社内コラムファクタリング関連の情報をお届けいたします

回し手形とは? ファクタリングとの違いや利用方法、メリット・デメリットを解説

最終更新日:2025年05月30日

「手元の現金が足りない。でも、取引先は支払いを待ってくれそうにはない」。このような場合に使えるのが回し手形です。

受取手形をそのまま第三者への支払いに使うことで、取り急ぎ支払いを乗り切れる仕組みですが、活用にはメリット・デメリットを把握しておくことが不可欠です。本記事では、回し手形の基本的な仕組みから、手形割引・ファクタリングとの違い、利用時の注意点までを分かりやすく解説します。

回し手形とは?

回し手形は、裏書譲渡(取引先から受け取った受取手形を第三者に譲渡すること)の際に作成される手形です。

受取手形は、商品やサービスを販売した際に取引先から受け取れる有価証券であり、支払日(満期日)後に銀行に持ち込めば現金化できます。この受取手形を現金の代わりに支払いに充てる仕組みが裏書譲渡です。

通常、受取手形を現金化するためには満期日まで待つ必要がありますが、裏書譲渡の仕組みを使えば、満期日の前でも第三者から商品やサービスを購入できます。ただし、取引先が裏書譲渡を拒否してきた場合は当然商品やサービスの購入はできません。

裏書手形との違い

回し手形と裏書手形は同じものを指します。受取手形を回し手形として第三者に譲渡する際には、受取手形の裏面に会社名や住所などの必要事項を記載しなければなりません。これが裏書手形の名称の由来です。

手形割引との違い

手形割引とは、保有している受取手形を満期日前に銀行や手形割引専門業者に買い取ってもらい(正確には融資)現金化することです。

前述の通り、通常であれば受取手形は満期日まで待たなければ現金化できませんが、手形割引の仕組みを利用すれば早期の現金化が可能になります。裏書譲渡が支払手段の確保を目的にしているのに対して、手形割引は現金の確保が目的であることが違いの一つです。

また、裏書譲渡には手数料がかからないのに対して、手形割引には手数料がかかります。手形割引にかかる手数料は割引料と呼ばれ、銀行や手形割引専門業者の収益になります。割引料は金融機関の種類や振出人の信用力、満期日までの期日などに左右されるため注意が必要です。

また、裏書譲渡は支払先の承諾が必要になるのに対して、手形割引では金融機関の審査通過が必要になります。審査では主に振出人の信用力が重視されるため、自社の業績に問題があったり、資金繰りに難があったりする場合でも比較的通りやすいです。

ファクタリングとの違い

ファクタリングとは、企業が保有する売掛債権を支払期日前にファクタリング会社に売却する仕組みです。借り入れなどに比べて、スピーディーに資金調達できます。裏書譲渡は受取手形が対象であるのに対して、ファクタリングは主に売掛金が対象です。

また、前述の通り裏書譲渡には手数料がかかりませんが、ファクタリングには手数料がかかります。手数料率はファクタリング会社の種類や対象となる売掛先の信用力、支払期日までの日数などにより上下しますが、一般的に手形割引よりも高くなることが多いです。

さらに、償還請求権の有無も違いの一つです。ファクタリングには原則償還請求権がありません。償還請求権とは、債務者が支払不能になった場合に、新しい債権者が元の債権者に対して支払いを求める権利のことです。ファクタリングで一度売掛債権を売却してしまえば、回収不能リスクはファクタリング会社が背負うことになるため、余計なリスクを完全に回避できます。一方、裏書譲渡には償還請求権があるため、万が一振出先が不渡りを起こした場合、裏書譲渡をした企業が支払いをしなければなりません。

回し手形の利用方法は?

