手形を現金化する方法を解説! 基本の流れや注意点もご紹介
最終更新日:2025年02月27日
取引先から受け取った手形は、銀行に持ち込めば現金化できます。通常は支払期日まで待つ必要がありますが、手形割引を利用すればそれよりも前に現金化できます。ただし、手形割引には相応のリスクもあるため、安易な利用は避けましょう。
また手形割引と似た仕組みに、ファクタリングがあります。ファクタリングは売掛金を買い取ってもらう仕組みです。今回の記事では手形を現金化する方法や手形割引の仕組み、さらには手形割引とファクタリングの違いを解説します。
Table of Contents
手形(約束手形)とは
手形はあらかじめ指定された支払期日以降に現金化できる証書で、現金に代わる決済手段として広く使われています。手形を発行(振り出し)して代金を支払う側が「振出人」、代金を受け取る側が「受取人」です。手形は金額、日付、支払期日などが記載された紙です。受取人は手形を支払期日以降に銀行に持っていくと現金を受け取れます。
手形には約束手形と為替手形があります。約束手形は振出人と受取人の二者間取引、為替手形はそこに第三者の支払人が加わった三者間取引が基本です。ビジネスの場では、約束手形が主流です。
振出人から見た手形のメリットとして、手元に現金や預金がなくても振り出せることが挙げられます。現時点ではお金がない場合でも、決済手段として使えます。ただし、支払期日までに現金が用意できないと手形が不渡り(受取人が現金を受け取れない状態)になり、信用低下や取引停止に至るかもしれません。
一方、受取人から見た場合はメリットに乏しく、あまり歓迎できない支払手段といえます。
手形を現金化する流れ
受取人として手形を受け取った場合は、以下の流れで現金化が可能です。
指定された銀行で現金化する場合
手形には銀行を指定する欄があり、通常は指定された銀行で現金化します。支払期日が来たら、銀行に行き手形を呈示しましょう。振出人が問題なく現金の振込を行っていれば、代金を受け取れます。
万が一不渡りが起きた場合、銀行からの支払いは受けられなくなりますが、振出人からの取り立ては可能です。ただ、不渡りを起こしている以上、簡単に回収はできないでしょう。場合によっては、訴訟が必要になるかもしれません。
なお、呈示は支払期日を含めて銀行営業日で3日以内に行わなければなりません。指定された銀行が遠方にある、人手がないなどの理由で指定された銀行に行くのが難しい場合は、次の方法を使いましょう。
違う銀行で現金化する場合
指定された銀行に行くのが難しい場合は、別の銀行(普段取引している銀行がおすすめ)でも手続きができます。この手続きを「手形の取立の依頼」といいます。手形の取立の依頼とは、手形を別の銀行に持ち込み、代わりに呈示を行ってほしいと頼むことです。
依頼を受けた銀行は行内、もしくは電子交換所で決済し、受取人の口座に振込を行います。手形の取立の依頼には、手数料がかかります。また指定された銀行を利用した場合と比べて、入金までに時間がかかる点にも注意が必要です。
手形割引を利用する場合
手形を現金化したい場合、基本的には支払期日まで待つ必要がありますが、手形割引というサービスを利用すれば、支払期日前に現金が入手できます。手形割引は銀行や専門の業者が行っている手形を用いた融資サービスです。
手形割引を利用したい場合は、銀行や業者に申し込みを行います。銀行や業者は利用者の提示した書類などを基に不渡りのリスクなどを判断し、利用者は審査に合格すれば手形の額面金額に応じた現金が受け取れます。
支払期日よりも前に手形を現金化できるのは手形割引の大きなメリットです。ただし、不渡りが出てしまった場合は当初の手形の保有者である利用者が支払いを行わなければなりません。また、手形割引の利用の際には手数料が発生します。
手形を現金化する際の注意点
振出人から手形を受け取った場合は、上記の手続きを行えば現金化できます。ただし、以下の点には注意しなければなりません。
手形の支払期日から3営業日以内に呈示する必要がある
手形に記載されている銀行で手形を現金化する場合、手形の支払期日から銀行の3営業日以内(支払期日当日を含む)に呈示しなければなりません。指定の銀行以外で手形の取立の依頼をする場合は、2営業日以内とさらに期間が短くなります。期間を過ぎた場合、銀行での受け取りができなくなってしまいます。債権が消失するわけではありませんが、回収には手間がかかるでしょう。
なお、銀行によっては、支払期日が来たら自動的に取り立てを行ってくれるサービスを行っています。万が一の可能性がなくなるため、ある場合は積極的に利用しましょう。
手形割引は融資扱いとなる
手形割引は融資と見なされます。取引先からの取り立ては銀行や業者側が行ってくれるため負担は少ないですが、融資ゆえに審査が厳しくなるというデメリットは見逃せません。
手形割引の審査対象はいくつかあります。1つ目は利用者の支払い能力です。万が一取引先が不渡りを起こした場合、銀行や業者は手形割引を利用した企業に対して手形の買い戻しを求めます。買い戻しの能力があるか否かが、審査の合否の分かれ目です。
また、手形の振出人である取引先の支払い能力も審査対象となります。利用者自体に問題がなくても、取引先が不渡りを出す可能性が高い、支払い能力の低い企業と見なされた場合、審査に落ちてしまいます。手形割引で資金調達を行いたい場合は、なるべく信用力が高い、不渡りを起こしにくい取引先のものを持ち込みましょう。
手形割引は買い戻しのリスクがある
手形割引は支払期日よりも前に現金を入手できる便利な仕組みですが、利用しても貸し倒れリスクは移転されません。前述の通り、万が一不渡りが起こった場合、手形額面と利子を合わせて銀行や業者に対して返す必要があります。手形割引を利用した企業が未回収リスクを負うわけです。
なお、売掛債権を買い取ってもらうファクタリングの場合、未回収リスクは利用者ではなくファクタリング会社が負います。
ファクタリングも売掛債権の現金化の手段
ファクタリングは、手形以外の売掛債権を現金化する手段です。手形割引とは異なるメリットやデメリットがあります。
ファクタリングとは?
