最終更新日:2019年08月29日
Mentor Capitalです。
運営事業の売り上げは決して悪くないはずなのに、手元の運転資金の枯渇に頭を悩ませているという方は少なくないのではないでしょうか?
売り上げ実績が事業運営に反映されにくい状況に「売掛金」や「手形決済」の存在が大きく影響しているケースが多く見られます。
手形で決済された場合であれば、手形が有効となる前に現金化を行う「手形割引」という形で資金化することができます。
しかし「売掛金の場合はそういうわけにもいかない」と考える方が多いようです。
実は売掛金の場合でも早期資金化をすることは可能で、売掛金の早期資金化を行うことは「売掛金のオフバランス化」と呼ばれています。
近年注目されている会計処理である「売掛金のオフバランス化」について考えます。
【売掛金のオフバランス化の仕組みとは?】
製品や商品、サービスなどを既に納入しているにも関わらず、代金が支払われていない一般的に「ツケ」や「掛け売り」と呼ばれる状態で売掛金は発生します。
国内の事業所間で行われる商取引の多くが売掛・買掛で行われているので、ほぼ全ての事業所の帳簿には売掛金が存在していると言えるでしょう。
しかし売り上げとして資産に計上されながらも現金化に至っていない売掛金は、事業を運営していくのにあたり非常に悩ましい存在であることも事実です。
そこで注目を集めているのが売掛金のオフバランス化です。
売掛金のオフバランス化とは?
バランスシートと呼ばれる賃貸対照表の資産の部分から売掛金を除外することで事業運営をスマート化すると共に、
純資産利益率や自己資本比率が向上することで決算報告書が高く評価できる魅力的なものへと生まれ変わります。
事業運営を行うということは仕入れ・生産・販売の流れを途切れることなく循環させる必要があり、運転資金の投下が必要となるケースが発生することは珍しくありません。
決算報告書の評価を上げるということは、事業所が上場していれば株価が上昇し事業所の価値が上がりますし、
上場していない場合でも金融機関からの資金調達のハードルが大きく下がるという意味で非常に意味があると言えます。
売掛金のオフバランス化には3つの方法が存在する!
かつて担保として効果的であった不動産や有価証券などが、リスクとして捉えられるケースも珍しくなくなった現在では売掛金という債権も必ずしも価値ある資産とは言えなくなったと考えられています。
流動性が低い売掛金を支払いサイトを待つことなく資産の流動化が行え資金効率を向上させるオフバランス化には、
売掛債権証券化・売掛債権担保融資・ファクタリングの3つの方法が存在するので次項で具体的に紹介します。
【具体的な売掛金のオフバランス化の方法とは?】
帳簿上では十分な売り上げがあるにも関わらず運転資金の枯渇に頭を悩ませている方にとって、
売掛金のオフバランス化のポイントは流動性の低い債権である売掛金の資金化までのタイムラグをいかにして解決するかではないでしょうか?
売り上げの多くを売掛金が占めている場合、最悪のケースでは黒字倒産や連鎖倒産のリスクを抱えることにもなりますから、
流動性の低い売掛金を流動性の高い資金に転化することは事業所を守る上で重要な問題だとも言えるでしょう。
売掛債権証券化による売掛金のオフバランス化とは?
債権の1つである売掛金は支払いを約束して発生します。売り上げ額と売掛金の額面は同一であるもので、基本的に売掛金は額面相応の資産価値があります。
支払期日に支払われる代金を担保に証券を発行することで売掛金を流動化する方法が、売掛債権証券化です。
売掛債権証券化はSPVと呼ばれる特定目的事業体に売掛金を譲渡することで、SPVが証券を発行し投資家に売却します。
売掛金をSPVに譲渡した時点で対価としての資金を受け取ります。
売掛債権担保融資による売掛金のオフバランス化とは?