手元に受取手形があれば、すぐに回し手形を発行できます。具体的な発行手順は以下の通りです。

1.取引先の了承を得る

回し手形を発行する際には、支払先から了承を得なければなりません。取引先のほとんどは、不確実性の高い回し手形よりも、現金で支払ってほしいと考えています。拒否されるリスクを考慮した上で交渉しましょう。

仮に了承が得られた場合、可能であればそのことを文章に残しておきましょう。後で言った言わないのトラブルを避けられます。

2.手形に裏書する

取引先から了承が得られたら、手形の裏書を行いましょう。手形の裏面には通常「表記金額を下記被裏書人またはその指図人へお支払いください」という文章が記載されていますので、そこに以下の事項を記載しましょう。

・譲渡年月日
・裏書人(手形を裏書きする人)の会社名、代表取締役名など
・会社印
・被裏書人(回し手形を受け取り、新たな債権者になる人)の名前

裏書の内容に不備があった場合、譲渡が無効と見なされる恐れがあります。譲渡の前に、間違いがないかをしっかりと確認しましょう。

3.回し手形を譲渡する

裏書が終わったら、取引先に回し手形を手渡して支払を完了させましょう。自社の売掛先が支払期日までに銀行への振込を行い、被裏書人が問題なく入金を確認できれば完了です。万が一不渡りが起こった場合、被裏書人が償還請求権を行使するため注意が必要です。

なお、裏書譲渡に人数制限はありません。そのため、回し手形を受け取った取引先がさらに裏書譲渡をして他者に手形が渡ることもあります。

回し手形を利用するメリット

回し手形は通常あまり利用されない支払方法ですが、さまざまなメリットがあります。主なメリットは以下の4点です。

手元に現金がなくても支払いできる

回し手形を利用するメリットとして、手元に資金がなくても代金決済できることが挙げられます。「今は手元に資金がないが、数カ月以内に受取手形の入金予定がある」という場合にはとても便利です。取引相手を待たせる必要がなくなり、事業展開はよりスピーディーになるでしょう。

なお、仮に手元に現金がある場合でも、回し手形は利用できます。万が一に備えて手元により多くの資金を残しておきたい場合は、活用を検討しましょう。

手形割引のような手数料が発生しない

回し手形は取引相手の承諾があれば、手数料なしで利用できます。支払期日よりも前に売掛債権を現金化する手段には、他に手形割引やファクタリングがありますが、どちらも相応の手数料が発生します。より手数料が低いのは手形割引ですが、無料ではありませんし、審査に時間がかかってしまうというデメリットも無視できません。銀行や信用金庫などの金融機関から融資を受ける場合も、利息の支払いが発生します。

それに対して、回し手形では手数料や利息などの余計な支払が一切発生せず、受取手形の額面通りの金額を決済に回せます。取引先の承諾さえ得られれば、現金と並ぶ低コストな支払い手段として活用できるでしょう。

譲渡の手間が比較的少ない

回し手形の利用は、他の資金調達方法と比べて手間のかからない手法です。例えば、銀行融資を受ける場合、商業登記簿謄本(履歴事項全部証明書)や事業計画書、資金繰り表、決算表などの書類を準備して、銀行の審査を受ける必要があります。もちろん、そこまで手間をかけても審査に通る保証はありません。

手形割引やファクタリングは、銀行融資と比べれば審査の手間も少なく、審査難易度も易しめですが、誰もが無制限で利用できるわけではありません。

一方、回し手形は裏書譲渡をするだけで利用できるため、手間が比較的少なく済みます。保有している受取手形の裏側にいくつかの必要事項を記入して、取引先に手渡すだけです。

なお、裏書譲渡を行った際は、仕訳を行う必要があります。例えば、裏書譲渡で100万円分の仕入れをした場合は、以下の仕訳を行ってください。

【一般的な仕訳方法の場合】

借方 貸方
仕入:1,000,000 受取手形:1,000,000

評価勘定表(勘定科目を評価するための科目を使う仕訳方法)の場合

【仕入時】

借方 貸方
仕入:1,000,000 裏書手形:1,000,000

【決済時】

借方 貸方
裏書手形:1,000,000 受取手形:1,000,000

振出人の同意は原則不要

回し手形は、振出人の同意がなくても発行できます。例えば、B社がA社から受け取った受取手形を回し手形としてC社へ裏書譲渡する場合、A社の承諾は不要です(C社との同意は必要)。

なお、前述の通り裏書譲渡は何回でも可能です。例えば、A社が振り出した受取手形がB社→C社→D社→E社→F社と渡った場合、F社が銀行に手形を持ち込むと、A社から支払いが行われます。

回し手形を利用するデメリット・注意点

前述の通り、回し手形の発行にはさまざまなメリットがありますが、一方でデメリットも無視できません。他の支払い手段を選ぶべきケースも多々あるため、注意が必要です。

不渡り時に償還義務がある

回し手形を利用する大きなデメリットとして、不渡りが出た場合には買い戻さなければならないことが挙げられます。不渡りとは、受取手形を銀行に持ち込んでも換金ができなくなることです。

