ファクタリングに担保は不要？　ABLとの違いも解説

ファクタリングは、売掛金を利用した資金調達手法です。ファクタリング会社に売掛債権を売却することによって、支払期日よりも前に現金を入手できます。

ファクタリングは売掛金を担保に融資を受けるABL（売掛金担保融資）と類似していますが、違う面もあります。担保や保証人を必要とせず、負債が増えないのがファクタリングの長所です。この記事ではファクタリングとABLの主な違いや、メリット、デメリットを解説します。

ファクタリングとは

ファクタリングは、手元にある売掛債権を売却して現金化するサービスです。通常、売掛債権を現金に変えるためには支払期日を待たなければなりませんが、ファクタリングの仕組みを利用すれば支払期日よりも前に現金を入手できるため、急に運転資金が必要になったときなどに重宝します。

またファクタリングは融資ではないため、保証人や担保が求められることもなく、利息も発生しません。審査難易度も銀行融資と比べると控えめです。反面、買取代金から手数料が差し引かれるなどのデメリットもあります。

ファクタリングとABL（売掛金担保融資）の違いは？

ファクタリングとよく似た資金調達方法に、ABL（売掛金担保融資）があります。これは売掛金を担保にした融資です。通常、銀行融資では不動産を担保にすることが多いですが、ABLは担保になるような不動産を持たない企業でも利用できるのが特徴です。

ファクタリングとABLはどちらも売掛金が必要な点では一致していますが、異なる点もあります。主な違いは以下の4つです。

契約対象

ファクタリングでは、売掛債権の売買契約を結びます。一方、ABLでは売掛金を担保とする融資契約を結びます。これが特に大きな違いです。

ファクタリングでは売掛債権を売却するため、契約が成立すれば売掛金を受け取る権利は消失します。一方、ABLでは売掛金を担保にお金を借りるため、契約が成立しても完済すれば売掛金を受け取る権利が自分の元に戻ってきます。

審査の基準

ファクタリングの審査では、主に売掛金を支払う売掛先の信用力、財務状況などが重視されます。自社の経営状態が悪化していても、売掛先が健全ならば審査に通過できる可能性は高まります。

一方、ABLでは、自社の信用力、財務状況もある程度チェックされ、担保にした売掛金の資産価値や売掛先の経営状態も重視されます。自社と売掛先、双方の経営が健全に行われていることが重要です。

調達可能な金額

ファクタリングは売掛債権を売却するサービスであるため、調達金額の上限は売掛金の金額とイコールです。

一方、ABLでは、調達金額は担保にした売掛金の価値に左右されます。売掛金の金額よりも低くなることが多いですが、場合によってはそれを超える可能性もあります。

資金調達までにかかる時間

一般的に、ファクタリングの方が審査にかかる時間は短いです。ファクタリングは売掛金を買い取るサービスであり、ファクタリング会社が自社の経営状態を詳しくチェックすることが少ないため、最短即日、長くても数日程度で審査が終わることが多いです。

一方、ABLの場合、ファクタリング会社は自社の経営状態も詳細に確認しなければならないため、1週間～1カ月程度の時間がかかります。このため、急な資金が必要になったときの手段としてはやや活用しづらい一面があります。

担保不要のファクタリングのメリット

担保なしで利用できることが魅力のファクタリング。実は他にもさまざまなメリットがあります。

スピーディーな資金調達が可能

ファクタリングの大きなメリットとして、資金調達にかかる時間が短いことが挙げられます。

一般的な銀行融資の場合、企業の業績や経営状態、担保の価値などが入念にチェックされるため、申し込みから融資実行までに1カ月以上かかることがしばしばあります。そのため、急な運転資金を調達する手段としては使いにくいです。

一方ファクタリングの場合、業者によっては最短即日での資金調達が可能です。申し込みから審査まで全てインターネット上での手続きで終わることも多く、手間がかかりません。事業拡大やIPOの資金調達手段として、非常に有用です。