名称どおり売掛金を担保に金融機関から融資を受けて、資金調達を行うのが売掛債権担保融資です。
あくまでも融資を受けるだけなので、融資された資金には返済義務が発生しますが流動性の低い売掛金を流動化させることができます。
信用保証協会に保証料を支払い保障を受けることで利用が容易になるうえに、万一融資資金が返済不能となった場合でも、金融機関から受けた融資額の90%までを信用保証協会が支払ってくれます。
ファクタリングによる売掛金のオフバランス化とは?
売掛金を譲渡することで資金調達を行うファクタリングは、売掛債権証券化と同じ資金調達方法です。
売掛金の譲渡先がSPVに限定される売掛債権証券化に対して、ファクタリングは民間のファクタリング企業に売掛金を譲渡することで資金調達できるのが売掛債権証券化との大きな違いです。
また売掛債権証券化に比べると必要な手続きが簡素化され、簡単に売掛金をオフバランス化できるのがファクタリングの特徴です。
【3つのオフバランス化のうち事業運営をスマート化できるものとは?】
売掛債権を譲渡する際、額面満額で譲渡されることはなく手数料を差し引いた金額で譲渡することになります。
仮に額面1,000万円の売掛債権を950万円で譲渡すると50万円の損失が発生しますが、その損失は譲渡損として会計処理することができます。
また手形を割引する際にも割引料が発生することから、売掛債権の譲渡で発生する手数料は割引料として処理することも可能です。
一方売掛債権を担保に融資を受けた場合は、通常の借入れとして処理します。
資本金500万円・売掛金1,000万円・買掛金700万円の事業所で950万円の資金調達を売掛債権の譲渡で行った場合と融資で行った場合を譲渡の掛け目5%とし、
融資の利用金利は除外したケースで簡単に比較してみましょう。
売掛債権の譲渡を行った場合
売掛金の1,000万円を譲渡することで950万円の現金と50万円の譲渡損が発生します。
損益計算書では売上1,000万円から買掛金の支払い700万円と譲渡損失50万円が差し引かれ250万円の純利益となります。
貸借対照表では総資産額として借方科目に現金1,450万円、貸方科目には資本金500万円・買掛金700万円・純利益250万円の合計1,450万円が計上されます。
1,000万円の売掛負債を950万円譲渡すると総資産利益率は純利益250万円を総資産1,450万円で割った約17.2%となります。
売掛債権を担保に融資を受けた場合
売掛債権を担保にし950万円の融資を受けた場合、債権の所有権が残されるため損失が発生しません。
損益計算書では売上から買掛金の支払い700万円が差し引かれ純利益は300万円となります。
貸借対照表では総資産額として借方科目には現金1,450万円と売掛金の1,000万円の合計2,450万円が、
貸方科目には資本金500万円・買掛金700万円・純利益300万円に借入金950万円の合計2,450万円が計上されます。
1,000万円の売掛負債で950万円融資を受けると総資産利益率は純利益300万円を総資産2,450万円で割った約12.2%となります。
どちらのケースでも1,000万円の売掛債権をもとに950万円の資金調達を行ったケースですが売掛債権を譲渡して資金調達を行うことで、総資産利益率が向上しています。
【最後に】
かつて多くの企業はオフィス用品や社用車などをはじめとする様々な資産を所有する形で運営されていました。
しかし事業運営の効率化が叫ばれる現在では、その多くが管理コストの発生しないリースという形で導入され事業運営のスマート化を図ることがトレンドとなっています。
資産であり同時に債権でもある売掛金を流動性の高い資本へと転化を行う売掛金のオフバランス化は、
ますます厳しさを増す事業所間の競争に勝ち残るための「生き残りのカギ」とも言える会計処理だと言えるでしょう。
リスク回避と運転資金の調達が同時に行える、売掛金のオフバランス化の導入を検討してみてはいかがでしょうか。
いかがでしたでしょうか?
何か不明な点等が有れば、お気軽にメンターキャピタルまでお問合せ下さい!!