最終更新日:2020年06月22日
Mentor Capitalです。
自己資金で運転資金を捻出することが理想的ですが、現実的には外部からの資金調達に迫られることは珍しくないと言えるでしょう。
その場合、借入金で調達する場合がありますが、運転資金を借り入れた後に、返済のためにキャッシュフローが悪化するケースがあります。
ではどのようにすれば借入金を有効に活用しながらキャッシュフロー対策を行うのが良いでしょうか。
企業生命を左右する非常に重要な存在である、「運転資金と借入金」の関係について解説します。
そもそも運転資金とは?
事業資金は設備資金と運転資金に大別され、
・設備資金は事業運営の基地となるオフィスや生産拠点となる工場の建設や借入れ、オフィスのパソコンや工場の設備機械などの購入資金で、会社の資産の調達資金だと言えるでしょう。
・運転資金は事業運営で必要となる流動性の高い手持ち資金、つまり現金を指します。
未回収の売掛金や現金化期日前の手形などは会社の資産ですが、運転資金には該当しません。
一般的に運転資金を売掛債権や、手形債権などを現金化するまでの支払い用の資金と捉える傾向があります。
しかし運転資金は適用範囲が広く借入金で資金調達を計画する会社に対し金融機関では運転資金の使用用途を精査・審査します。
設備資金よりも運転資金は適用される範囲が広い?
使用範囲が限定的な設備資金に対し運転資金設は適用範囲が広いのが特徴で、運転資金の資金調達先として利用される金融機関では運転資金を次の4つの項目に分類し区別しています。
・経常(通常)運転資金
運転資金の使用範囲が広いのは通常運転資金の存在が大きく影響していると言えます。
通常運転資金は買掛金や手形決済・人件費や家賃、光熱費などの支払いなど事業運営に関わる多くの支出に適応される運転資金です。
・増加運転資金
急激な業績成長や事業規模拡大などで未回収の売掛金や手形資金化までの支払いが増加し、
資金化と支払いのタイムラグを埋める繋ぎ資金としての運転資金が不足した際に必要となるのが増加運転資金です。
業績が好調であることは喜ばしいことですが、キャッシュフローのコントロールを誤ると黒字倒産するリスクに繋がる運転資金です。
・減少運転資金
売上規模の縮小で支払いが困難となった際に必要となるのが減少運転資金で増加運転資金のように建設的なものではない運転資金です。
減少運転資金が必要となる場合はキャッシュフローの健全化のために、業績の立て直しや経費削減などの対策を早急に行う必要があります。
・季節運転資金
従業員へのボーナスの支払いや季節性のある商品の仕入れなど、1年の中で定期的に必要となる運転資金です。
資金調達後は短期間で返済するべきで、返済計画を誤るとキャッシュフローが悪化し事業運営を危うくする可能性があります。
【運転資金の調達方法】
運転資金の不足が予想される場合は、速やかに資金調達を行う必要があります。
資金調達は次に挙げる3つの調達手段に分けることができます。
アセッドファイナンスは会社の保有資産を資金に置き換える資金調達手段で、資産価値が認められる有形資産や無形資産を売却し資金調達を行います。
資産のオフバランス化も行える資金調達手段として注目される「ファクタリング」もアセッドファイナンスの1つです。
デッドファイナンスは融資を受け借入金で資金調達を行うもので、3つの資金調達手段の中では最もポピュラーだと考えられます。
割引手形が不渡りになると買戻す必要がある手形割引は、売却ではなく借入金に分類されデッドファイナンスに属します。
エクイティファイナンスは投資を募る資金調達手段です。
大手上場企業が行う資金調達手段のような印象を受けますが、クラウドファンディングの普及で個人・中小・零細企業にも投資を募る道が開けたと言えるでしょう。
運転資金の調達に適した資金調達方法とは?
