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手形借入金とは? メリット・デメリットや仕訳例、利用の流れを解説

最終更新日:2025年11月28日

手形貸付は約束手形を用いた融資によってお金を借りる資金調達方法で、勘定項目として手形借入金が発生します。手形貸付では、約束手形を貸主(通常は金融機関)に渡してお金を借り、支払期日に一括で弁済します。通常の融資と比べると審査スピードが速く、利息負担も抑えやすいですが、一方で弁済できなかったときに不渡りとなるのが大きなデメリットです。

本記事では、手形借入金の概要や利用シーン、メリット・デメリット、仕訳例などについて解説します。

<この記事で分かること>
・手形貸付の仕組み
・手形借入金の利用シーン
・手形借入金のメリットとデメリット
・手形借入金を利用する際の流れ

手形借入金とは?

手形借入金とは、手形貸付によってお金を借りた場合に発生する勘定項目です。手形貸付とは、借主が貸主に対して約束手形を発行し、その約束手形を担保にお金を借りる仕組みです。融資期間は短く、弁済は原則一括で行います。通常は企業のつなぎ資金や短期運転資金の獲得に使われます。

なお、約束手形とは、期日までに決められた金額の支払いをするという約束の元に発行される有価証券の一種です。手形を振り出して(発行して)代金を支払う側を振出人、手形を受け取って代金をもらう側を受取人といいます。受取人が支払期日に金融機関に手形を持ち込むと、振出人の当座預金口座から代金が引き落とされ、それを受取人が受け取ります。

手形貸付金との関係性

手形貸付金は、手形貸付によって貸し付けたお金のことです。手形貸付を行うと借主は手形借入金という債務を負います。一方、貸主は手形貸付金という債権を得ます。両者は対の関係にあるのです。

手形借入金の利用シーン

手形借入金は、主に以下のようなシーンで利用されます。

つなぎ融資

つなぎ融資とは、突発的な売掛金の入金遅延や災害などで一時的に資金が必要になったときのための融資です。主な借入先は銀行や日本政策金融公庫です。個人が住宅ローンを利用する際に使うこともあります。

つなぎ融資のメリットは、一時的な経営悪化を乗り切れることです。資金不足を放置すると事業の縮小や収益性の低下につながり、さらなる資金不足の原因になります。つなぎ融資を利用すれば、悪循環から抜け出せます。

ただしつなぎ融資はあくまでも一時的な資金不足を乗り切るためのものであり、継続的に利用するものではありません。つなぎ融資は一般的な融資と比べて融資期間が短く、一括での弁済が求められるため、無計画な利用は経営悪化につながります。

短期運転資金

短期運転資金とは、特定の業務の支出をまかなう目的があり、なおかつ代金が短期間で回収できるときのための資金です。例えば建設業者が5,000万円の工事を受注してその経費が4,000万円の場合、建設業者は4,000万円を短期運転資金として借り入れます。そして、工事完了後に得た代金5,000万円の中から弁済を行います。

借入期間は通常1年未満で、一括弁済が原則です。売掛先の倒産などのトラブルがない限りは後日代金が入金されるため貸し手の未回収リスクが低く、それゆえに赤字がある場合などでも使えます。

疑似資本

疑似資本とは、借入金(負債)でありながら自己資本のような役割を果たす資金です。金融機関から借り入れを行い、借入期日が来たら一括弁済します。そして同時に同額を借り入れることによって、事実上元本を返さずに実質的な自己資本額を増やせます。短期で借入金を何度も転がす仕組みから「短コロ」とも呼ばれる仕組みです。

もちろん利息を支払う必要はありますが、逆にいえば利息だけで資本を増やせるのです。金融機関側も複数回利用してもらうことによって、定期的な利息収入が得られるというメリットがあります。ただし、経営が悪化した場合は一括での弁済を求められることもあるため注意しましょう。

手形借入金(手形貸付)のメリット

手形借入金(手形貸付)にはさまざまなメリットがあります。主なメリットは以下の3点です。

利息負担を抑えられる

手形借入金が発生する手形貸付は、通常の融資と比べて金融機関が背負うリスクが小さいため、低金利で利用しやすいです。

先述の通り手形貸付では手形を振り出します。手形代金は振出人にとって優先的に支払うべき(支払わなかったときの不利益が大きい)ものなので、金融機関の未回収リスクが低めです。短期の融資であるゆえに、長期的な経営悪化による貸し倒れのリスクもありません。そのため、金利が低くなりやすいのです。

