介護報酬ファクタリングとは? 仕組みや流れ、メリット・デメリットを分かりやすく解説
最終更新日:2025年06月27日
介護事業者の一時的な資金不足は、介護報酬ファクタリングで解決できる可能性があります。介護報酬ファクタリングは、介護報酬債権を売却して早期に現金を得る資金調達方法です。通常は2カ月ほどかかる売り上げの回収がスピーディに行えるため、資金繰りを改善できます。
介護報酬ファクタリングは一般企業が利用するファクタリングと比べて手数料が低い傾向にあり、審査も通りやすいです。調達金額に上限があるなど無視できないデメリットもありますが、上手に利用すれば経営は楽になるでしょう。
本記事では、介護報酬ファクタリングの仕組みや手数料の相場、利用するメリット・デメリットなどについて解説します。資金繰りにお困りの介護事業者の方は参考にしてみてください。
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介護報酬ファクタリングとは?
介護報酬ファクタリングとは、介護事業者が保有する「介護報酬債権」を利用したファクタリングです。ファクタリングとは、さまざまな種類の売掛債権をファクタリング会社に買い取ってもらうことにより、売掛債権の入金期日よりも前に売掛金を現金化できます。
介護報酬債権とは、介護事業者が国民健康保険団体連合会(以下「国保連」と表記)もしくは社会保険診療報酬支払基金(以下「支払基金」と表記)から介護報酬を受け取る権利のことです。
介護事業者は通常、介護報酬を利用者および国保連や支払基金から受け取ります。利用者から受け取れる金額(自己負担割合)は1~3割で、国保連や支払基金から受け取れる金額は残りの7~9割であることが一般的です。
国保連や支払基金は請求内容の審査を行い、問題がなければ介護報酬の支払いを行います。請求から入金までは基本的に約2カ月かかりますが、介護報酬ファクタリングを利用すればその期間を大幅に短縮可能です。ただし、介護報酬を利用する場合、手数料がかかります。
なお、介護報酬ファクタリングでは契約期間が設定されているケースが多いです。途中で解約する場合は解約手数料(違約金)がかかることがあるため、契約前に確認しておきましょう。
介護報酬ファクタリングの仕組み
介護報酬ファクタリングの仕組みは、一般企業が利用している「3社間ファクタリング」に類似しています。3社間ファクタリングとは、利用者(債権者)、売掛先(債務者)、ファクタリング会社の3社が合意し、契約を結ぶ仕組みです。介護報酬ファクタリングの場合は介護事業者が利用者、国保連や支払基金が売掛先となります。
これに対して、利用者とファクタリング会社のみが契約する(売掛先の合意が必要ない)ファクタリングが2社間ファクタリングです。前述の通り、介護報酬ファクタリングは3社間ファクタリングであるため、売掛先の国保連や支払基金の合意を取らなければなりません。
一般的に、3社間ファクタリングは2社間ファクタリングと比べて時間がかかる反面、手数料は低くなることが多いです。さらに介護報酬ファクタリングでは、国保連や支払基金などの支払い能力が高い組織が売掛先になるため、手数料がさらに低くなる傾向にあります。
介護報酬ファクタリングを利用する際の流れ
介護報酬ファクタリングの大まかな流れは、以下の通りです。
1.介護事業者が利用者に対して介護サービスを提供し、国保連や支払基金に介護報酬(介護給付費)を請求する
2.介護事業者、国保連(支払基金)、ファクタリング会社の3社でファクタリングの契約を結ぶ
3.介護事業者とファクタリング会社が連名で国保連(支払基金)に債権譲渡通知を行う
4.ファクタリング会社が介護事業者に対し、介護報酬債権の何割かを前払いする
5.国保連(支払基金)がファクタリング会社に介護給付費を支払う
6.ファクタリング会社が介護事業者に残りの金額を支払う
介護報酬ファクタリングでは、一般的なファクタリングと異なり、基本的に支払いは2回に分けて行われるケースが多いです。介護事業者が国保連(支払基金)に請求した介護給付費が全額認められない可能性があるためです。
全額認められた場合でも、1回目の支払いでは何割かの金額しか前払いされません。残りは国保連(支払基金)がファクタリング会社に介護給付費を支払った後に受け取ることができます。
