最終更新日:2022年08月25日
日々の生活費や自動車・住宅購入の費用など、手元の現金だけでは支払いに足りない場合の資金調達手段として広く活用されているのが借入です。
銀行や消費者金融など金融機関からの借入ではなく、両親や親族、親友や知人など身近な人からお金を借りる際も正しい理解ができていない場合、思わぬ不利益を被る可能性があります。
今回はその心得と注意点について紹介します。
目次
銀行や消費者金融などの金融機関から借入れた場合、たとえ残額が1円という微々たる額であったとしても、完済までは借入の返済や督促を受けます。
両親や兄弟などの身近な人から借入をした場合、返済を迫られても身近な関係性に甘えて延ばし延ばしになる場合があります。
特に親族などの場合、本来の返済日から遅れても督促されるケースはあまりないのではないでしょうか。
金融機関からの借入のような利息の発生もゼロであったり、利息が発生しても限りなく少ない金額で抑えられる場合もあります。
しかし、親族や知人など身近な人から借りた借入でも法的な観点から見れば、借り主はその借入に対する返済義務が生じます。
また借入の際に正式に借用書を作成した場合には、その借用書に記された条件で返済を行う義務も課せられており、借り主は借用書の記載通りに返済を行う必要があります。
特に借入の際に交わした借用書の中に、利息などの条件が記載されていれば、それに対する支払い義務が発生しますので、滞納せず完済する必要がある点を理解しておきましょう。
マンションや戸建て住宅などの購入費用や自動車の購入費用、或いは自営の会社の運転資金名目で高額な資金を親族や知人など身近な人から借入して賄うケースは少なくありません。
この時、適切な対応や返済を行っておかないとたとえ借入の名目で借りた資金でも法的観点から「贈与」とみなされ、贈与税の支払いを求められるケースが存在することは意外と知られていません。
一般的に贈与とは、祖父母や両親がその孫や子供に対して手持ちの資金や有価証券、不動産などの資産を譲り渡す行為のことを指し、
これを行った場合に譲り渡した資産額に応じた税金が発生し、これを贈与税といいます。
本人の認識や自覚ではなく税制上の問題が絡むため、税務署も厳しく追求せざるを得ないことが多く場合によっては脱税として認定され、追徴課税などで余分なお金がかかってしまうこともあります。
大切なのは税務署から指摘を受けた際に客観的に借入であることを証明できることです。
親族間の借入であれば無利息での借入もありえますが、短期間での返済目処が立たない場合は疑われる原因になり、返済記録を残さなければ疑惑が深まる可能性も高まります。
贈与税に関する規定に照らし合わせると、第三者である金融機関からの借入ではなく、
両親や知人など親しい続柄の人から借りた資金は、純粋な借入ではなく贈与された資金と見なされる危険性があります。
このような形で税務署から認定されると、ただちにその資金額に応じた税金を贈与税として支払う義務が課せられる可能性があります。
これを回避する方法として、たとえ親族や知人など身近な間柄であったとしても資金の貸し借りを行う際には、
必ず双方の署名捺印が施された金銭消費貸借契約書か借用書を交わし、完済まで保管しておくことが効果的です。
既述の通り贈与税の課税を回避するためにはお金を借りたという証拠と返済を行っているという証拠が必要になります。
確実な方法は借用書を作成し、借入金や返済期間、金利などの情報を明記することです。
貸し手と借り手の署名捺印をセットにし、客観的にお金を借りているという証明にします。
最低限の作成例に沿っていれば借用書の形式や書式に定型用紙はありません。
手書きまたはWordソフトなどで短時間で借用書を作成する事が可能です。
上記の内容を記入すれば借用書に必要な最低限の体裁は整います。
しっかりとした借用書を作成したい場合は、上記に追加して利息や金利など細かい条件を記載します。
作成に自信が無い方はネット上で無料配布されているテンプレートを利用するのも良いでしょう。
ただしテンプレートをそのまま利用せず、必要に応じて作り変えることをおすすめします。
実際に借り手側が貸し手側に対して返済を行っているかどうかの実績も贈与か借入かの判断基準となるため、借用書に記載した返済額以上の額を必ず定期的に返済するようにしましょう。
現金の手渡しは避けるべきです。
相手の食事代や旅費を肩代わりするなど資金の流れが追いづらくなるものも危険です。
事業資金としての借入であれば会社の口座から相手の銀行口座への振り込みを行うなど、目に見える記録を残すことが重要です。
どちらか一方でも抜けてしまえば、借入金であることの証明が難しくなります。
お金をもっていても面倒な書類のやり取り自体が嫌いと言う人は存在し、親族間になると余計にその傾向が顕著になるケースもあります。
ローン商品を取扱う金融機関からの借入と比べ、親族や知人など親しい続柄の人から高額な資金を借入る場合、その扱いには細心の注意が求められます。
既述の通り返済方法や借用書の有無によって借入ではなく贈与と見なされ、贈与税が発生し思わぬ不利益を被る可能性が存在しますが、贈与税の発生を回避する上でポイントとなるのが利息の存在です。
子供世帯がマンションなど住宅を購入する際に親や祖父母として資金を貸したり、
