ファクタリング詐欺の手口とは? 悪徳業者の巧妙な罠と対策
最終更新日:2025年05月30日
ファクタリング会社の中には、法に反した事業を行う悪徳業者も存在しています。万が一悪徳業者と契約してしまった場合、法外な利息を取られたり、脅迫などの被害に遭ったりする可能性が否定できません。
一方で悪徳業者には優良業者には見られないいくつかの特徴があり、事前に相手の手口を知っておけば詐欺に遭う可能性を大きく減らせます。この記事では、悪徳ファクタリング会社の手口や見抜き方、さらには万が一被害に遭ってしまった際の相談窓口を解説します。
Table of Contents
ファクタリングを利用した詐欺とは?
ファクタリング会社の大半は詐欺の心配なく利用できますが、利用者を騙そうとする悪徳業者が存在しているのも事実です。また、利用者側が詐欺の加害者となるケースも存在します。
たとえ悪意がなくとも、詐欺罪などに該当する行為をすれば、罪に問われかねません。ファクタリングを利用する際には、自身が被害者にも加害者にもならないよう十分に注意しましょう。
悪質業者による被害に遭うケース
ここでは、悪質なファクタリング会社の典型的な手口を解説します。
ファクタリングを装った高金利融資
悪徳ファクタリング会社の手口で特に多いのが、ファクタリングを標榜しながら実際には融資を行うというものです。ファクタリングは売掛債権を買い取る仕組みですが、悪徳業者は一般的なファクタリング会社を装いつつ、実際には売掛債権を買い取らず言葉巧みに融資に誘導してきます。
融資を事業として行う際には、貸金業法に基づき財務局長または都道府県知事の登録を受ける必要がありますが、悪徳業者は登録などしていないケースが大半です。このような仕組みを「偽装ファクタリング」といいます。相談や見積もりの際に融資を勧めてくるようなファクタリング会社は偽装ファクタリングが目的の悪徳業者な可能性が高いため、注意が必要です。
不当に高額な手数料の請求
悪徳業者の大半はそもそも違法な融資を行っており、ファクタリング会社ではないのですが、中にはファタリング会社として悪質な事業を行うところもあります。典型的な手法は、相場と比べて明らかに高い手数料を請求するというものです。
ファクタリングは貸金業ではなく、手数料に関する法律の規制もありません。また、ファクタリングの手数料相場は融資の金利相場ほど広く知られていません。それをいいことに、相場から逸脱した手数料を求めてくる業者は確かに存在しています。
ファクタリングの手数料相場は2社間ファクタリング(売掛先への連絡を行わない)の場合は4~18%、3社間ファクタリング(売掛先の承諾が必要)の場合は2~9%です。明らかに高過ぎる手数料を請求されたときは、契約を急がず慎重に検討しましょう。
参考:一般社団法人 日本中小企業金融サポート機構.「ファクタリングで詐欺行為はどうなる?正しく利用するには」
給与ファクタリング
給与ファクタリングとは、未払いの給与を賃金債権として買い取ってもらうファクタリングサービスです。手数料を払う代わりに、給与を給料日よりも早く受け取れる仕組みです。
給与ファクタリングは通常のファクタリングとは異なり、貸金業に該当します。貸金業には前述の通り登録が必要ですが、給与ファクタリングを行っている業者の多くは登録をしていない闇金業者です。利用すると年率換算で数百%以上の違法な手数料を支払わされたり、悪質な取り立ての被害にあったりする可能性があります。金融庁も給与ファクタリングのリスクを理解し、注意を呼びかけています。
仮に違法でない業者であっても、給与ファクタリングの利用はおすすめできません。一度利用すると、手数料に家計を圧迫され、また給与ファクタリングを利用しなければならなくなる悪循環に陥る可能性が高いです。
利用者が加害者となってしまうケース
ファクタリングの利用者側が詐欺の加害者になってしまうケースもあります。故意に行った場合はもちろん、悪意がなかった場合でも詐欺罪や私文書偽造罪などに問われる可能性があるため注意が必要です。
二重譲渡
二重譲渡とは、同じ売掛債権を複数のファクタリング会社に譲り渡す行為のことです。これは法律上、詐欺にあたる違法行為です。