介護報酬ファクタリングと他の資金調達方法との違い
介護事業者が利用できる資金調達方法は、介護報酬ファクタリングだけではありません。ここでは、介護報酬ファクタリングと他の資金調達方法の違いをご紹介します。
銀行融資との違い
銀行融資の審査では、介護事業者側の支払い能力が問われます。経営状態が悪かったり、債務超過に陥っていたりする場合、審査に落ちる可能性が高いです。また場合によっては、担保や保証人が求められることもあるでしょう。審査にかかる時間も長いため、スピーディな資金調達は期待できません。
一方、介護報酬ファクタリングでは、主に売掛先の支払い能力が問われます。先述した通り、介護報酬ファクタリングの売掛先は国保連や支払基金といった支払い能力の高い団体であるため、介護事業者側の経営状態が悪い場合でも利用できる可能性があります。
医療機関債との違い
国が発行する債券を国債、企業が発行する債券を社債というように、医療機関が発行する債券を医療機関債といいます。仕組み自体は通常の債券と同様です。医療機関債の購入者は医療機関に資金を貸し付けます。医療機関は期間中に利息を支払い、期間満了日に元金を弁済する仕組みです。
医療機関債は債券であるため、期間が満了したら元本を弁済しなければならないのがデメリットです。また、得た資金は設備資金にしか使えません。さらに医療機関債は医療機関なら誰でも利用できるわけではなく、「税引前純損益が3年連続で黒字である」などの条件を満たす必要があります。
一方で介護報酬ファクタリングは売掛債権を売却して資金を調達する方法であるため、弁済する必要がありません。資金の用途も自由です。経営状態はそれほど厳しく問われないので、利用ハードルは介護報酬ファクタリングの方が低いでしょう。
なお、医療機関債は医療機関が利用できるもの、介護報酬ファクタリングは介護事業者が利用できるもので、利用できる対象者が異なります。
社会医療法人債との違い
社会医療法人債は、社会医療法人が発行する債券です。社会医療法人とは、特に公益性の高い医療を提供するための法人のことで、設立要件が厳格に定められています。また、税制上の優遇措置があります。
社会医療法人債には広く一般投資家の取得を前提とした「公募債」と、特定の取得者を前提とした「私募債」があり、状況に応じた使い分けが可能です。
社会医療法人債は医療機関債と比べてより広く一般投資家から資金調達ができますが、さまざまな条件を満たさなければ発行できません。そのためすぐに資金が必要な場合には、不向きです。
一方で、介護報酬ファクタリングは資金調達にかかる時間が少ないため、急な資金需要にも対応できます。
介護報酬担保ローンとの違い
介護報酬担保ローンとは、文字通り介護報酬を担保としたローンです。介護報酬ファクタリングが売掛債権の買い取りであるのに対して、介護担保ローンは融資に該当します。
介護報酬担保ローンのメリットは、保証人や不動産などの別の担保が必要ないことです。用途も定められていないことが多く、日々の運転資金や設備投資、建物の改装などに利用できます。弁済期間も柔軟に設定できるため、介護事業者が使える資金調達手段としては優れた点が多いです。
一方で、融資であるため審査に時間がかかります。審査に通過できる保証もないため「時間をかけて審査を受けたのに、落ちて資金を用意できなかった」という事態に陥るケースもあります。スピーディかつ確実に資金を用意したい場合は、介護報酬ファクタリングを利用するのがおすすめです。
介護報酬ファクタリングの手数料
介護報酬ファクタリングの手数料相場は、0.25~1%程度です。一般企業向けの3社間ファクタリングの手数料相場が1~9%であるのと比べると、低めに設定されています。
先述した通り、介護報酬ファクタリングでは売掛先が国保連や支払基金などの支払い能力が高い組織に限定されています。そのためファクタリング会社が背負う未回収リスクが低く、手数料もその分低くなっているのです。また、手数料は介護報酬債権全体ではなく、前払いされた入金額に対してかかります。
例えば、介護報酬債権額が500万円で前払いの入金割合が80%、手数料が1%の場合の前払い入金額と手数料は、以下の通りです。
・前払い入金額:500万円×80%=400万円
・手数料:400万円×1%=4万円