自社の信用力によらず利用可能

ファクタリングは、自社の信用力が不十分な状態でも利用できます。

一般的な銀行融資の場合、赤字が続いていたり、債務超過が発生していたりする場合、審査に通らないことが多いです。また、信用力がない創業間もない企業の場合、財務状況に問題がなくても十分な融資が受けられないことが珍しくありません。

一方、前述の通りファクタリングは融資ではなく売掛金を売却する取引であるため、自社の信用力が問われることはあまりありません。赤字や債務超過などで資金繰りに問題が出始めている場合の資金調達手段として便利です。

ただし売掛先の信用度が低い場合、自社の経営状態が良好でも売掛金を買い取ってもらえないことがあるので注意が必要です。

売掛先の倒産リスクを避けられる

ファクタリングを利用すれば、売掛先の倒産リスクを回避できます。

売掛債権を売却すると、その所有権がファクタリング会社に移動します。仮に売掛金を売却した後に売掛先が倒産しても、損失を被るのは所有者であるファクタリング会社であり、自社には影響がありません。売掛先に倒産リスクを避けるには、ファクタリングの利用の検討をおすすめします。

ただし、売掛先のリスクが高い場合、ファクタリング会社に買い取りに応じてもらえない、あるいは手数料が高額になる可能性がある点は留意が必要です。

負債が増えない

ファクタリングを利用しても、自社の負債が増えることはありません。

ファクタリングは売掛債権を売却する仕組みです。貸借対照表に当てはめた場合、資産である売掛金を同じ資産である現金に移動させる作業といえます。資産の形が変化しただけであり、負債が増えることはありません。

負債が増えないため、財務状況の健全性を保てます。健全な財務状況を維持できれば、将来のIPOや銀行融資にも対応しやすくなります。

担保不要のファクタリングの注意点

ここまで紹介してきた通り、ファクタリングは担保なしで使える優れた資金調達方法ですが、一方で注意点も存在します。ファクタリングを初めて利用する際は、以下の3点に留意しましょう。

手数料がかかる

ファクタリングの利用には手数料がかかるため、売掛金を全額現金化するのは不可能です。手数料が何％になるかはケースバイケースで、売掛先の財務状況や信用力に左右されます。場合によっては、さらに振込手数料を請求されることもあります。

外部に支払う手数料をより少なくしたい場合は、多少時間がかかっても銀行融資を優先させた方が良いかもしれません。

売掛先の信用力が低ければ利用できない

前述の通り、ファクタリングでは自社よりも売掛先の信用力が問われます。自社の財務状況が健全であっても、売掛先に何らかの問題がある場合、売掛債権を買い取ってもらえなかったり、手数料が割高になったりするかもしれません。

売掛先の信用力を把握するには、適切な与信管理が必要です。与信管理の手法には自社に存在するリソースを使う内部調査、公開情報を基に調査する外部調査などがあります。売掛債権を買い取ってもらえるか心配な場合は、事前に調査をすると良いでしょう。

悪徳業者かどうか見極めなければならない

ファクタリング会社は無資格で開業できます。そのため、資格が求められる貸金業などと比べると参入ハードルが低く、悪徳業者が入り込みやすい余地があります。ファクタリングの仕組み自体は合法ですが、中には違法な事業を行っている悪徳業者もあるため、利用の際には注意が必要です。

悪徳業者の手法は千差万別ですが、特に多いのがファクタリング会社を装って貸付を行うというものです。本来、貸付には資格が必要ですが、悪徳業者はその資格を得ずに営業しています。悪徳業者を避けるためにも、法律家に相談したり、契約書の内容を精査したりすることが大切です。

まとめ

ファクタリングは担保がなくても利用できる資金調達手段です。負債が増えることもないので、健全な財務状況を維持しつつできるだけ短期間で資金を確保したいときに重宝します。一方で、ファクタリング会社の中には悪徳業者も混じっているため、注意が必要です。

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