例えば、A社がB社に対して持っている1つの売掛債権を、ファクタリング会社X社とY社の両方に譲渡してしまうようなケースです。特に2社間ファクタリングの場合、ファクタリング会社が債権の真偽を確認するのが難しく、結果として一時的に多くの資金を調達できてしまう可能性があります。
しかし、実際には売掛債権は1つしか存在しないため、支払い期日になってもどちらか一方のファクタリング会社にしか支払うことができません。もう一方の会社は支払いを受けられず、騙されたことに気付きます。
その結果、被害に遭ったファクタリング会社から損害賠償請求を受けるかもしれません。また意図的な二重譲渡と判断された場合は、詐欺罪として刑事告訴されるリスクもあります。
不良債権の譲渡
不良債権とは、債権のうち回収が困難であるか、困難になる可能性が高いものです。原則、ファクタリングの買い取りの対象は確定債権(入金額や入金日が確定している債権)や将来債権(継続的な取引をしており、将来も定期的に発生する債権)であり、不良債権は対象外です。
もし利用者が自身の保有する債権が不良債権と知っていながら、計画的にファクタリング会社に譲渡した場合、詐欺罪に該当する恐れがあります。
決算書の粉飾
故意に不正な会計を行い、虚偽の内容の決算書を作成する行為が粉飾決算です。自社の財務状況をよく見せて対外的な信頼を勝ち取ろうとする一般的な粉飾決算と、財務状況を悪く見せて脱税しようとする逆粉飾決算に分類できます。
ファクタリングの審査に通過するために、自社の財務状況をよく見せようと粉飾決算を行った事実が明るみに出た場合、詐欺罪などの対象になる他、損害を被ったファクタリング会社から損害賠償を請求される恐れもあります。
そもそも審査では自社の財務状況よりも売掛先の経営状況が重視されるため、自社の財務状況をよく見せることに大きなメリットはありません。どのような理由があっても粉飾決算をするのはやめましょう。
ファクタリングを利用した詐欺の事例
ここでは、日本で実際に発生したファクタリングを用いた詐欺の事例を紹介します。
ファクタリングを装ったヤミ金融被害の事例
2016年9月、売掛金の回収が進まず資金繰りに悩んでいた関西の加工会社会長が、ファクタリング会社を利用しました。売掛債権320万円を譲渡する一方で、同じファクタリング会社から20万円を借り入れ、利息を含めた31万円を弁済。債権はその後、会長側に戻されました。
業者は債権の購入代金を支払っていないことから、大阪府警経済課は一連の取引を債権を元にした融資であると判断。ファクタリング会社が貸金業登録を行っておらず、同様の手口を用いた貸し付けを繰り返していたとして、14人を貸金業法違反の疑いで逮捕しました。ファクタリングを装った融資にはくれぐれも注意が必要です。
参考:日本経済新聞.「ファクタリング、ヤミ金が装う 違法貸し付け、大阪などで摘発」
法外な手数料の給与ファクタリングの事例
パチンコにハマり、信用情報機関のブラックリストに掲載され借り入れに制限がかかってしまった鹿児島市の男性会社員。ある日SNSで給与ファクタリングの書き込みを発見し、10万円の振り込みを受けました。融資条件は1カ月後に手数料を含む15万円を弁済することでしたが、数カ月で支払いが立ち行かなくなり、弁護士に相談。手数料は年利換算で600%を超えていました。
また、業界でも比較的手数料が安いと評判だったファクタリング会社が給与債権の買い取りと称して融資を行い、1400%以上の金利を支払わせた事例もあります。ファクタリング会社は原告から提訴され、貸金業ではないと主張したものの、裁判所は給与ファクタリングは融資であるとの見解を示しました。
参考:日本経済新聞.「給料ファクタリングご用心 狙われる「前借り感覚」」
参考:Accel Factor.「給与ファクタリングの特徴・事例を弁護士が解説!知っておきたい手口と違法性」
詐欺に巻き込まれないためのファクタリング利用のポイント
ファクタリング詐欺に巻き込まれると、貴重な時間とお金を失います。最悪の場合、本業に支障が出て倒産しかねません。不要なトラブルを避けるためにも、以下のポイントをきっちり押さえておきましょう。
契約内容をよく確認する
契約を結ぶ前に、契約書の内容を十分に精査しましょう。手元資金がすぐにほしいからといって、よく読まずに安易に判を押すのは非常に危険です。
まずは契約書の表題を確認しましょう。一般的に、ファクタリングでは債権譲渡契約書を交わします。表題が金銭消費貸借契約書となっている場合、それは債権買取ではなく融資の契約書であるため、後で高額な利子を請求される恐れがあります。
