最終更新日:2018年09月26日
Mentor Capitalです。
今回は、日本政策金融公庫について解説したいと思います。
これから創業したり、初めて銀行からお金を借りるという企業の経営者や経理担当者で日本政策金融公庫からの資金調達を検討している人は多いのではないでしょうか。
日本政策金融公庫は100%政府出資の金融機関なので、他の銀行とは貸付の基準が少し違います。本記事では日本政策金融公庫の貸付の特徴と、融資の種類について説明します。
【日本政策金融公庫なら創業直後、零細企業でも借りられる】
まずは、日本政策金融公庫の貸付の特徴について説明します。
残念ながら2017年現在は銀行から融資を得るのが困難な時代だと言われています。銀行の企業への貸付金利は日銀の政策金利に影響を受けるのですが、
政策金利がマイナスとなっているので企業への貸付金利もとても低く設定されています。つまり銀行側は金利が低いので貸し倒れを極端に嫌っています。
その反面、投資先の無いお金が銀行にあふれているので、借入実績があり信用のある企業には低利子で積極的に融資を行うけれども、
創業間もない企業については貸し倒れが発生するかもしれないので融資を行いません。
この様に借りられる企業と、借りられない企業が二極化しています。
この傾向に一番被害を受けるのが、創業前、創業して間もない企業、借り入れ実績が無い零細企業で、
この様な企業はいくら経営計画が素晴らしくても貸し倒れの発生のリスクが実績、資産などによって担保されていないので融資を受ける事が非常に困難です。
この様に、銀行は基本的に借り入れ実績や信用など過去の実績に基づいて融資の判定を行うのですが、日本政策金融公庫は、経営計画を過去の実績よりも重視して融資を行います。
つまり、創業間もない零細企業であっても貸付を行う可能性があるという事です。
日本政策金融公庫は前述の通り、100%政府出資の金融機関で通常銀行が積極的に貸付しない創業間もない企業に対する融資の種類が充実しています。
ただし、融資の希望があれば誰も融資を受けられたり、希望額の貸付を受ける事が可能なわけではありません。
自己資金、数値シミュレーションの妥当性と必要な運転資金、設備資金の見積もりから、貸し出しできる金額や期間が決定されるので、
これから政策金融公庫の融資の条件や限度額について説明しますが、必ずしも希望すればこの条件で貸付を受けられるわけではない事に注意してください。
(融資制度については2017年7月現在、日本政策金融公庫が発表している情報に基づきます。)
それでは、日本政策金融公庫の貸付の種類について創業融資の制度から説明します。
【新企業育成系の貸付の種類】
まずは日本政策金融公庫の新企業育成に関する融資制度について説明します。
まず、新規創業を行う場合によく利用されるのが「新創業融資制度」です、限度額3000万円(うち運転資金1500万円)、担保・保証人原則不要で貸付を受ける事が可能です。
基準利率は2.36~2.95%と銀行からのプロパー融資よりは高めになりますが、創業間も無い法人や個人事業主であっても、事業計画に基づいて貸付審査を行ってくれるのが魅力の一つです。
ただし、「創業」に対する特別な制度なので税務申告を2期終えていないうちしか利用する事ができませんので注意してください。
創業して税務申告を2期終えてしまった場合でも、まだ利用できる創業融資制度があり、いずれも融資限度額7200万円(うち、運転資金4800万円)、
設備資金20年以内(据置2年以内)、運転資金7年以内(据置2年以内)となっています。
税務申告を2期終えても使える一番オードドックスな融資制度が「新規開業資金」という融資制度で新たに事業を始める会社もしくは事業開始後概ね7年以内の会社を対象とした融資制度です。
基準の利率は1.81%~2.40%と新創業融資制度よりも利率が低いので、こちらの方が良い様に見られますが、実際にはこの制度を利用するという事は、
税務申告を2期終えていると考えられるので、新創業融資制度の様に数値計画だけではなく、
企業としての実績を決算書に基づいて審査されるはずなので、新創業融資制度よりは少し貸付を受けるのが難しいと考えられます。
ちなみに、新規開業資金を利用する経営者の中でも、女性または35歳未満か55歳以上という条件を満たせば、
