貸借対照表から除外されます。その結果、貸借対照表がスリム化され、総資産利益率(ROA)の向上・改善が期待できます。総資産利益率の改善は、企業の資産効率性を示す重要な指標で、投資家や金融機関からの評価向上につながります。

また、売却で取得した資金を既存の借入金の支払いに充てれば、負債比率が低下するため、財務健全性を高められ、企業の資金繰りの改善に直結するでしょう。

さらに、定期的な賃料の支払いに移行すれば、キャッシュフローの安定化につながり、財務計画を立案しやすくなります。

必要なスペースだけ使える

セールアンドリースバックによって、必要なスペースのみを使用できるようになるのもメリットです。

特に、必要以上に広いスペースを所有している企業にとっては、不動産の効率的な利用と経費削減を同時に実現する手段となります。

セールアンドリースバックでは、不要な広いスペースを所有し続けることで生じる管理費や固定資産税などの固定費の大幅削減が可能です。また、実際に必要なスペースのみを賃借できるため、余剰スペースの排除と効率的な空間利用の両方を実現できます。

オフィスの縮小や再編を検討している企業にとって、有効な選択肢となるでしょう。

セールアンドリースバックを利用するデメリット

一方、セールアンドリースバックを利用した場合、以下のようなデメリットがあります。

・毎月の賃料が掛かる
・通常の売却額よりも低くなる可能性がある
・リフォーム・建て替えが自由にできなくなる
・かえって損失が出る可能性がある

それぞれ詳しく解説します。

毎月の賃料が掛かる

毎月の賃料支払いが発生するのが、セールアンドリースバックを利用するデメリットです。不動産の所有権はリースバック業者に移り、継続して物件を使用するためにはリース料(賃料)の支払いが必要になるためです。

リース料は、不動産の購入代金に加えて、物件の管理費や業者の利益などが含まれているため、通常の賃貸料と比較してやや高い傾向にあります。

企業の経営状況によっては、リース料が想定以上の負担となる恐れがあり、特に収益が不安定な時期や事業環境が急変した場合には、固定費としてのリース料の支払いが経営を圧迫するケースもあります。

不動産所有に伴う固定資産税や維持管理費などの負担は軽減されますが、代わりに定期的なリース料の支払いが発生することは理解した上で利用を検討しましょう。

通常の売却額よりも低くなる可能性がある

一般的な不動産の市場価格と比較して、売却価格が低くなる可能性がある点もデメリットです。

元の所有者(売却者)が引き続き物件を使用することで、リースバック業者は購入した不動産を自由に使用したり、売却したりできないためです。業者はリースバック期間終了後の不動産価値を考慮した購入価格を設定することになり、不動産の価格が低くなります。

また、資金調達を急いでいる企業にとって、交渉上の立場が弱くなることも、売却価格が低くなる要因です。

セールアンドリースバックはスムーズな資金調達が可能ですが、適正な売却価格を求めるのは難しいといえるでしょう。

リフォーム・建て替えが自由にできなくなる

リフォームや建て替えが自由に行えなくなるのもデメリットです。

不動産を売却することで、元の所有者は賃借人の立場になり、不動産の改修や建て替えに関する決定権が制限されるためです。

本来であれば自由に行えた改装や改修も、リースバック業者との交渉や承認が必要となります。もちろん、不動産をビジネス用途だけでなく、自宅として使用している場合も同様です。

間取りの変更や外装の大幅な改装、あるいは建物の建て替えなどを希望する場合、リースバック業者と慎重に協議しなければなりません。協議には時間と労力が掛かり、場合によっては変更が認められないケースもあるでしょう。

かえって損失が出る可能性がある

セールアンドリースバックを利用することで、損失が発生する可能性があるのもデメリットとなります。

売却価格が市場価格より低く設定される一方で、リース料は割高になる傾向があるためです。リース期間が長期化するほど、財務的な負担が増大する恐れがあります。

また、不動産市場は常に変動しており、資産価値は時間とともに変化するため、将来的に資産を買い戻す場合、当初の売却価格を上回る金額が必要となるケースもあるでしょう。

セールアンドリースバックでは、リース期間が長いほど経済的な損失のリスクが高まるため、長期的には相殺されてしまう恐れがあります。

セールアンドリースバックが向いている企業とは?