なお、ファクタリング会社によっては、買い取り時の手数料とは別に解約手数料(違約金)や更新手数料などがかかるケースがあります。契約の前にチェックしておきましょう。
介護報酬ファクタリングを利用する際に必要な書類
介護報酬ファクタリングの利用に当たっては、書類の提出が必要です。ファクタリング会社ごとに必要書類は異なりますが、一般的には以下の書類が求められます。
書類 | 書類の概要 |
履歴事項全部証明書 | 現在の会社法人番号や登記年月日、所在地、事業内容などが記載されている書類法務局の窓口や法務局への郵送、オンライン申請システムで取得可能 |
印鑑証明書 | 印鑑登録された印鑑の印影、登録した個人や法人の情報が記載された書類取得には印鑑カード(印鑑登録証)が必要 |
介護報酬請求書 | 医療機関が提出する明細書ファクタリング会社にもよるが、直近3カ月分の提出が求められるケースが多い |
支払決定通知書 | 介護報酬請求書を送った後に国保連や支払基金から送られてくる通知書通常は介護報酬請求書と同期間分を用意する |
事業所の指定通知書 | 介護事業の指定申請を行った際に受け取った通知書 |
許認可証のコピー | 介護事業所の許認可証のコピー |
通帳のコピー | 介護報酬の入金が確認できる通帳のコピーインターネット専業銀行を利用していて紙の通帳がない場合は、銀行Webサイトの各ページから必要な情報が記載されている部分を印刷する |
介護報酬ファクタリングのメリット
介護報酬ファクタリングを利用する主なメリットについてご紹介します。
スピーディな資金調達が可能
介護報酬ファクタリングの大きなメリットとして、申し込みから入金までの期間が短いことが挙げられます。介護報酬を国保連や支払基金に請求してから入金されるまでには2カ月ほどかかります。この2カ月の間の資金繰りに悩まされている介護事業者もいるでしょう。本業と並行して、銀行融資や医療機関債の手続きを行うのも手間がかかります。
一方、介護報酬ファクタリングは手続きが比較的簡単です。申し込みから数日~2週間ほどで入金されるケースもあるため、早期の資金繰り改善が期待できます。
審査に通りやすい
介護報酬ファクタリングは、銀行融資などと比べると審査のハードルが低いです。銀行融資では介護事業者の支払い能力が問われますが、介護報酬ファクタリングでは主に売掛先の支払い能力が問われます。
さらに、介護報酬ファクタリングの売掛先は国保連や支払基金といった支払い能力の高い組織であるため、ファクタリング会社のリスクは比較的小さくなります。そのためたとえ介護事業者の経営状況が芳しくなくても、審査に通る可能性は十分にあるのです。ただし、審査に通りやすいとはいえ、必ず通るという保証はありません。その点は理解しておきましょう。
手数料が低い傾向にある
介護報酬ファクタリングは、一般的な企業が利用するファクタリングと比べて手数料が低めに設定されています。繰り返しになりますが、介護報酬ファクタリングは売掛先の信頼性が非常に高く、ファクタリング会社が背負うリスクが小さいためです。
初回は2カ月分の報酬を受け取れる
介護報酬ファクタリングは、初回利用時に2カ月分の報酬を受け取れることがあります。
介護報酬は、基本的には前月分を翌月10日〆で請求し、翌々月25日頃に受け取る仕組みになっています。
<介護報酬の支払日例>
請求締切 | 支払日 | |
1月分の介護報酬 | 2月10日 | 3月25日頃 |
2月分の介護報酬 | 3月10日 | 4月25日頃 |
3月分の介護報酬 | 4月10日 | 5月25日頃 |
この状況では、毎月1日~24日頃の期間中は2カ月分の介護報酬債権を保有していることになるため、場合によっては2カ月分の報酬が同時に受け取れるのです。まとまった資金が手に入るため、資金繰りを大きく改善できる他、設備投資などにも手を出しやすくなります。
ただし、1カ月分の介護報酬債権買い取りにしか対応していないファクタリング会社もあります。2カ月分の介護報酬債権をまとめて買い取ってもらいたい場合には、事前に確認をしておきましょう。
資金の使い道について制限がない
ファクタリングで得た資金は自由に使えます。人件費の支払いや消耗品の調達、建物の改装、その他どのような事業の用途に使っても問題ありません。それに対して、融資や債券の発行では用途が制限される場合があります。
