最終更新日:2024年03月21日
Mentor Capitalです。
今回はファクタリングによる資金サイトの調整方法について解説したいと思います。
企業は理論上、どれだけ赤字を出していたとしても、資本金が無くなって債務超過に陥っていたとしても倒産する事はありません。
企業が倒産するのはただ一つ手元に現金がなくなって支払いが行えなくなった時だけなのです。
このような理由から経営者や経理担当者は常にキャッシュフローに気を配らなければならず、キャッシュフローが悪化しそうなら早めに対策を打たなければなりません。
黒字企業もキャッシュフローが悪ければ倒産する
貸借対照表や損益計算書の成績がどれだけ悪かったとしても会社は倒産することはありません。
会社が成立するルールとして資本金がいくら以下になったら、累積赤字がどの位になったら倒産するというルールはないからです。
会社が倒産する理由はただ一つで手元に現金が無くなって支払いができなくなった時だけです。
逆に言えば、いくら会社の業績がよかったとしても倒産するケースはあります。
このようなケースを黒字倒産と呼びますが、黒字倒産は会社のキャッシュフロー管理がきちんと行われていない会社に発生します。
どのように黒字倒産は発生するのでしょうか。
例えば手元の現金150万円、販管費が月に50万円の企業を例としてあげます
この企業は毎月100万円の売上があり、原価もかからないとするならば、この企業の毎月の損益は
売上: 100万円 | 販管費: 50万円 | 利益: 50万円 |
という風に毎月順調に増加していきます。(販管費の中身は従業員の給料や家賃などで当月払いとして減価償却費などはないという風に仮定します。)
この情報だけでみれば経営が順調な企業のように思えますが、ここに1つ条件を加えて、売掛金の回収サイトが4か月であるとします。
このときに手元の現金と売掛金の推移を見ると以下のようになります。
0か月目: | 現金 150万円 | 売掛金 0万円 |
1か月目: | 現金 100万円 | 売掛金 100万円 |
2か月目: | 現金 50万円 | 売掛金 200万円 |
3か月目: | 現金 0万円 | 売掛金 300万円 |
4か月目: | 現金 -50万円 | 売掛金 400万円 |
5か月目: | 現金 0万円 | 売掛金 400万円 |
6か月目: | 現金 50万円 | 売掛金 400万円 |
注目するべきは現金と売掛金の合計は常に増加しているのに対して、現金は初めに減ってあとから上がっていっているという事です。
例えば3か月目、5か月目には手元現金がゼロになり、4か月目に至っては-50万円と手元の現金が不足しています。
この4か月目に資金を調達できればければ、会社は利益をあげているけれども手元の現金がなくなったという事で黒字倒産という事になります。
4か月目に手元現金がなくなった理由は明白で、売掛金が入金されるまでに4か月も掛かっているのに、その間も販促費は支払い続けなければならないからです、
このように黒字が出ていたとしてもキャッシュフローの循環が悪ければ倒産する可能性があるのです。
なお、これに対する対応策は2つの方法が考えられます。
手元の現金を多く保有する
1つ目の手元の現金を多く保有するということについて例えば今回の例で手元現金が300万円あった場合
0か月目: | 現金 300万円 | 売掛金 0万円 |
1か月目: | 現金 250万円 | 売掛金 100万円 |
2か月目: | 現金 200万円 | 売掛金 200万円 |
3か月目: | 現金 150万円 | 売掛金 300万円 |
4か月目: | 現金 100万円 | 売掛金 400万円 |
5か月目: | 現金 150万円 | 売掛金 400万円 |
6か月目: | 現金 200万円 | 売掛金 400万円 |
という風に一度も赤字を発生させる事はありません。
ただし、現実的には手元の多く保有するということは少ない資金で事業を行う経営者にとっては非常に困難な事です。
売掛金の回収を素早くする
もう一つの対策、売掛金の回収を素早くするという事について、例えば回収サイトが2か月になったとすると以下のようになります。
0か月目: | 現金 150万円 | 売掛金 0万円 |
1か月目: | 現金 100万円 | 売掛金 100万円 |
2か月目: | 現金 50万円 | 売掛金 200万円 |
3か月目: | 現金 100万円 | 売掛金 200万円 |
