ファクタリングとローンの違いを分かりやすく解説! メリット・デメリットも併せて紹介
最終更新日:2024年09月04日
企業が利用できる資金調達手段には、さまざまなものがあります。中でも、近年利用されることが多くなっているのが、売掛債権の現金化サービスであるファクタリングです。
しかし、ファクタリングが金融機関からの融資とどのように違うのか分からず、どちらを利用すべきかお悩みの方もいらっしゃるでしょう。
そこで今回は、ファクタリングとローンの違いを分かりやすく解説します。ローンと比較した場合の、ファクタリングのメリット・デメリットも紹介するので、参考にしてみてください。
目次
そもそもファクタリングとは?
ファクタリングとは、自社が保有する売掛債権をファクタリング業者に売却し、資金を調達する方法です。取引先からの売掛金の回収を待たずに現金を手に入れられるのがメリットです。
ファクタリングは借金ではなく、あくまで売掛債権の売却であるため、信用情報に傷が付くことはありません。また審査が迅速で、かつオンラインで簡単に利用できるため、急いで資金を調達したい場合に適しています。
なお、ファクタリングには2者間ファクタリングと3者間ファクタリングの2種類があり、状況に適したものを選択できます。
2社間ファクタリングと3社間ファクタリングの違いは、取引先の関与と手数料です。2社間ファクタリングは、売掛先への通知が不要で、手数料が高い傾向にあります。
一方、3社間ファクタリングは、売掛先にファクタリングの利用が知られますが、手数料が低いのが特徴です。
ファクタリングとローンの違いとは?
一般的な資金調達方法として、ローン(融資)をイメージする方が多いかもしれません。
ここでは、ファクタリングとローンの違いについて解説します。具体的な違いは以下の通りです。
・審査の対象
・資金調達までにかかる時間
・金利・手数料
・審査で重視されること
・支払期日
・支払・返済方法
・経理の仕訳方法
・資金調達できる金額の上限
それぞれ詳しく解説します。
審査の対象
ファクタリングとローンでは、審査の対象が異なります。
ファクタリングの場合、審査されるのは、主に売掛先です。つまり、自社の財務状況よりも、債権の支払元となる取引先の支払能力や信用度が重視されます。
一方、ローンで審査されるのは、借り手である企業自体です。
そのため、自社の業績が芳しくない場合でも、取引先の信用力が高ければファクタリングを利用できる可能性があります。
反対に、ローンでは自社の財務状況が良好でないと審査に通りにくく、利用できないケースもあるでしょう。
資金調達までにかかる時間
ファクタリングとローンでは、資金調達ができるまでの時間も異なります。
ファクタリングでは、申し込みから資金調達までの時間が短く、最短で当日中に資金を得られることもあります。
これは、ファクタリング業者が主に取引先の信用力を審査するためで、複雑な書類審査を必要としないケースが多いからです。オンラインで完結するサービスも増えており、迅速な資金調達が可能です。
一方、ビジネスローンも比較的スムーズな資金調達が可能ですが、通常は数日から1週間程度かかるケースが多いといえます。これは、借り手企業の詳細な財務状況や事業計画を審査する必要があるためです。
ただし、FinTech企業が提供するオンラインローンサービスでは、AIによる審査などにより、従来よりも短期間で融資を受けられるケースも増えています。
金利・手数料
金利や手数料も、ファクタリングとローンでは異なる部分があります。
ファクタリングでは手数料が発生し、通常は売掛債権額の数%程度のコスト負担が必要です。なお、手数料は債権の額面金額から差し引かれる形で支払います。
例えば、100万円の売掛債権を売却する場合、3%の手数料であれば97万円が即時に入金されます。手数料率は、取引先の信用力や債権の支払期日までの期間によって変動するのが一般的です。
一方、ローンでは金利が発生します。例えば、年利5%のローンを組んだ場合、借入額の5%が1年間の利息として発生します。ただし、借入条件によっては、利息の計算方法が異なる場合があるため、事前の確認が必要です。
一般的に、ファクタリングの手数料はローンの金利よりも高くなる傾向にありますが、短期の資金調達ではファクタリングが有利な場合もあります。
審査で重視されること
ファクタリングとローンの違いとして、審査で重視されることも挙げられます。
先述のようにファクタリングの審査では、売掛金を支払う取引先の経営状況が重要視されます。ファクタリング業者にとって、最終的に債権を回収できるかどうかが重要だからです。
具体的には取引先の業績や財務状況、市場での評判、過去の支払履歴などが細かくチェックされます。
一方、ローンの審査では借り手である企業自体の財務状況、返済能力、事業計画などが重視されます。過去の決算書や資金繰り表、事業計画書などが詳細に分析され、返済能力の有無を判断されるのが一般的です。
また、代表者の個人資産や信用情報も審査の対象となるケースがあります。
支払期日
支払期日も、ファクタリングとローンとの違いです。
ファクタリングでは、本来の売掛金の支払期日がそのまま維持されるのが一般的です。取引先は当初の期日に支払いを行うため、ファクタリング業者に支払うのはその直後となります。