例えば、先述した医療機関債は設備投資にしか使えません。また銀行融資を受ける場合は、経営計画に資金の用途を記載し、何に対していくら使うかをあらかじめ明らかにしておかなければなりません。
開業時でも利用できる
開業直後は何かと出費がかさむ一方で、事業の信用がないため銀行融資を受けるのが難しいタイミングです。開業直後に使える資金調達手段として挙げられるのが、補助金や助成金です。具体的には、以下のようなものがあります。
補助金・助成金 | 概要 |
次世代介護機器導入促進支援事業 | 介護現場の負担軽減や業務効率化目的で、次世代の介護機器を導入する際に利用できる補助金制度 |
介護労働環境向上奨励金 | 介護労働者の負担軽減や賃金の改善、職場環境改善などを目的に支給されるもの |
特定求職者雇用開発助成金 | 高齢者や母子家庭の母親など一般的に就職が困難な人材を採用した際に支給されるものその他障がい者なども対象となる |
トライアル雇用助成金 | 就業経験が少ない、再就職が困難な求職者などを一定期間試用する際に支給されるもの |
補助金・助成金 | 概要 |
次世代介護機器導入促進支援事業 | 介護現場の負担軽減や業務効率化目的で、次世代の介護機器を導入する際に利用できる補助金制度 |
介護労働環境向上奨励金 | 介護労働者の負担軽減や賃金の改善、職場環境改善などを目的に支給されるもの |
特定求職者雇用開発助成金 | 高齢者や母子家庭の母親など一般的に就職が困難な人材を採用した際に支給されるものその他障がい者なども対象となる |
トライアル雇用助成金 | 就業経験が少ない、再就職が困難な求職者などを一定期間試用する際に支給されるもの |
補助金や助成金は弁済の必要がないという大きなメリットがあるものの、支給要件や用途が定められており、時間がかかります。
スピーディに資金が欲しい場合は、介護報酬ファクタリングを利用しましょう。介護報酬ファクタリングは支給要件や用途の指定などがないため自由度が高く、開業直後のさまざまな出費に対応できます。
負債にならない
介護報酬ファクタリングは融資ではなく債権の売却であるため、負債にはなりません。
介護報酬ファクタリングは、財務諸表の売掛債権を現金に換える資金調達方法です。未回収の売掛債権が減れば、売り上げの回収を問題なくできている事業者であると評価してもらえる可能性があります。また現金が増えるため、当面の資金ショートのリスクが低いと示すこともできるでしょう。
さらに資産が減るため、ROA(総資産に対する当期純利益の割合)が高くなります。資産を効率的に利益につなげられているとアピールすることが可能です。こうした財務諸表の改善は、将来銀行融資の審査を受けるときにも役立ちます。
介護報酬ファクタリングのデメリット・注意点
介護報酬ファクタリングにはさまざまなメリットがある一方で、デメリットや注意点もあります。ここからは、主なデメリットについてご紹介します。
受け取る報酬が少なくなる
介護報酬ファクタリングには、手数料がかかります。手数料自体は一般的なファクタリングと比べると低い傾向にありますが、介護報酬債権の満額は受け取れません。
資金繰りに特に困っていない場合は、利用しない方がよいといえます。安易な利用は長期的な資金繰りの悪化につながるため、十分な注意が必要です。
一括では受け取れないことがある
介護報酬ファクタリングでは、2回に分けて入金されるのが一般的です。前払いの金額は介護報酬債権の何割かで、残りは国保連や支払基金がファクタリング会社に介護給付費を支払った後での入金となります。手数料を引いた全額が早期に入金される前提で経営計画を立てるのは、控えた方がよいでしょう。
利用頻度には注意が必要
介護報酬ファクタリングは便利なサービスですが、頻繁に利用すると資金繰りが悪化するかもしれません。
介護報酬ファクタリングの手数料は0.25~1%と低い傾向にありますが、利用回数が増えれば手数料もかさみます。例えば手数料1%で入金額が100万円の場合、1回の手数料は1万円ですが、これを1年間(12回)利用すれば総額で12万円支払わなければなりません。