また、口頭での説明と契約書の内容に相違がある場合も危険です。内容に不明瞭な点がある場合は、できる限り弁護士や税理士などの専門家に目を通してもらうことをおすすめします。
手数料の相場を把握しておく
悪徳業者に騙されないためにも、契約の前に手数料の相場を把握しておきましょう。
前述の通り、手数料の相場は2社間ファクタリングの場合は4~18%、3社間ファクタリングの場合は2~9%です。2社間の方が高いのは、債権の実在性が不明瞭になりやすく、ファクタリング会社の負うリスクが高くなるためです。
相場よりも高い手数料を提示された場合、詐欺ではなくとも悪徳業者である可能性が高いため、利用は避けた方が良いでしょう。では手数料が低ければ低いほど良いのかというと、そうとも限りません。手数料を低くして、よく分からない名目の費用を別途取ってくる可能性があるからです。契約書によく目を通し、料金の内訳が明確になっていることを確認しましょう。
金利を設定している業者は避ける
ファクタリングは売掛債権の譲渡であり融資ではないため金利は発生しません。利用者からすればどちらも必要経費であり、大した違いはないように見えるかもしれませんが、あくまでも金利は融資に伴って発生するものです。ファクタリング会社が金利を設定してきた場合、違法な融資を行おうとしている可能性が高いです。
複数の業者から見積もりを取る
ファクタリングを利用する際には、極力複数の業者から相見積もりを取ることをおすすめします。相見積もりを取ることにより、手数料の相場や対応の質を把握でき、一般的な対応からずれた悪徳業者を見抜きやすくなります。
また、複数のファクタリング会社に相見積もりを取っている(他のファクタリング会社と契約するかもしれない)ことを伝えれば、より良い条件を提示してもらえるかもしれません。多少手間はかかりますが、この手間が手数料削減につながります。
なお、相見積もりを取る際には必ず同じ条件で見積もりを出しましょう。例えば、A社には2社間ファクタリングの見積もりを、B社には3社間ファクタリングの見積もりを依頼してしまうと、正確な比較ができなくなります。
審査が甘い業者は警戒する
資金調達に焦っているとついつい審査が甘いファクタリング会社を探してしまいがちですが、審査が甘いファクタリング会社にはリスクがあります。
そもそも、審査を甘くすればファクタリング会社が負うリスクは高くなるはずです。ファクタリング会社はリスクの穴埋めをするために、相場よりも高い手数料を請求してくるかもしれません。また回収できなかったときに備えて、償還請求権(回収不可能となったときにファクタリング会社が利用者に対して支払いを求める権利)ありの契約を結ぼうとしてくる可能性もあります。どちらも、利用者にとってはデメリットが大きいです。
また、中には審査なしを謳っているファクタリング会社もありますが、審査を全く行わずに適切な手数料の設定を行うのはまず無理です。基本的には、審査なし=悪徳業者であると考えた方が良いでしょう。
業者の実績や評判を調べる
相見積もりを取る際には、併せてファクタリング会社の実績や評判のチェックも行いましょう。まずは公式サイトを確認してください。公式サイトがない場合、あるいは電話番号が携帯電話のものしか記載されていない場合はかなり怪しいといえるでしょう。
また、会社が実在していることも確認しておきましょう。バーチャルオフィスやレンタルオフィスのみの場合、急に連絡が取れなくなるかもしれません。逆に都市部に本社がある場合、信頼性は比較的高くなります。
また、インターネット上の口コミや商工会議所などの情報もある程度参考になります。ただし、インターネット上の書き込みには嘘も紛れ込んでいるため、鵜呑みにするのは危険です。
金融庁の注意喚起に目を通す
金融庁のWebサイトに「ファクタリングの利用に関する注意喚起」というページがあります。このページには偽装ファクタリングの仕組みや特徴、悪質な取り立てにあったときの相談先などが掲載されているため、一度目を通しておいた方が良いでしょう。
また、金融庁は無登録で貸金業務を行っている会社名を公表しています。念のために、そちらも確認しておきましょう。
参考:金融庁.「ファクタリングの利用に関する注意喚起」.