収入印紙代が安くなる

収入印紙とは、租税や手数料などの支払いに使われる証明書です。約束手形の振出人は、手形に金額に応じた収入印紙を貼付しなければなりません。例えば手形金額が500万円を超え1,000万円以下の場合、収入印紙代は2,000円です(※1)。手形金額が高くなるほど、収入印紙代も高くなります。

一方、通常の融資では借用書(金銭消費貸借契約書)に収入印紙を貼りますが、こちらは契約金額が500万円を超え1,000万円以下の場合収入印紙代は1通1万円です(※2)。両者が契約書を持つため、実質負担額は2万円です。約束手形を使うことによって、収入印紙代が抑えられます。

※1参考:国税庁.「No.7103 約束手形又は為替手形」.https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7103.htm ,(参照2025-11-18).
※2参考:国税庁.「No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで」.https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7140.htm ,(参照2025-11-18).

必要な資金だけを必要なタイミングで借りられる

手形貸付は、一時的に必要になった金額だけを短期で借りる仕組みです。長期借入金を使うと無駄に使ってしまうことも珍しくありませんが、用途が明確で短期で返す手形借入金ならばその心配は少ないでしょう。必要な資金だけを必要なタイミングで借りられるのは、手形借入金のメリットといえます。

手形借入金(手形貸付)のデメリット

手形借入金(手形貸付)にはさまざまなメリットがある一方で、注意すべきデメリットもあります。ここからは、主なデメリットをご紹介します。

一括での支払いが必要

手形借入金は通常、支払期日に一括弁済します。毎月少しずつ返していく通常の融資と比べると、弁済時の負担が大きな仕組みといえます。当てにしていた売掛金が突然入金されなかった場合などは、経営は厳しくなるでしょう。手形貸付は支払期日までに確実に弁済のための資金が回収できる場合に限り、利用しましょう。

なお、金融機関の了承がある場合は、手形借入金の一部を繰り上げで返せます。これを手形貸付の内入といいます。手形貸付の内入をすると支払期日の弁済額を減らせる上に、総支払利息を削減可能です。ただし、再び借り入れをする場合は新規融資扱いとなるため、以前と同じ額の融資が受けられなくなる可能性がある点に注意しましょう。

一定以上の信用力が必要

手形貸付は融資であるため、ある程度の信用力がなければ利用できません。先述した通り手形借入金は原則一括で支払う必要があるため「支払期日までにまとまった資金を用意する能力がない」と見なされれば、審査に落ちてしまいます。

何らかの要因で一時的に財務状況が悪化しているときに申し込むと審査に通りづらくなるため、申し込みの時期には気を付けましょう。

不渡りを起こしてしまうリスクがある

手形を振り出す際に特に注意しなければならないのが、不渡りのリスクです。不渡りとは、受取人が手形や小切手などを金融機関に持ち込んでも代金が受け取れない現象のことです。不渡りには、以下の3種類があります。

不渡りの種類 概要
0号不渡り 手形の必要事項の記入ミスや支払期日の未到来など、振出人の信用力に起因しない不渡り不渡届は作成されない
1号不渡り 振出人の当座預金残高不足など、振出人の信用力に起因する不渡り不渡届が作成される
2号不渡り 0号不渡り、1号不渡りどちらにも該当しない不渡り不渡届が作成されるが、異議申し立てができる

支払期日までに代金が用意できなかった場合は1号不渡りとなり、銀行は不渡届を作成して電子交換所に提供します。金融機関はその情報を参照できるため、不渡りを起こしてしまうことが分かってしまうわけです。1回の不渡りでも信用力は低下し、融資が受けにくくなります。6カ月以内に再度1号不渡りを起こした場合は銀行取引停止処分となり、当座預金残高を用いた取引が2年間できなくなります。

こうなると事業を続けるのは大変難しく、2回目の1号不渡りは「実質的な倒産」とされることも珍しくありません。手形貸付はこのようなリスクを理解した上で利用しましょう。