「女性、若者/シニア起業家支援資金」という制度を利用する事ができ、新規開業資金よりも有利な条件で貸付を受ける事ができます、
なお、この融資制度は災害地に関連する創業についても利用する事ができ、東日本大震災に関連して岩手県、宮城県及び福島県内において創業する場合や、
平成28年熊本地震に関連して熊本県内において創業する場合も利用する事ができます。
他にも新規創業の場合でもやむを得ない事情で廃業し負債の整理がついている人が再び創業する場合は、「再挑戦支援資金」という制度が適用されます。
また、会社自体の創業でなくとも、第二創業を行ったり、新規事業を行う場合には新企業育成系の融資を受ける事ができます。
経営の多角化や事業転換により第二創業を行う場合は、「新事業活動促進資金」という融資制度が利用できます。
ただし、融資を受ける為には「経営革新計画」、「新連携計画」「農商工等連携事業計画」など日本政策金融公庫の指定する機関から経営計画の認定を受ける必要があります。
また、経営革新又は新規事業分野の開拓を行おうとする場合は「中小企業経営力強化資金」という貸付を受ける事ができます。
ただし、中小企業等経営強化法に定める認定経営革新等支援機関による指導及び助言を受けている必要があります。
この様に、日本政策金融公庫の新企業育成系の融資について紹介してきました。
創業者に対して事業計画だけでも、無担保、無保証任でも貸付を行うというのが日本政策金融公庫の融資制度の大きな特徴の一つです。
【セーフティネット貸付の種類】
また、経営環境が悪化しようとしている企業に対しての貸付メニューもあり、この様なセーフティネット貸付については3種類のメニューが用意されています。
なお、3種類いずれも設備資金15年以内(据置3年以内)、運転資金8年以内(据置3年以内)での返済となります。
経営環境変化対応資金
1つ目は、例えば為替の急激の暴落の様な外部環境によって経営が悪化しているけれども、
中長期的には回復する事が見込まれる場合に申し込める貸付で「経営環境変化対応資金」という融資制度があります。
融資限度額は4800万円で利率や雇用の維持や拡大を図る場合や政策金融公庫の指定する機関によって指導を受けて事業計画を作成している場合は利子が0.2%から0.4%低くなります。
金融環境変化対応資金
2つ目は、金融機関との取引状況の変化によって一時的に資金繰りが困難となっているが中長期的には回復が見込める際に申し込める貸付で「金融環境変化対応資金」という融資制度があり、
度額は通常の融資とは別枠で最大4000万円となっています。
この融資の対象となるケースとしては取引金融機関が行政指導によって業務停止命令を受けた場合はもちろんですが、
他にも銀行から約定した返済条件を超える弁済を迫られている場合や、担保・保証人を追加する様に求められている場合、借入金利の引き上げを要求されている場合にもこの制度を利用する事が可能です。
取引企業倒産対応資金
3つ目は、取引先や関連企業の倒産によって経営状況が悪化している企業に対する貸付で「取引企業倒産対応資金」という融資制度があり、融資限度額は別枠で3000万円です。
この融資の対象となる要件はいくつかありますが、倒産した企業に対して売掛債権が50万円以上あった場合は申込対象となるので申し込みを行う為の要件は比較的低いと考えられます。
【企業活力強化貸付の種類】
この他にも、企業の競争力を高める為に投資する資金についても日本政策金融公庫が融資を行っています。
いずれも融資限度額7200万円(うち運転資金4800万円)で設備資金は20年以内(据置2年以内)、運転資金は7年以内(据置2年以内)での返済となります。
まず、これらの貸付で一番オードドックスだと考えられるのが「企業活力強化資金」です。
これは卸売、小売、飲食、サービス、不動産賃貸業を対象に経営を合理化する為の設備の導入、販促、人材確保などの様々な用途に対して貸付可能な融資制度です。
他にも、コンピューターやシステムの導入を行う場合には「IT資金」、海外展開を行う場合は「海外展開・事業再編資金」、
地域の活性化や雇用の促進などにつながると認定された事業や計画に対して融資する「地域活性化・雇用促進資金」、社会的問題を解決する為の事業や、保育、
介護などの事業を行っている企業に対して融資する「ソーシャルビジネス支援資金」、事業承継の為の資金を融資する「事業承継・集約・活性化支援資金」、