例えば、支払期日が3カ月後の売掛金をファクタリングで売却した場合、取引先は3カ月後に支払いを行うので、その後速やかにファクタリング業者へ支払います。
一方、ローンでは借入時に設定された返済期日に従った返済が必要です。通常、ローンの返済は毎月の分割返済や一括返済などの形式で行われます。返済期間は、資金使途や借入額によって異なりますが、数カ月から数年にわたることも珍しくありません。
ファクタリングでは支払期日の変更がないため、取引先との関係を維持しやすいですが、ローンでは返済計画に基づいた計画的な返済が必要です。
支払・返済方法
ファクタリングとローンでは、支払方法や返済方法も異なります。
ファクタリングの支払方法は一括決済のみです。本来の請求期日に取引先からの入金があれば、そのお金をファクタリング業者に送金することで、取引が完了します。
業者への支払日の調整はできない他、貸金業法に触れる恐れがあることから、分割での支払いはできません。
一方、ローンでは借り手企業が定期的に返済を行う必要があります。
返済方法は、毎月の分割返済やボーナス併用返済、一括返済などさまざまな形式があり、借り手企業の銀行口座からの自動引き落としで行われます。返済方法や引き落とし口座は借入時に決定するのが一般的です。
ファクタリングでは返済の負担がないため、資金繰りの予測がしやすいというメリットがありますが、ローンでは計画的な返済が求められるため、返済計画を綿密に立てる必要があります。
経理の仕訳方法
ファクタリングとローンの違いには、経理の仕訳方法もあります。
ファクタリングは売掛債権の売却として扱われるため、貸借対照表上では売掛金がなくなり、現金に変わります。借方に現金、貸方に売掛金を計上するのが、具体的な計上方法です。
また、ファクタリングの手数料は売上債権売却損(売掛債権譲渡損、なければ支払手数料でもOK)の勘定科目で費用計上されます。
一方、ローンは負債として貸借対照表に記載されます。具体的には、最初に借方に現金、貸方に借入金を計上し、返済時には借方に借入金、貸方に現金を計上します。
また、利息は支払利息として費用計上するのが一般的です。
資金調達できる金額の上限
ファクタリングとローンの違いとして、資金調達ができる金額の上限も挙げられます。
ファクタリングでは、売掛債権の金額が上限となり、それ以上・それ以下の金額は受け取れません。
ただし、ファクタリング業者によっては、リスクを避けるためにファクタリングが可能な上限額を設定しており、売掛債権が上限額を越えている場合、買い取ってもらうのが難しくなるでしょう。
一方、ローンの場合は、金融機関が設定した融資限度額が上限です。企業の規模や信用力によって異なり、企業の年商の1〜2割程度が融資限度額の目安となるのが一般的です。
なお、業種や企業の成長性によっては、それ以上の融資を受けられることもあります。
ローンに比べてファクタリングを利用するメリット
資金調達が必要な場合に、ローンではなくファクタリングを選択した方がよいケースがあります。
ファクタリングを利用するメリットは以下の通りです。
・最短即日で資金を調達できる
・信用情報に傷が付かない
・自社の業績が悪くても利用できる
・売掛金を回収できないリスクを避けられる
・資産のオフバランス化を図れる
それぞれ詳しく解説します。
最短即日で資金を調達できる
ファクタリングの魅力の一つが、最短即日での資金調達が可能な点です。ファクタリングは、主に売掛先の信用力のみを審査するので、複雑な書類審査が不要になることが多く、審査完了までに時間がかからないためです。
通常のローンでは、審査に数日から数週間かかるので、ファクタリングの方が申し込みから入金までがスムーズといえます。
また、オンラインで完結するサービスが増えており、急な資金需要にも柔軟に対応できます。
例えば、取引先への支払いが迫っている場合や、突発的な設備投資の機会が訪れた際など、即座に資金を確保する必要がある状況では、ファクタリングは有効な手段といえるでしょう。
信用情報に傷が付かない
ファクタリングのメリットの一つが、借入とは異なり信用情報に傷が付かないことです。通常のローンでは、借入履歴が信用情報に記録され、過度の借入は将来の融資審査に悪影響を及ぼす可能性があります。
一方、ファクタリングは融資ではなく、あくまでも売掛債権の売却です。そのため負債として計上されず、貸借対照表上でも借入金が増加しません。企業の財務健全性を維持しつつ、必要な資金を調達できます。
特に、成長期の企業や一時的な資金需要がある企業にとって、選択肢を狭めることなく資金を確保できる点は大きな利点といえるでしょう。
自社の業績が悪くても利用できる
ファクタリングを利用するメリットとして、自社の業績が芳しくない場合でも利用できる点が挙げられます。
通常のローンでは、借り手企業の財務状況や返済能力が厳しく審査されますが、ファクタリングでは主に売掛先の信用力が重視されます。つまり、自社の業績が一時的に悪化していても、優良な取引先との取引があれば、資金調達が可能になるのです。
そのため、業績の波がある企業や、季節性のある事業を展開している企業にとって有効な資金調達手段となります。