参考:金融庁.「違法な金融業者にご注意!」.
不審に感じたら相談する
万が一怪しげなファクタリング会社と契約してしまった場合、もしくは何らかの被害にあってしまった場合は、以下の機関に相談しましょう(2025年4月20日時点での情報です)。
窓口の種類 | 受付時間 | 電話番号 | |
財務局の相談窓口 | 北海道財務局 | 9時~16時 | 011-729-0177 |
東北財務局 | 9時~16時 | 0120-917-993 | |
関東財務局 | 9時~16時 | 048-615-1779 | |
北陸財務局 | 9時~16時 | 076-208-6711 | |
東海財務局 | 9時~16時 | 052-687-1887 | |
近畿財務局 | 9時~16時 | 06-6949-6530 | |
中国財務局 | 9時~16時 | 0120-99-0028 | |
四国財務局 | 9時~16時 | 087-811-7803 | |
九州財務局 | 9時~16時 | 096-353-6352 | |
福岡財務支局 | 9時~16時 | 092-433-8066 | |
沖縄総合事務局 | 9時~16時 | 098-866-0095 | |
中小企業庁の相談窓口 | 中小企業 金融・給付金窓口 | 平日・休日9時~17時 | 0570-783-183 |
銀行協会等の相談窓口 | 全国銀行協会 | 平日9時~12時、13時~17時 | 050-3385-6091 |
全国信用金庫協会 | 平日9時~17時 | 03-3517-5825 | |
全国信用組合中央協会 | 平日9時~17時 | 03-3567-2456 | |
怪しい業者に関する相談窓口 | 金融庁金融サービス利用者相談室 | 平日10時~17時 | 0570-016-81103-5251-6811(IP電話の場合) |
警察 | 平日8時30分~17時15分 | #9110(各都道府県警察相談ダイヤル) | |
日本貸金業協会 | 平日9時~17時 | 0570-051-05103-5739-3861(IP電話からの場合) |
まとめ
ファクタリングは便利な資金調達手段ですが、ファクタリング会社の中には悪徳業者が紛れ込んでいる場合があるため注意が必要です。悪徳業者の典型的な手口は、ファクタリングを装って融資を行う偽装ファクタリングです。偽装ファクタリングを行う業者の大半は貸金業登録を行っておらず、法外な利息を取られる恐れがあります。
一方、利用者側が加害者となるケースもあります。例えば、債権の二重譲渡や不良債権の譲渡、決算書の粉飾などを行った場合、ファクタリング会社から損害賠償を求められたり、詐欺罪の対象になったりするかもしれません。資金調達を急いでいるからといって、違法行為に手を染めるのは止めましょう。
ファクタリングを利用する際には、契約書の内容を精査し、分からないところがあれば適宜質問し、場合によっては弁護士などの専門家に相談してください。また審査がない業者や、金利を設定している業者の利用は避けましょう。
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