4か月目: | 現金 150万円 | 売掛金 200万円 |
5か月目: | 現金 200万円 | 売掛金 200万円 |
6か月目: | 現金 250万円 | 売掛金 200万円 |
このように回収サイトが2か月であれば手元の現金が150万円であっても赤字になる事はありません。
この時に重要な事は販売サイトが早ければ売上が少なくなっても販管費より売上の方が多ければ倒産しないということです。
例えば回収サイト2か月、売上を毎月80万円に修正すると以下のようになります。
0か月目: | 現金 150万円 | 売掛金 0万円 |
1か月目: | 現金 100万円 | 売掛金 80万円 |
2か月目: | 現金 50万円 | 売掛金 160万円 |
3か月目: | 現金 80万円 | 売掛金 160万円 |
4か月目: | 現金 110万円 | 売掛金 160万円 |
5か月目: | 現金 140万円 | 売掛金 160万円 |
6か月目: | 現金 170万円 | 売掛金 160万円 |
確かに、売上は下がった分、トータルの利益額は少なくなっていますが手元現金は一番少ない月でも50万円あるので倒産する事はありません。
このように資金サイトを短くすることによってキャッシュフローを改善する事が倒産を防ぐためには非常に重要なのです。
資金サイトを短くするためには
では、資金サイトを短くするためにはどのような手段が考えられるのでしょうか。
まず一番はじめに思いつく事が取引先に交渉して入金は早く行われるように、支払いは遅くまでまって貰えるように契約条件の見直しを行う事です。
ただし、相手方がある事ですし、自分のキャッシュフローを良くするという事は相手側から見ればキャッシュフローを悪くするという事なので簡単な交渉ではありません。
他の方法として考えられるのは手形割引やファクタリングを利用した資金サイトの調整方法です。
ただし、手形割引の場合は手数料を少なくて済みますが、相手から売掛金を手形で受け取っている必要があります。
相手先に手形を振り出して貰うためには、相手先が銀行の与信を突破して当座預金口座を保有している必要がありますし、
仮に手形を振り出す事ができても、手形は支払いの強制力が非常に強いのでなにかあったときの為に手形の発行を拒まれるかもしれません。
このような理由から手形割引によって資金サイトを早める事は非常に難しいと考える事ができます。
どこの企業でも資金サイトを早められるような手段としてはファクタリングによる債権の売却が考えられます。
ファクタリングによる資金サイト調整方法について
では、どのようにファクタリングを利用すれば資金サイトを早める事ができるのでしょうか。
ファクタリングとは自社の保有している債権をファクタリング会社に売却する事によって売却代金を得る手法の事です。
ファクタリングについては大きくわけて2つの方法が存在し、
3社間ファクタリング:債務先の企業に対して通知を出して、債権の支払い先を債権を保有している企業からファクタリング会社に移動する事によって、債務先から直接ファクタリング会社が債権を回収する
2社間ファクタリング:債務先には通知せずに債権譲渡登記を行って、債権を債権会社からファクタリング会社にうつして、債権の回収は債権会社が行って、
債権会社からファクタリング会社に回収した債権を受け渡す
があります。
ただし、ファクタリングには手数料が必要です。
特に2社間ファクタリングの場合は債務先に通知をすることなく債権を現金化できるので使い勝手が良いわけですが、
債権譲渡登記の分ファクタリングの原価が増える事と、債権企業が債務企業から債権を回収したけれども、
債権企業が手元の現金に困っていて勝手にファクタリング会社に支払うべきであった債権回収額の一部を運転資金に使ってしまうというリスクも考えられるので手数料が高めに設定されています。
このように手数料が高い事を除けば、ファクタリングによる資金サイトの調整はどのような企業でも行う事ができ、すぐに現金が手に入るので便利だという事が分かります。
ファクタリングによる資金サイト調整が有効なパターン
このように資金サイトの調整のためにはファクタリングは非常に有効な手段なのですが、一方で手数料が高くなりがちであるというデメリットも存在します。
では、いったいどのような企業の場合、ファクタリングによる資金サイトの調整が有効なのでしょうか。
これには2つの条件があり、