自動車を購入する際の費用として親が代わりにお金を出すなどのケースが少なくありませんが、ただ単にお金を拠出しただけだと、
たとえ貸し手側が借入だと主張したとしてもこれは贈与と見なされ、贈与税の対象となってしまいます。
こうした不測の事態を防ぐ上で有効な手段となるのが、貸し付けた借入に利息を伴わせるという方法です。
高額な費用を借入の名目で借りたとしても、その借入に対して利息が一切発生していないと経済的利益と判断され、贈与税の対象と見なされる可能性が高くなります。
親族間であれば無利息や超低金利での借入も有り得ますが、税務署は市場金利と比較し贈与税の課税対象かどうかを疑います。
市場金利に比べ著しい低金利を設定した場合は「経済的利益を贈った」と捉えられ課税の決め手になる場合があります。
親族間で借入を行う場合、他の借入の手段や借入を行った場合の金利を調べる必要があります。
確実なのは顧問税理士に確認してもらい市場金利と比べて不自然でない範囲に調整することだと言えるでしょう。
借入金は使用目的などで金利が替わるため専門家に頼った方が確実に処理できます。
金融事業者などの利息は「利息制限法」で以下のように金利が定められています。
10万円未満 | 年率20.0% |
10万円~100万円未満 | 年率18.0% |
100万円以上 | 年率15.0% |
利息制限法の上限金利を超える金利で貸し付けが行われていた場合、例え相手が家族や知人の場合でも裁判を行えば貸し付側が不利となります。
また、勤務先の企業が行う社内融資などの制度を活用した場合、借り手側の社員に対して1%以上の金利が課せられていれば、
所得税法上も問題ないと見なされるのでこうした例を参考に借入総額の1%程度の額を基本に、借入に対する利息として支払うことをおすすめします。
借入の元本返済だけでなく利息を併せて返済していることが分かれば、贈与では無く借入と断定される可能性が飛躍的に高まるため、贈与税発生のリスクを大幅に軽減できると言えます。
借用書に「金○○○円也」と書かれているのを目にした事があるかもしれません。
借用書には一般的に使用されるアラビア文字では無く漢字で金額を記入します。これは、数字の書き換えによる不正を防ぐ事が主な目的です。
ただし、漢字で記入するのは金額のみとなっており基本的に日付や住所などには数字を用います。
企業が用いる借用書には基本的に収入印紙が貼ってあります。
収入印紙の金額は1万円未満は非課税・10万円未満で200円という具合に借用書に記載される金額に比例して上がっていきます。
重要に思えますが収入印紙を貼っていなくても借用書としては全く問題がありません。
問題となるのは裁判所など然るべき場所に借用書を提出した場合で、罰則として法定額の3倍を請求されます。
親しい間柄での借用書では問題ありませんが、第3者に提出する予定がある場合は用意しておくべきでしょう。
公正証書は法務大臣に任命された裁判官や検察官などの公証人に作成してもらう書類です。
公正証書は証明力や執行力を有しており、仮に裁判になった際などは法的な力を持ちます。
一般的に公正証書は遺言書や契約書などで作成されますが、借用書でも作成可能で、本来法的な執行力を持たない借用書を公正証書とする事で金銭トラブルを確実に回避する事が出来るようになります。
ただし、公証人に作成してもらう公正証書は借入額によってある程度の費用が必要となります。
将来的に裁判を予想しているなどの事情が無い限り公正証書を作成する事は無いと思われますが、参考までに覚えておくのも良いでしょう。
親族や知人など親しい続柄の間で借入を行うと、事前に取り決めた期日を超える滞納や延納するケースが少なくありません。
法的観点から見るとこの行為は返済を特段の理由無く滞納していると見なされる危険性があります。
親族や知人との間でも借用書を伴う正式な借入を行うと、借用書に記された返済期日を守った返済が借り手側に義務付けられます。
これを守らず返済を意図的に滞納したり延納すると、この行為が貸し手側から借り手側に対する融資や贈与と見なされ課税対象と判断されかねません。
特に親や祖父母などより身近な続柄の方から借入た場合ほど、こうしたなし崩し的な状態が生まれやすいのですが、
借り手側だけでなく貸し手側に対しても大きなリスクを伴う危険性があるので、返済は借用書に従った適切な間隔で実施するように心がけて下さい。
金融機関からの借入は年収額のチェックや残債の確認など様々な部分で厳格な審査が行われ、条件によっては借入ができないケースも少なくありません。
一方、親族や知人など身近な人からの借入は双方の間柄も寄与し多額の借入を得やすいメリットがあるほか、
支払いを猶予して貰える様々な恩恵を受けられることから、この方法を率先して活用し資金調達を行う方も少なくありません。
ただし、親族や知人など第三者とは見なされない身近な存在からの借入は、
贈与税の課税対象と見なされ余計な出費が発生するなどの様々なリスクを伴う危険性があることも同時に理解しておくべきでしょう。
適切な手続きや返済を行い、借り手貸し手双方にとって健全な資金の貸し借りを行うよう心得ておくことが肝要だと言えます。
いかがでしたでしょうか?
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