さらに注意しなければならないのが、介護報酬ファクタリングの利用をやめるタイミングです。介護報酬ファクタリングで入金された直後に利用をやめると、次に国保連や支払基金から入金を受けるまでにかなりの期間が空きます。介護報酬ファクタリングの利用期間や利用をやめるタイミングについては、慎重に計画を立てる必要があります。
税金を滞納していると利用できない可能性がある
介護報酬ファクタリングは銀行融資などと比べて審査のハードルは低いですが、誰もが無条件で利用できるわけではありません。特に利用者が税金や社会保険料を滞納している場合は、審査に落ちる可能性が高まります。介護報酬債権は差し押さえの対象であり、ファクタリング会社が債権を回収できなくなる恐れがあるからです。
もちろんファクタリング会社によっては、柔軟に対応してもらえることもあります。ただし、ファクタリング会社が背負うリスクが大きくなることには変わりないため、手数料は高めに設定されるでしょう。
税金の社会保険料の滞納が続いており、支払いが難しい場合は年金事務局や労働局に分納や支払日延期の相談をしましょう。
2社間ファクタリングに比べると時間がかかりやすい
介護報酬ファクタリングは3社間ファクタリングの一種です。3社間ファクタリングは、一般企業が利用する2社間と比べると入金までに時間がかかります。
2社間ファクタリングでは、利用者とファクタリング会社の2社が契約をします。売掛先は契約に関与しません。売掛先の同意が必要ないため入金にかかる時間は短く、即日入金に対応しているファクタリング会社も存在します。また、売掛先にファクタリングの利用が知られないため、経営状態の悪化などを勘ぐられる心配もありません。
一方、3社間ファクタリングでは売掛先の同意が必要であるため、時間がかかる傾向にあります。基本的に即日入金は難しいでしょう。
調達できる資金には上限がある
介護報酬ファクタリングでは、介護報酬債権の額面金額を超える額の資金は用意できません。例えば、介護報酬債権が100万円分しかないのに、200万円を調達するのは不可能です。より大きな額の資金が必要な場合は、銀行融資など別の手段を検討しましょう。
中には悪質な業者が存在する
ファクタリング会社は特別な登録や免許がなくても始められるため、悪質な業者が入り込むリスクもあります。もちろん、良質なファクタリング会社も多数ありますが、下調べを何もせずにファクタリング会社を選ぶのはおすすめできません。
悪質な業者の中には「ファクタリング会社を装って実際には融資を行う業者」や「手数料が著しく高かったり、サービスが悪かったりする会社」などが存在します。
ファクタリング会社を装い融資を行う手口を偽装ファクタリングといいます。金融庁も以下のような注意喚起を行っているため、一度目を通しておきましょう(※)。
“一般に「ファクタリング」とは、事業者が保有している売掛債権等を期日前に一定の手数料を徴収して買い取るサービス(事業者の資金調達の一手段)であり、法的には債権の売買(債権譲渡)契約です。
しかし、近時、ファクタリングを装った高金利の貸付けを行うヤミ金融業者の存在が確認されています。また、ファクタリングとして行われる取引であっても、経済的に貸付けと同様の機能を有していると思われるようなものは、貸金業に該当するおそれがあります。
事業者の皆様におかれては、こうした偽装ファクタリングを利用することのないよう、十分注意してください。”
悪質な業者は言葉巧みにファクタリングであると装いつつ、融資を行おうとしてきます。悪質な業者を完璧に見分ける方法はありませんが、以下のような企業には注意してください。
・企業のWebサイトが存在しない
・公式Webサイトに掲載されている電話番号が携帯電話番号のみ
・見積もりがない、もしくは費用の詳細が不明瞭
・審査がない
・手数料が極端に低い、もしくは高い
・契約書がない、もしくは不明瞭
・契約書のタイトルが「金銭消費貸借契約書」になっている
上記の特徴に当てはまる場合は、利用しない方がよいでしょう。
介護報酬ファクタリングを利用する際に押さえておくべきポイント8選
ここからは、介護報酬ファクタリングを利用する際に押さえておくべきポイントを8つご紹介します。
手数料は相場内に収まっているか
介護報酬ファクタリングの手数料は先述の通り、0.25~1%程度が相場です。ファクタリング会社によっても、場合によってはもう少し高くなることがありますが、並外れて高い場合は避けた方がよいでしょう。