ファクタリングは、自社の保有する売掛債権をファクタリング会社に売却することによって、支払期日よりも前に現金化する仕組みです。
ファクタリングには「2社間ファクタリング」と「3社間ファクタリング」があります。2社間ファクタリングは利用者とファクタリング会社の2社の合意があれば利用できます。売掛先への通知や許可取りが不要なため、早期に現金を得られるのがメリットです。最近は、最短即日入金が可能なファクタリング会社も増えてきています。
一方、3社間ファクタリングは、利用者と売掛先とファクタリング会社の3社の合意が必要です。2社間ファクタリングと異なり、売掛先の承諾を得る必要があります。そのため審査に時間はかかりますが、ファクタリング会社の負うリスクが小さくなる分、手数料が低くなりやすいというメリットがあります。
手形の現金化とファクタリングの違い
手形割引とファクタリングはどちらも売掛債権を早期に現金化する仕組みですが、いくつか違いもあります。主な違いは以下の4点です。
現金化の対象
手形割引とファクタリングでは、現金化の対象が異なります。手形割引の現金化の対象は、ここまで紹介してきた通り手形です。手形を使うことにより、融資の形で現金を受け取れます。一方、ファクタリングの現金化の対象は主に売掛金です。売掛金は、商品やサービスを先に納入しあとで支払いを行う「掛取引」の際に発生する、将来受け取れる代金です。手形も売掛金も売掛債権の一種ですが、同じものではありません。
なお、手形の発行には審査が必要で、支払いが一定期間に2回滞れば銀行取引が停止されるリスクがあるのに対して、売掛金にはそのような縛りはありません。取引先にとっては手形への支払いの方が優先順位が高くなりがちであり、利用者から見た未回収リスクは低いといえます。
審査の基準
手形割引もファクタリングも一般的な銀行融資と比べると審査基準は易しめですが、審査で重視されるポイントが異なります。
手形割引は前述の通り融資に該当するため、ファクタリングと比べると相対的に審査難易度は高めです。また取引先の信用力だけでなく、利用者側の信用力、財務状況、取引情報なども詳しく調査されます。ただし、銀行ではなく業者の場合、利用者側の情報はあまり重視されません。
一方、ファクタリングは売掛債権の買い取りであり、融資ではありません。売掛先の信用力があれば、利用者側が債務超過に陥っていたり、赤字が続いていたりしても問題なしと見なされる場合が多いです。
現金化までのスピード
ファクタリングのうち、2社間ファクタリングは現金化までのスピードが早く、即日入金に対応しているファクタリング会社も複数存在しています。3社間ファクタリングは売掛先の承諾が必要になるため、現金化まで数日かかることがあります。
一方、手形割引のうち銀行の場合は審査が厳しめで、早くても1週間程度はかかると考えた方がいいでしょう。業者の場合は、最短即日に対応しているところもあります。
償還請求権の有無
償還請求権とは、取引先が代金を支払わなかった場合に、債権を購入したものが、元の債権者に対して支出した費用の返還を求める権利です。遡って求める権利であるため「遡求権」と呼ばれることもあります。
手形割引の場合、償還請求権は原則ありに設定されます。そのため、手形割引を利用したあとで取引先が代金を支払わなかった場合、利用者は手形を購入した銀行や業者から費用の返還を求められるかもしれません。
一方、ファクタリングの場合は償還請求権なしに設定されることが多いです。この場合、ファクタリングを利用したあとで売掛先が代金を払わなくても、ファクタリング会社から費用の返還を求められません。
未払いリスクをなくしたい場合は、ファクタリングの方がおすすめです。
まとめ
手形は、ビジネスの場で広く使われている決済手段の一つです。代金を支払う側が手形を振り出し、代金を受け取る側は支払期日が来たら手形を銀行に持ち込みます。手形は支払期日よりも前に現金化することもでき、これを手形割引といいます。手形割引を利用する場合は、銀行や専門の業者で手続きしましょう。
支払期日よりも前に売掛債権を現金化できるという点では、手形割引とファクタリングは似ていますが、違いもあります。特に償還請求権の有無の差は大きく、未払いリスクをなくしたい場合はファクタリングの方がおすすめです。
ファクタリング会社は多数ありますが、その中でも特におすすめなのがMentor Capitalです。最短即日入金に対応しており、早急な資金調達が期待できます。売掛債権を早期に現金化したい方は、ぜひお問い合わせください。