例えば、建設業や農業など、季節によって売上が大きく変動する業種でも、安定した取引先との売掛債権があれば、必要なときに資金を確保できます。
売掛金を回収できないリスクを避けられる
企業が売掛金を回収できないリスクを軽減できるのも、ファクタリングを利用するメリットです。
一般的な掛取引では、売掛金の回収まで一定期間待つ必要があり、その間に取引先の経営状況が悪化したり、倒産したりするリスクがあります。
しかし、ファクタリングを利用して、売掛債権を売却すれば即座に資金化できるため、売掛金の回収リスクを回避できます。
特に、大口の取引や新規取引先との取引など、リスクが高いと判断される取引では、ファクタリングは有効な手段となるでしょう。
資産のオフバランス化を図れる
ファクタリングを利用することで、企業は資産のオフバランス化を図れるメリットがあります。ファクタリングは、利用しても負債や資産が増えないためです。
金融機関から融資を受けた場合は、貸借対照表の負債科目が増えますが、ファクタリングでは負債科目も資産科目も増えないため、貸借対照表がスリムになります。
このようなオフバランス化によって、ROA(総資産利益率)などの経営指標も改善されるため、投資家や株主に対してポジティブな印象を与えることも可能です。
特に、成長期の企業やM&Aを検討している企業にとって、資産のオフバランス化による財務体質の改善は重要な戦略となり得るでしょう。
ローンに比べてファクタリングを利用するデメリット
ファクタリングでの資金調達には、いくつかのメリットがある一方、ファクタリングを利用しない方がよいケースもあります。ローンと比較して、ファクタリングを利用するデメリットは以下の通りです。
・手数料が割高になる場合がある
・売掛先の信用状況によっては審査に落ちる
・売掛金の金額しか調達できない
・分割での支払いができない
それぞれ詳しく解説します。
手数料が割高になる場合がある
ファクタリングは、ローンと比較して手数料が割高になる傾向があります。ファクタリング業者が売掛債権を買い取るリスクを負うことになるので、そのリスクに見合った手数料を設定するためです。
通常、ファクタリングの手数料は、2社間ファクタリングで売掛債権額の10~20%程度ですが、取引先の信用状況や支払期日までの期間によっては、さらに高くなることもあります。
一方、ローンの金利は年率で表示され、一般的に数%程度です。特に、短期の資金調達では、ファクタリングの手数料がローンの金利を上回ることが多々あります。
そのため、資金調達の緊急性が低い場合や、長期的な資金需要がある場合は、ローンの方が総コストを抑えられる可能性が高いでしょう。
売掛先の信用状況によっては審査に落ちる
ファクタリングは、売掛先の信用状況によっては審査に通過できない恐れがあります。
ファクタリング業者は、最終的に売掛金の回収の是非を重視するため、売掛先の経営状況や支払履歴を厳しくチェックします。例えば、売掛先が業績不振や資金繰りに問題を抱えている場合、ファクタリングの利用が難しくなってしまうでしょう。
一方、ローンの場合は自社の返済能力が主な審査対象となるため、売掛先の状況に左右されにくいというのが特徴です。
また、ファクタリングは取引先ごとに審査が行われるため、一部の売掛金の売却のみが承認され、必要な資金を十分に調達できない可能性もあります。
売掛金の金額しか調達できない
ファクタリングのデメリットの一つが、売掛金の金額以上の資金を調達できないということです。
現在保有している売掛債権の範囲内でしか資金を得られず、事業拡大や大規模な設備投資など、売掛金を超える資金が必要な場合に大きな制約となります。例えば、1,000万円の設備投資が必要な場合でも、現在の売掛金が500万円しかなければ、不足分の500万円は別の方法で調達しなければなりません。
一方、ローンの場合は、企業の返済能力や事業計画に基づいて融資額が決定されるため、売掛金の金額に縛られることなく、必要な資金を調達できる可能性が高いといえます。
分割での支払いができない
ファクタリングは、売掛債権を一括で売却する仕組みであるため、分割での支払いができません。資金繰りの柔軟性という観点では、デメリットとなる可能性があるでしょう。
例えば、100万円の売掛債権をファクタリングで現金化した場合、その全額を一度に受け取ることになります。
しかし、実際の資金需要が段階的である場合、余剰資金が発生し、その分の手数料を無駄に支払うことになります。
一方、ローンの場合は、必要な金額を必要な時期に分割して借り入れることが可能です。
また、返済も毎月の分割返済や、ボーナス併用返済など、自社の資金繰りに合わせた柔軟な返済計画を立てられます。長期的な資金計画も立てやすく、資金効率を高められるでしょう。
まとめ
ファクタリングとローンは、資金調達ができる手段としては共通していますが、それぞれに特徴があり、審査や資金調達にかかる時間、審査で重視されるポイントなどが異なります。
状況によってファクタリングとローンのどちらが向いているのかを理解して、正しく使い分けることが重要になるでしょう。
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