手形借入金の仕訳例

手形貸付を用いて借り入れを行った場合、適切な仕訳が必要です。基本的には通常の借り入れと変わりありませんが、詳細を解説します。

借り入れ時

手形貸付を用いて金融機関から10万円を借り入れた場合の仕訳は、以下の通りです。

借方 貸方
現金 100,000 手形借入金 100,000

手形貸付によって現金が増加したため、借方は現金10万円となります。一方、手形借入金も増加したため、貸方は手形借入金10万円となります。基本的には手形借入金勘定を使いますが、単に「借入金」としても特段問題はありません。

なお、簿記では金融取引と商取引を区別します。手形貸付は金融取引に該当するため、商取引の勘定科目に該当する支払手形勘定は使いません。

支払い時

上記の手形借入金10万円に利息1万円を加えて返した場合の仕訳は、以下の通りです。

借方 貸方
手形借入金 100,000 現金 110,000
支払利息 10,000

弁済によって手形借入金が減少し、また利息の支払いが発生したため、借方には手形借入金10万円と支払利息1万円が入ります。一方、弁済によって現金が減少したため、貸方は現金11万円となります。左右の金額が一致していることを確認しましょう。

手形借入金(手形貸付)を利用する際の流れ

手形借入金(手形貸付)を利用する際の主な流れを解説します。

金融機関へ相談

まずは金融機関に相談しましょう。今まで全く取引したことのない金融機関では断られる可能性が高いため、できれば長年取引している金融機関を選びましょう。融資を受けて滞りなく返した実績が豊富にあれば、審査に通る可能性が高まります。そうした金融機関がない場合は、売上金が入金される金融機関に相談しましょう。

申し込み

金融機関を決めたら申し込みを行います。金融機関の担当者に、何のために、いくら資金が必要かを説明し、手形貸付の利用が妥当だと判断されれば申し込みができます。申し込みの際に必要な書類は金融機関ごとに異なりますが、以下の書類が求められることが多いです。

・約束手形
・事業主の本人確認資料
・履歴事項全部証明書(法務局で取得可能、オンライン申請あり)
・決算資料
・当座照合表
・事業計画書、月別収支計画書

融資の申し込みは通常窓口で行いますが、一部の金融機関はオンラインに対応しています。詳細は金融機関の担当者に確認してください。

審査

提出した書類を元に、審査が行われます。手形貸付は一般的な金融機関からの融資などと比べると審査期間が短めです。特にノンバンクは審査が早く審査基準も易しめで、場合によっては即日融資が受けられます。ただし、ノンバンクはその分金利も高くなりやすいです。少し時間がかかったとしても低金利で借りたい場合は、銀行や信用金庫の利用を検討しましょう。審査では主に弁済能力の有無が判断基準となります。

契約

審査に通過し、融資条件を確認したら契約を結びましょう。契約の手続きは通常、金融機関窓口で行います。必要書類は金融機関によって異なりますが、一般的には以下の書類が求められます。

・申し込みの際に提出した書類
・印鑑登録証明書
・実印
・商業登記事項証明書
・収入印紙

契約成立後、当該金融機関の口座に融資金が振り込まれるため、確認してください。

まとめ

手形借入金とは、手形貸付によって借りられるお金です。手形貸付は約束手形を振り出し、それを担保にお金を借りる仕組みです。主に企業のつなぎ資金や短期運転資金の獲得、あるいは疑似資本に利用されます。

手形借入金は通常の融資と比べて短期かつ低金利での借り入れがしやすく、収入印紙代も安いという特長があります。一方で原則一括で返さなければならず、支払期日の金銭負担が大きくなりがちです。また万が一弁済できなくなった場合は不渡りとなり、企業経営に悪影響を及ぼす可能性があります。

また負債を増やしたくない場合や、手形貸付の審査に通過できない場合はファクタリングを利用するのも選択肢の一つです。ファクタリングとは。保有している売掛債権を売却して支払期日よりも前に現金を得る資金調達方法です。ファクタリング会社に手数料を支払う必要がありますが、負債を増やさず資金を獲得できるというメリットがあります。

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