セールアンドリースバックは、手元にまとまった資金がないものの、早急に資金調達が必要な企業に向いている手法です。特に一般的な融資が利用できない場合は、魅力的な資金調達方法といえるでしょう。

セールアンドリースバックのメリットは、企業が所有する不動産を活用して、スピーディに大きな資金を調達できる点にあります。同時に、売却後も同じ不動産を継続利用できるため、事業運営への影響を抑えられる点もメリットです。

財務的な危機に直面しながらも、重要な事業資産を手放したくない企業にとっては、有効な選択肢の一つとなるでしょう。

セールアンドリースバックが向いていない企業とは?

一方、セールアンドリースバックは、他の資金調達方法が可能な企業にとっては、向いていないといえます。前述の通り、セールアンドリースバックには長期的な金銭の負担が伴うためです。

一時的に資金を調達できたとしても、高額なリース料や資産価値の変動リスクなど、財務面での課題が生じる恐れがあります。

銀行融資や株式・社債の発行など、一般的な資金調達手段を利用できる状況にあるならば、それらの選択肢を優先的に検討した方がいいでしょう。

セールアンドリースバックを利用する際に押さえておきたいポイント

セールアンドリースバックを実際に利用する場合は、押さえておくべきポイントがいくつかあります。具体的なポイントは以下の通りです。

・複数の会社から相見積もりを取る
・契約の内容に必ず目を通す
・専門家にアドバイスをもらう

それぞれ詳しく解説します。

複数の会社から相見積もりを取る

セールアンドリースバックを利用する場合は、複数の業者から見積もりを取ることが大切です。業者によって提示される条件が大きく異なるケースがあるためです。

特に、不動産は売却価格が大きく、買取金額の差が事業の財務に影響しやすいため、業者の比較は重要になります。

相見積もりを取り、買取価格やリース料、リース期間に加えて、業者の信頼性を比較するようにしてください。業者の信頼性については、背景調査も行った方がいいでしょう。与信問題や不適切な料金設定などのリスクが存在する恐れがあるためです。

長期的な目線で財務の健全性や事業の継続性を確保するためにも、複数の業者を比較することを忘れないでください。

契約の内容に必ず目を通す

セールアンドリースバックを利用するなら、契約内容を確認しましょう。

セールアンドリースバックでは、資産の買い戻しができない、リース料を引き上げられる、リース契約の更新を拒否されるといったトラブルが起きやすい傾向にあります。

トラブルを回避するためには、契約内容の事前確認が不可欠です。特に以下の点は確実に把握しておきましょう。

・買い戻し条項の有無と条件
・リース料の変更に関する規定
・契約更新の条件と手続き

契約書の内容を自身の理解と照らし合わせ、不明点や疑問点があれば業者に確認してください。

専門家にアドバイスをもらう

セールアンドリースバックを利用する場合は、専門家にアドバイスをもらうのも一つの方法です。サービスの利用に対して感じる不安や疑問は、企業の将来性に大きな影響を与える可能性があるためです。

慎重な検討と適切な判断のためにも、専門家への相談を検討しましょう。この場合は、税理士に相談することをおすすめします。

税理士には、税務や財務の専門知識に加えて、さまざまな業界の企業の資金繰りをサポートしてきた実績があります。また、企業の状況を冷静に分析し、客観的な視点からの助言を期待できるでしょう。

税理士の助言を得ることで、より適切な判断が可能になり、企業の持続的な成長と安定性を確保できる可能性が高まります。

まとめ

セールアンドリースバックとは、不動産を活用した新たな資金調達手段です。メリット・デメリットに加えて、利用適性の有無に特徴があるため、自分に向いている方法なのか把握しておくことが大切です。

また、セールアンドリースバック以外の資金調達方法を模索しているなら、Mentor Capitalのファクタリングサービスの利用を検討してみてください。

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