運転資金の資金調達は既述した3つの調達方法の中から、自社の事業規模や調達目標金額などの調達条件に合わせたものを選定する必要があります。
エクイティファイナンスは道が開けたと言うものの、実際に投資を募り資金調達成功には未だハードルが高いと考えられ、アセッドファイナンスとデッドファイナンスが現実的だと言えるでしょう。
アセッドファイナンスはデッドファイナンスに比べ資金調達速度が速く、売却益が運転資金となるので借入金のように返済が発生しないのがメリットですが、
資金に置き換えるだけの保有資産があることが資金調達の大前提となります。
デッドファイナンスは金融機関の審査に時間がかかり、調達資金は借入金となるため返済が必要となりますが、まとまった金額を調達できる可能性があるのが魅力です。
多くの企業が金融機関からの借入金を返済しながら運営される事実もあり、非常に有効的な資金調達方法になります。
なお、通常運転資金・増加運転資金・季節運転資金の場合は金融機関の融資で運転資金調達を行うことは難しくないと言えますが、
減少運転資金の場合は金融機関も積極的な融資を嫌うため審査通過が難しい傾向にあると言えます。
【借入金での運転資金調達を実現させる資金調達先や効果的な借入金返済期間とは?】
借入金での運転資金調達は、借入金返済がキャッシュフローに悪影響を及ぼす可能性がありますので、
資金調達先の選定に注意し借入金の返済計画をしっかりと練った上で利用するべきです。
【具体的な資金調達方法とは?】
一口に借入金(融資)と言っても取引銀行から直接融資を受けるプロパー融資・信用保証協会付きの融資・日本政策金融公庫などの公的融資・消費者金融など、
ノンバンクのビジネスローンや商工ローンなどが存在します。
運転資金の融資を行っている金融機関とは?
金融機関には様々な業態があり運転資金の融資に対しても各金融機関ごとに融資審査や担保設定の有無、利率などが異るので比較・検討した上で選定する必要があります。
次に挙げる金融機関が運転資金に対する融資を行っています。
民間銀行は営利を目的として運営されるため、一般的に融資に対する審査のハードルが高いと考えられていますが、
2002年に公表された「金融検査マニュアル別冊(中小企業融資編)」の影響で審査のハードルが低くなったと言えるでしょう。
公的金融機関として機能する日本政策金融公庫は個人・中小・零細企業や新興企業向けに積極的に融資を行っています。
無担保・無保証で万一事業に失敗しても借入金の返済義務が生じない融資あるので近年資金調達方法として注目されています。
消費者金融などのノンバンクは審査基準が緩い傾向にあり、スピード融資が魅力ですが、ご存知のように金利が高めに設定されているので、
緊急時以外は資金調達方法としてはあまりおすすめできません。
効果的な運転資金の借入金返済期間とは?
例えば日本政策金融公庫では整備資金の借入金返済期間は20年以内ですが、運転資金の借入金返済期間は7年以内に設定しています。
運転資金に対する最高融資度額は企業育成貸付資金・企業再生貸付資金共に4,800万円、
融資期間は企業育成貸付資金が7年間以内(据置期間1年以内)・企業再生貸付資金は20年以内(据置期間2年以内)で無理のない返済計画をたてることができます。
日本政策金融公庫で運転資金調達を行うためには、事業計画書や資金計画書などを提出し審査を通過する必要があります。
また一般的に審査には2週間前後の時間が必要です。
一般的に運転資金は設備資金よりも借入金返済期間が短く設定され、民間銀行では運転資金の借入金返済期間を1年未満の短期資金と1年以上の長期資金に分けて扱います。
長期間の借入金には相応の金利が発生することから運転資金を借入金で調達する際には、できるだけ短期間で借入金の返済を行うべきでしょう。
しかし短期間で借入金返済を行いキャッシュフローに悪影響を来すようであれば、中期的な借入金返済計画をたてるべきです。
無理のない返済計画を立て融資期間を決定することが重要!
融資で資金調達を行う際に無意味に最長の返済期間を選ぶと、次回の資金調達時に受けられる融資額が減少してしまいます。
また余剰資金が発生した際の繰り上げ繰り上げ返済は、金融機関の減益を意味し金融機関との関係が悪化するケースもあるので注意が必要です。
融資を受ける際にはしっかりとした返済計画をたて、無意味に融資期間を延ばさないことも運転資金調達時のポイントだと言えます。
必要な運転資金の計算法は?