逆に、手数料があまりにも低過ぎる場合にも注意が必要です。見かけの手数料を安くして、事務手数料などの名目で料金を契約後に上積みしてくる可能性があるためです。業者同士の手数料を比較する場合は、総額でいくらかかるのかを確認しておきましょう。
なお、見積もりは1社ではなく複数社、できれば3社以上から取るのがおすすめです。
入金までのスピードは早いか
入金までのスピードも、事前に確認しておきましょう。介護報酬ファクタリングは3社間ファクタリングの一種であるため、基本的に即日入金は期待できません。短くても数日、長ければ2週間程度かかるでしょう。人件費や光熱水道費など、支払い時期が決まっている支出のために資金調達をする場合は、入金までのスピードが早いファクタリング会社を選ぶのがおすすめです。
なお、同じファクタリング会社でも、売却する債権の金額やその他条件によって入金までの日数は変化します。例えば前回3日で入金されたからといって、今回も3日で入金されるとは限りません。都度入金スピードを確認しましょう。
前払い率はどの程度か
繰り返しになりますが、介護報酬ファクタリングでは支払いが2回に分けられることが多いです。前払い率は、ファクタリング会社によって変動する可能性があります。ある程度大きな金額を早期に現金化したい場合は、前払い率の高いファクタリング会社を選ぶとよいでしょう。
ただし、介護報酬ファクタリングの手数料は前払いされた金額に対してかかるため、前払い率が高くなるとその分手数料も高くなります。
例えば、手数料1%のファクタリング会社で100万円の介護報酬債権を売却した場合、前払い率が80%ならば「100万円×80%×1%」という計算式で手数料は8,000円です。
前払い率が90%になると「100万円×90%×1%」という計算式になり、手数料は9,000円です。介護報酬債権の金額が高くなるほど、手数料にも差が出ます。手数料を抑えたい場合は、あえて前払い率が高くないところを選ぶのも一つの方法です。
貸付・融資と疑われるような契約内容ではないか
ファクタリング会社の中には、偽装ファクタリングを行う悪徳業者が紛れ込んでいる可能性があります。偽装ファクタリングを見分けるためにも、契約書のチェックは入念に行いましょう。
まずは、契約書のタイトルを確認してください。ファクタリングは債権の譲渡であるため、通常は「債権譲渡契約書」などと記載されているはずです。もし「金銭消費貸借契約書」といった表記になっていた場合、それは融資の可能性が高いので契約しないようにしましょう。貸金業登録をしていない業者が融資を行うのは違法行為です。
さらに償還請求権の有無もチェックしましょう。償還請求権は、売掛先が債務を履行しない場合、ファクタリング会社が元の利用者に対して支払を求める権利です。
ファクタリングは、原則償還請求権なしで行います。その場合、万が一売掛債権売却後に売掛先が支払い不能に陥っても、損失を被るのはファクタリング会社です。一方、悪徳業者は償還請求権をありに設定してくることが多いです。償還請求権があるからといって必ずしも悪徳業者であるわけではないですが、基本的には償還請求権がないファクタリング会社を選ぶようにしましょう。
企業情報がWebサイトに正しく記載されているか
ファクタリング会社を選ぶ際には、企業のWebサイトを確認しましょう。以下の条件に当てはまる場合は、利用を避けた方が無難です。
・Webサイトが存在しない
・設立から1年以内(短期間に設立と廃業を繰り返している可能性あり)
・本社の住所がバーチャルオフィスになっている、もしくは虚偽の住所を記載している(Google Mapsやビルのテナント情報などで本当にオフィスがあるか確認する)
・情報量が少ない
ファクタリング会社の実績が掲載されている場合は、そちらも確認しておきましょう。さらに手数料の目安や最低契約期間、解約手数料の有無などもチェックしておくと、サービスの比較がしやすくなります。
買取可能額の上限・下限はどのくらいか
ファクタリング会社の中には、買取可能額の上限と下限を設定しているケースもあります。例えば、買取可能額が10万~1,000万円となっている場合、5万円の介護報酬債権は売却できません。5,000万円の介護報酬債権は1,000万円分だけ買い取ってもらえることもありますが、ファクタリング会社によっては買い取りを断られる場合もあります。