不渡りは、以下の3種類に分けられます。

0号不渡り 振出人の署名や押印ミス、裏書きの不備などによるもの。
資金不足によるものではないため、金融機関は不渡届を作成しない。
1号不渡り 当座預金残高不足や口座解約などによるもの。
不渡届が作成され、全国の金融機関にそのことが知られる。
6カ月以内に二度目の1号不渡りを出した場合、銀行取引が停止される。
2号不渡り 0号不渡りにも1号不渡りにも当てはまらないもの。
手形の盗難、契約不履行(商品が納入されない)などによる不渡り。
不渡届は作成されるが、異議申し立てが可能。

一般的な資金不足による不渡りは、1号不渡りに該当します。前述の通り、裏書譲渡には償還請求権があるため、振出先が1号不渡りを出した場合、売却した手形を買い戻さなければなりません。もちろん、振出人に対する請求権は消滅しませんが、不渡りを起こした相手から代金を回収するのは難しいでしょう。

分割して利用できない

回し手形は額面金額を全額譲渡するものであり、一部のみの譲渡はできません。例えば、額面金額が500万円の受取手形を持っていて、300万円の仕入れをするケースを考えます。この場合、300万円分だけ回し手形として裏書譲渡し、残りの200万円分は受取手形のまま保有し続けることはできません。額面金額が多いほど、回し手形には不向きです。

なお、近年急速に普及が進んでいる電子手形は分割ができます。電子手形は、一般的な約束手形とは異なり実物はなく、オンライン上で存在を確認できます。電子手形は1000円以上1円単位での分割ができるので、大きな金額の手形を頻繁にやり取りする場合は導入を検討してみても良いかもしれません。

利用を断られる場合がある

回し手形を利用する際には、取引先の承諾が必要です。

受取手形には「支払期日前に満額で現金化できない」「不渡りのリスクがある」などのデメリットがあります。だからこそ、企業は回し手形を使って支払いを行いたがるのですが、支払いを受ける側がそのデメリットを背負わなければならない道理はありません。

特に振出先の信用度が低かったり、額面金額が大きかったり、満期日が遅かったりする場合には、断られる可能性が高まるでしょう。

取引先から疑念を抱かれる場合がある

回し手形で支払いを行った場合、取引先から業績や資金繰りの悪化を疑われる可能性があります。

通常、回し手形は手元に支払いに充てられる現金が十分にないときに使われます。取引先から見た場合、回し手形の利用を提案してきた企業は、現金が十分にないように見えるわけです。実態がどうであれ、取引先からネガティブなイメージを持たれる可能性があります。

イメージが多少悪化するだけなら良いですが、場合によっては取引自体に影響が出るかもしれません。そのため、回し手形での支払いを提案する相手はよく選びましょう。強固な信頼関係が築けている相手や、自社の方が明らかに立場的に優位な場合には、リスクは比較的小さくなります。

回し手形以外の資金調達・決済手段

回し手形は便利な決済手段ですが、デメリットも無視できません。回し手形に固執せず、他の方法を選んだ方が良いこともあります。ここでは、企業が使える回し手形以外の資金調達や決済の手段を紹介します。

銀行融資

銀行融資とは、文字通り銀行が法人や個人に対して行う融資のことです。銀行融資は大きく、以下の4つに分類できます。

種類 仕組み メリット デメリット
手形貸付 自社を振出人、銀行を受取人とする手形を振り出して融資を受ける。主に1年未満の短期融資の際に行われる。 審査が早い金利が低い 高い信用力が必要弁済不能になった場合は不渡り扱いとなる
手形割引 手形を満期日前に銀行に持ち込み、現金化する。 一時的な資金繰りに便利 審査がある手数料がかかる
当座貸越 融資の限度額を設定し、限度額内で繰り返し利用できる。 限度額内で何度も貸し借りできる(審査が一度で良い) 担保や保証人が求められることがある借りすぎてしまう恐れがある
証書貸付 金銭消費貸借契約書を発行して融資を受ける。 長期の融資に向いている 借り入れのたびに審査が必要