運転資金を借入する前にどのぐらい必要なのかをしっかり把握しなければいけません。
基本的は計算法は以下のようになっています。
売掛金+棚卸資産-買掛金=運転資金
運転資金を借入するときは審査でどのぐらい必要なのかを質問されますので計算法を活用して明確にしておくようにしましょう。
どのぐらいを目安に借入すればいい?
運転資金を借入するときにどのぐらいを目安にすればいいのか分からない人も多いのではないでしょうか。そこで借入するときの目安について見ていきましょう。
基本的には創業資金の1割以上が自己資金
運転資金を調達するときは融資を受ける形にないますので審査が行われます。
審査の可決の目安となるのは創業資金の1割以上が自己資金であることとなっています。
そのため創業資金が1000万円だとしたら自己資金は100万円以上用意しなければいけません。
自己資金以外を借入して補う形になりますので基本的な目安として考えておきましょう。
自己資金比率が高いほど審査が可決されやすくなる
創業資金の1割以上を自己資金にしてそれ以外を借入するの運転資金の調達の目安となっています。
しかし自己資金を多く準備すれば融資を受けるときに信用度が高まるので審査が可決されやすくなります。
そのため自己資金を2割から3割程度準備した方が運転資金を上手に調達することができるのです。
必ずしも目安通りに借入すればいいというわけではありません。
なぜ運転資金が必要になったのかを明確に!
運転資金の借入をするときは審査でいろいろな質問をされます。
主に金額がメインになりますが、借入理由を質問されることも多いです。
そこでしっかり答えられないと業者側も不信感を抱いてしまうので明確にしておくことが大切になってきます。
このように運転資金が必要になる理由がいくつかあるので審査で質問されたときに答えられるように準備しておきましょう。
借入希望日を明確に!
運転資金の借入の審査で担当者に情報を伝えますが、借入希望日を明確にしておくと可決率が上がります。
運転資金の借入が必要な理由の他にいつまでに借入をしたいとアピールすると業者側に事業に対する熱意が伝わるのです。
そのため業者側もサポートしてあげたいという感情が強くなり審査が可決されやすくなります。
借入希望額を明確にして審査でしっかり伝えるようにしてみましょう。
返済計画を立てておこう!
運転資金を借入するときは返済する必要があります。
業者側にとっては運転資金を貸した後にしっかり返済してくれるのかどうか少なからず不安を抱いているはずです。
そこで返済計画をしっかり立てて審査で担当者に伝えておくと効果的です。
計画的だと判断されて安心感が生まれるのです。
早めに完済することができる返済計画を立てておくと審査の可決率も大幅にアップするので意識してみましょう。
長期運転資金の借入は注意が必要!
毎月の資金操りが大変な場合は長期運転資金の借入をする必要が出てくることがあります。
審査で担当者に伝えると正当な理由と判断されて借入することができるケースも多いです。
しかし長期運転資金を借入するときは残高が減りにくい状態にもなるので業者側にとってはリスクもあります。
そのため逆効果となって借りにくくなることも少なくないのです。
長期運転資金を借入するときは慎重に交渉するようにしてみましょう。
【最後に】
借入金に対して「借金」のイメージが強い方は借入金の存在を肯定的に捉えづらいかもしれません。
しかし融資として受けた借入金を運転資金として活用し事業運営が好転することは珍しくありません。
運転資金が枯渇し企業生命が危機に陥る前に資金調達手段の1つとして、借入金の調達手段を検討することは事業運営に対する保険のようなものですから、
1度検討しておいても決して損にはならないと考えられます。
しかし融資期間の設定を誤るとキャッシュフローを悪化させるリスクも伴いますので、融資による運転資金調達の際はしっかりとした返済計画をたて最適な融資期間で資金調達を行うべきです。
いかがでしたでしょうか?
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