ファクタリング会社から見た場合、額が少な過ぎる介護報酬債権は買い取っても手数料がわずかにしかならずメリットが少ないです。逆に額が大き過ぎる介護報酬債権は、万が一回収できなかった場合のリスクが大きいです。このような事情から、買取可能額の上限・下限を定めているファクタリング会社が存在します。
少額もしくは高額な介護報酬債権を売却したい場合は、買取可能額を事前に確認しましょう。
契約期間に問題はないか
介護報酬ファクタリングでは、数カ月~2年程度の契約期間が設けられることが一般的です。契約期間の途中で解約する場合、解約手数料がかかるかもしれません。また、事前告知が必要となる契約もあります。契約期間、解約手数料、告知期間の3つは事前に確認しておきましょう。
介護ソフトの導入は必要か
介護ソフトとは、介護現場で求められるさまざまな業務を支援するソフトウェアのことを指します。具体的には、以下のような機能を備えていることが多いです。
・請求関連機能:請求書の作成、送付機能など
・計画関連機能:介護計画書の作成、予定実績の管理など
・介護記録関連機能:介護記録、職員の勤怠管理など
介護ソフトは介護現場のICT化を進め、業務の負担軽減や情報管理の効率向上に役立つため、導入している介護事業者も多いでしょう。しかし、ファクタリング会社によっては、利用する介護ソフトが指定されているケースがあります。既に導入している介護ソフトがある場合は、そのまま利用できるかを確認しておきましょう。
介護報酬ファクタリングがおすすめなケース
介護報酬ファクタリングがおすすめなケースをご紹介します。
介護施設を開業・増設したい場合
介護施設は、簡単には開業・増設できません。例えば、新たに施設を開業する場合は、以下のような手続きを行う必要があります。
・事業用銀行口座の作成
・法人の設立
・事業所の用意
・事前協議
・介護事業所の確保
・職員や備品などの確保
・指定前研修
・介護事業者指定申請
・現地調査
上記の手続きを行いながら、同時に銀行融資を受けるための資料を用意するには一定の手間と時間がかかります。介護報酬ファクタリングは比較的手続きが簡単なので、開業時や増設時の忙しい時期でも利用しやすいでしょう。
急ぎで資金調達が必要になった場合
介護事業者が使える資金調達には、銀行融資や日本政策金融公庫からの融資、ビジネスローンなどがあります。しかしいずれも融資であるため審査が厳しく、入金まで時間がかかるケースが多いです。
介護報酬ファクタリングであれば、比較的審査のハードルが低く、入金までの日数も融資に比べて短い傾向にあるため急な資金需要にも対応できます。
融資以外の資金調達を希望している場合
融資は負債が増えるため、貸借対照表が悪化しやすいという点がデメリットです。
その点、介護報酬ファクタリングは融資ではないため借入金が増えず、信用情報にも影響が出ません。また、余分な資産を減らせるためROAなどの指標を改善できます。負債を増やしたくないなら、介護報酬ファクタリングは有力な選択肢となるでしょう。
まとめ
介護報酬ファクタリングは、介護報酬債権を売却して早期に現金を得る資金調達方法です。通常、介護報酬債権を現金化するには2カ月ほど待つ必要がありますが、介護報酬ファクタリングなら数日~2週間程度での現金化が可能です。原則として、介護報酬債権の何割かの金額が前払いされます。
なお、介護報酬ファクタリングは融資ではないため負債が増えず、貸借対照表を健全に保てます。売掛先の信用度が高いため、低い手数料で利用できるのもメリットです。
ファクタリング会社を選ぶ際には、手数料や入金スピード、契約期間などをしっかりと確認しましょう。中にはファクタリング会社を装って融資を行ってきたり、相場よりもはるかに高い手数料を請求してきたりする悪徳業者も存在するため注意が必要です。
介護報酬ファクタリングを導入したいのならば、株式会社Mentor Capitalがおすすめです。ファクタリングの取引実績は年間3,000件以上あり、赤字決済・債務超過・税金滞納などがある場合でも柔軟に対応します。無料でファクタリングに関する相談や査定を受け付けているので、資金繰りにお悩みの介護事業者の方はお気軽にご相談ください。