1.ファクタリングを利用する企業が粗利率の高い事業を行っている事
2.利用手数料の安いファクタリング商品があるという事
この2つが挙げられます。
「粗利率の高い事業」を行っている事
まず、前者の「粗利率の高い事業」を行っている事という事ですが、粗利率の低い企業がファクタリングを行うと、
赤字を発生させてしまいますので粗利率の低い事業を行っている会社はファクタリングをしてはいけません。
例えば、売上100万円、原価率20%、販管費50万円のA社があって、この企業の場合営業利益はそのままだと30万円となります。
この企業が手数料20%のファクタリングを利用すると営業利益は10万円となります。
ここで別のBという会社があって、売上200万円、原価率60%、販管費50万円だったとします。
この企業の営業利益はA社と同じく30万円ですが、A社と同じ手数料20%のファクタリングを利用するとファクタリングの手数料が40万円かかりB社は10万円の赤字になってしまいます。
A社 | B社 | |
売上 | 100万円 | 200万円 |
販管費 | 50万円 | 50万円 |
原価率 | 20% | 60% |
営業利益 | 30万円 | 30万円 |
このように見ると同じ営業利益額の会社であってもB社の方がファクタリングによる利益減の影響が大きい事がわかります。
なぜなのでしょうか。
理由は、粗利率が低い企業は売上に対する利益分が少ないので、少しの手数料であっても営業利益に大きな影響を与えるのです。
このような理由から粗利率の低い業種ではファクタリングを行うと予期せぬ赤字を発生させてしまう事があるので、
卸売業のように粗利率の低い業界ではファクタリングを行わない方が良いでしょう。
手数料が低いファクタリング商品がある
2つ目の手数料が低いファクタリング商品があるという条件ですが、ファクタリング会社もリスクの低い債権は低い手数料率で取り扱っています。
典型的な例として挙げられるのが病院の持つ診療報酬債権に対するファクタリングです。
診療報酬債権とは病院が保険診療を行った場合に健保や国保などに対して発生する債権で、相手は健保や国保なので回収できない可能性はほぼ存在しないので手数料を低く抑える事ができます。
また、先ほど述べた通り、2社間ファクタリングは債権譲渡登記を行う為に原価が余計に必要となり、
債権企業が回収した金銭を使い込む可能性があるので2社間ファクタリングは手数料が高くなっています。
ファクタリングを行う際には3社間ファクタリングの方が良いでしょう。
このように、ファクタリングは時として有効な場合がありますが、基本的には諸刃の剣なので控えた方が良いでしょう。
ファクタリング手数料の分だけ企業の利益は確実に減少しますし、ファクタリングを使う事によって、ファクタリング手数料の分だけ倒産した時の傷口を広げる事になるからです。
最期に
以上のようにファクタリングによる資金サイト調整方法について説明してきました。
企業が倒産するのは手元の現金が尽きて支払いができなくなった時だけなので、経営者や経理担当者は手元の現金が尽きないように常にチェックしておく必要があります。
ちなみに手元現金を切らさないためには、
という手段が考えられます。
後者の方法としては手形割引やファクタリングが考えられますが、手形割引は債権を相手先企業に手形化して貰わなければならない為ハードルが少し高いと言えます。
どのような企業でも債権の回収サイトを早めるために有効なのがファクタリングで、ファクタリングとは保有している債権をファクタリング会社に売却する事によって利益を得る方法です。
ファクタリングを使えばすぐに現金を獲得できますが手数料が割高な事には注意が必要です。
ファクタリングを行う事によってファクタリング手数料によって利益は確実に減少しますし、
ファクタリング手数料のために黒字だった事業が赤字になってしまうという事も考えられるからです。
それならば銀行融資による資金繰りの改善を図るべきです。
よって、ファクタリングを行い資金サイトを調整するのならば粗利率の高い事業をやっている企業か手数料の低いファクタリング商品を利用できる企業に限定した方が良いでしょう。
なお、このような条件を満たさない企業がその場しのぎの資金調達の為にファクタリングを行ってしまうと倒産したときの傷口をいたずらに広げかねないという事は注意してください。
いかがでしたでしょうか?
何か不明な点等が有れば、お気軽にメンターキャピタルまでお問合せ下さい!!