訪日観光客の消費需要を取り込もうとする企業に対する「観光産業等生産性向上資金」などがあります。
この様に、地域活性、海外展開、事業承継等、観光需要の取り込みなど政府が注目している課題を解決する企業に対しての融資制度が色々設定されているのが、
企業活力強化貸付に該当する融資制度の特徴です。
【その他の貸付の種類】
その他にも様々な融資制度があります。例えば、環境やエネルギー分野への対策を行う企業に対する「環境・エネルギー対策資金」「社会環境対応施設整備資金」、
食品関係の小売り、製造業に特化した「食品貸付」、「東日本大震災復興特別貸付」「平成28年熊本地震特別貸付」
などの被災地の企業を対象とした貸付などの様々な融資制度が用意されています。
日本政策金融公庫の貸付は、借り入れの目的によって様々な融資制度に細分化されていますが民間の銀行と違って公的な金融機関なので、
零細企業、被災地の企業、取引先の倒産、銀行との取引状況により経営が悪化している企業などの通常銀行が貸付を渋りやすい対象に対しても専用の融資制度を用意していますし、
地域活性、保育、介護など日本の政府が問題としている課題を解決しようとする企業に対して専用の融資制度を設けています。
この様に日本政策金融金庫の貸付の種類は営利以外にもパブリックな観点からも作られています。
【もちろん普通の貸付も可能】
この様に日本政策金融公庫の貸付の種類について説明しましたが日本政策金融公庫では貸付の目的に合わせて様々な貸付の種類があるという事がわかりました。
この様なメニューばかり見ると政策金融公庫の融資目的と合致する目的で無ければ融資が受けられない様に思えてきますが、もちろん普通貸付も行われています。
普通貸付の融資限度額は運転資金・設備資金ともに4800万円で運転資金は原則5年以内、設備資金は原則10年以内での返済が必要となります。
なお、これとは別に取扱商品や業種の変更など目的として普通貸付に申し込む場合は特定設備資金として融資限度額7200万円返済期間20年以内での融資が行われる事もあります。
なお、基本的にすべての業種がこの貸付を利用する事が可能ですが、金融業や投機事業、一部の遊行娯楽業等の業種はこの融資を利用する事ができないので注意してください。
【最期に】
以上の様に、日本政策金融公庫の貸付の種類について説明してきましたが最後に国民生活事業と中小企業事業という日本政策金融公庫の2つの事業について説明します。
日本政策金融公庫は貸付対象によって担当する部署が国民生活事業と中小企業事業という風にわかれています。
どちらも融資のメニューはほとんど一緒なのですが融資限度額が異なり、本記事では国民生活事業を基準として貸付限度額について説明を行いましたが、中小企業事業の限度額は約10倍となります。
2つの事業の違いは貸付対象によるもので、国民生活事業は自営業や従業員がほとんどいない零細企業を対象にしているのに対して、
中小企業事業は製造業を中心に資本規模がやや大きめの中小企業に対して担保や保証人ありで長期的な資金の貸付を行っています。
つまり、国民生活事業は銀行がなかなか相手にしない零細企業への無担保、無保証人の小口融資が主体となっているのに対して、
中小企業事業は担保、保証人有で貸付けるので銀行の融資と大きな違いはありません。
よって、銀行から相手にされにくい創業直後や零細企業が日本政策金融公庫の国民生活事業の融資を利用するメリットがあります。
しかし、ある程度事業規模が大きくなった企業が日本政策金融公庫の中小企業事業の融資を利用するメリットはあまりありません。
なぜなら、通常の銀行の融資の様に担保や保証人を要求されるし、
日本政策金融公庫から融資を受けなくともきちんと経営されている会社であれば日頃から付き合いのある銀行から融資を受けた方が、
現在の政策金利の低さから考えると低い利率で融資される可能性が高いからです。
以上の様に貸付制度は様々ありますが、結局日本政策金融公庫からの融資を検討する場合は、中小企業事業からの融資ではなく、
創業直後や零細企業が国民生活事業から無担保、無保証人で資金調達を受けたい際に検討する方が良いでしょう。
いかがでしたでしょうか?
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