いずれの融資も総じて他の資金調達手段と比べると金利が低め、限度額が高めなどメリットも多いです。一方で審査が厳しく時間がかかり、場合によっては担保も求められるため、手元資金や保有資産の少ない中小企業には利用しづらい一面もあります。

ビジネスローン

ビジネスローンは、銀行や消費者金融が提供する事業性資金の融資サービスです。金融機関によっては「ビジネスセレクトローン」「事業者向けカードローン」などの名前で提供しているところもありますが、仕組み自体は同じです。

ビジネスローンは、民間の金融機関からお金を借りる点は銀行融資と共通していますが、異なる点もあります。ビジネスローンのメリットは、審査スピードが早いことです。審査難易度自体も低めなので、銀行融資と比べると中小企業でも利用しやすいです。また、原則として担保や保証人は必要ありません。

一方で、金利は銀行融資と比べると高めに設定されることが多いです。短期かつ少額の借り入れならばともかく、長期間の借り入れとなると利息の支払いが重くのしかかります。便利なサービスですが、計画的な利用が大切です。

掛け払い代行サービス

掛け払い代行サービスとは、掛け払いを利用した際に発生するさまざまな業務を代行してもらえるサービスです。

掛け払いとは、商品やサービスを先に提供し、後でまとめて代金を請求して支払いを受ける仕組みを指します。月に複数の取引があっても、支払いは1回にまとめることが多いです。

掛け払いは複数回の取引の請求を1回にまとめるため事務作業の負担を少なくでき、取引先から選ばれやすくなるというメリットがあります。一方で、相手側に支払い能力があるか見極める与信審査が必要になる、代金未回収リスクがあるなどのデメリットもあります。

掛け払い代行サービスを導入すれば、掛け払いの導入に必要な請求、消込、督促、与信審査などを全て任せることが可能です。また、支払い遅延や未払いのリスクは掛け払い代行サービスが負うため、資金回収の確実性も向上します。一方で、利用には手数料がかかります。

電子記録債権(でんさい)

電子記録債権は、金銭債権を電子化したものです。発生や譲渡の記録も全てデータとして管理されます。

電子記録債権を管理する機関を電子債権記録機関といいます。電子記録債権を利用する際には、電子債権記録機関に加盟している金融機関(銀行、信用金庫など)との契約が必要です。日本には現在全部で5個の電子債権記録機関があり、最も多くの金融機関が加盟しているのがでんさいネット(株式会社全銀電子債権ネットワーク)で、493社が加盟しています(2025年4月18日現在)。

電子記録債権は従来の一般的な債権(受取手形など)と比べると発行・交付・保管のコストが低く、盗難や紛失などのリスクもないのが大きなメリットです。また、分割譲渡もできます。一方、取引相手も電子記録債権を導入していないと利用できない点には留意しましょう。

ファクタリング

ファクタリングとは、売掛債権をファクタリング会社に譲渡(売却)して、早期に現金を得る仕組みです。通常、売掛債権を現金化するには支払期日まで待つ必要がありますが、ファクタリングを利用すれば支払期日前に現金を入手できます。

ファクタリングは売掛債権を売却する仕組みであるため、自社の信用情報に何らかの問題があっても利用できることが多いです。審査も融資と比べると易しく、即日入金に対応しているファクタリング会社も少なくありません。また償還請求権がないため、未回収リスクも大きく軽減できます。

手数料がかかるというデメリットもありますが、資金繰りに悩まされやすい中小企業にとっては便利な資金調達手段です。

まとめ

裏書譲渡を行った際に取引先に渡される手形を、回し手形といいます。

回し手形を利用する際には、取引先の了承が必要です。受取手形に必要事項を裏書きし、回し手形として取引先に手渡せば完了です。回し手形をさらに他者に回すこともできます。

回し手形のメリットは、手元に現金がなくても利用できることです。手形割引やファクタリングなどと異なり手数料もかかりません。一方で償還請求権があるため、万が一不渡りが起こった場合は支払いを肩代わりしなければなりません。

償還請求権なしで支払手段を調達したいなら、ファクタリングが便利です。ファクタリング会社は多数ありますが、即日で資金調達をしたいならば株式会社Mentor Capitalにご相談ください。最短60秒の簡単審査で、取引先に知られることなく売掛債権を現金化できます。Webサイトから、24時間365日いつでも申し込みが可能です。

365日24時間全国対応可能