事業資金とは? 種類や必要な金額の目安、調達方法などを解説
最終更新日:2025年12月26日
企業を運営していく上で欠かせない事業資金は、設備資金と運転資金に分けられます。設備資金は設備や機械にかかる資金で、運転資金は人件費や光熱費などの企業を維持するための資金です。融資で資金を調達する際に使途を尋ねられることもあるため、両者は分けて考えましょう。
本記事では、事業資金の種類や調達方法、融資を受ける際のポイントなどを解説します。
<この記事で分かること>
・設備資金と運転資金の違い
・起業、開業に必要な資金の目安
・事業資金の主な借入先の特徴と選び方
・融資を受ける際にやるべきこと
Table of Contents
事業資金とは?
事業資金とは、事業を開始する、もしくは継続するために必要な資金の総称です。機械や設備の購入費用、Webサイトの作成費用、事務所の家賃、人件費など、事業のためにかかるお金は原則全て事業資金から支払います。
必要な事業資金額は、業種や事業規模によって異なります。事業資金が自己資金だけでまかなえない場合は、金融機関からの融資や投資家からの出資も検討しましょう。
事業資金の種類
事業資金には「設備資金」と「運転資金」があります。使途によって融資条件が変わることがあるため、両者は別物として考えてください。
設備資金
設備資金は、事業に必要な設備や機械などの調達に充てる資金です。設備資金で購入したものは基本的に貸借対照表の資産の部に計上します。設備資金の使途の具体例として、以下のようなものが挙げられます。
・店舗や事務所の購入費用
・店舗や事務所の内装工事費
・車両購入費
・パソコンやプリンターなどの購入費用
・Webサイトの制作費
設備資金の使途は、業種ごとに大きく異なることを認識しておきましょう。例えば飲食店の場合はオーブンや冷蔵庫の購入に充てられる他、診療所の場合は医療機器の購入に充てられます。
運転資金
運転資金は、事業を続けていくための経費に充てる資金です。運転資金で支払った費用は基本的に損益計算書の費用の部に計上します。運転資金の使途の具体例として、以下のようなものが挙げられます。
・商品の仕入費用
・人件費
・店舗や事務所の家賃
・光熱費
運転資金が不足すると帳簿上黒字であっても倒産する、いわゆる「黒字倒産」に陥る可能性があるため注意が必要です。また運転資金は、経常運転資金、増加運転資金、減少運転資金、季節性運転資金といった資金に細分化できます。それぞれの詳細は、以下の通りです。
経常運転資金
経常運転資金は、企業が現在の経営を続けるために必要な資金です。一般的に「運転資金」という場合は、経常運転資金を指しているケースが多いです。具体的には、通常時の仕入費用や人件費などが該当します。
企業間では掛取引をすることが多いため、自社への入金と自社からの出金にタイムラグが生まれやすいです。このタイムラグの間も企業を維持するために、経常運転資金が必要となります。
増加運転資金
増加運転資金は、事業が成長して売り上げが増加しているときにかかる資金です。例えば商品の生産が増えれば、原材料費が増えます。さらに増産に必要な人員を確保するための人件費も必要です。この増えた出費を賄うのが、増加運転資金です。
減少運転資金
減少運転資金は、増加運転資金とは逆に、事業が縮小して売り上げが減少しているときにかかる資金です。売り上げが減少すると、仕入費用などの変動費は減るものの、人件費などの固定費は通常ほとんど変わりません。結果、資金不足を起こすことがあります。これを賄うのが、減少運転資金です。
季節性運転資金
季節性運転資金とは、特定の季節にだけ必要となる資金です。例えば繁忙期と閑散期の差が大きい業界の場合、繁忙期には売り上げを確保するための仕入費用や人件費が追加でかかります。またボーナスがある会社なら、その時期は追加で人件費がかかります。これらの出費を賄うのが、季節性運転資金です。
起業・開業に必要な資金の目安
日本政策金融公庫の資料によれば、2024年度の新規開業者の開業費用の分布は以下の通りでした(※)。
| 開業費用 | 割合(%) |
| 250万円未満 | 20.1 |
| 250万円以上~500万円未満 | 21.0 |
| 500万円以上~1,000万円未満 | 30.7 |
| 1,000万円以上~2,000万円未満 | 18.8 |
| 2,000万円以上 | 9.4 |
開業費用の平均値は985万円、中央値は580万円で、長期的に見ると減少傾向にあります(2000年度の平均値は1,537万円、中央値は895万円)。
※参考:日本政策金融公庫.「2024年度新規開業実態調査」.
事業資金を調達するための方法
事業資金の調達方法には融資や補助金、投資などがあります。それぞれメリットやデメリットがあるため、自社の状況やニーズに適したものを選びましょう。
融資
事業資金の調達手段として一般的なものが、融資です。融資とは民間や政府系の金融機関からお金を借りることで、弁済期間が1年以下の「短期融資」と、1年を超える「長期融資」に細分化できます。通常、運転資金は短期融資、設備投資は長期融資で借り入れます。一般的な企業が利用できる主な融資先は、以下の通りです。
・銀行:金利は低めだが融資基準が厳しい
・信用金庫:銀行による融資と比べると審査が柔軟
・ノンバンク:金利は高めだがスピーディな審査が期待できる
・日本政策金融公庫:政府系金融機関で、中小企業向けの融資が充実している
・地方自治体:自治体によって制度が異なる
自己資金
自己資金とは、経営者自身が用意した資産(預貯金や不動産、有価証券など)や、企業内に蓄積された過去の利益のことです。自己資金は自社で用意したお金であるため、他者から用途を制限されない上に、利息や配当などの支払い義務も生まれません。銀行や投資家の顔色をうかがう必要もなく、自由度が高いのが特徴です。ただし、用意するには時間がかかります。
また融資で資金を準備する場合でも、ある程度自己資金を用意しておいた方が審査通過率は高くなることを認識しておきましょう。
補助金・助成金
補助金・助成金は、国や地方自治体が特定の条件を満たした企業や個人に対して支給する資金です。
補助金はあらかじめ採択件数や総額が決まっていることが多く、申請しても必ずもらえるとは限りません。一方、助成金は要件を満たせば受給できる可能性が高いです。
どちらも返す義務がないのは大きなメリットですが、注意点もいくつかあります。まず、補助金・助成金の多くは原則後払いであるため、先に資金を用意しておかなければなりません。また事務処理が増える、会計検査院の検査が入る可能性があるなど、一定の手間がかかります。「とりあえずもらっておく」という安易な姿勢はかえって負担が増える可能性があるので注意しましょう。
個人投資家やベンチャーキャピタルからの投資
個人投資家やベンチャーキャピタルからの投資を募るのも、事業資金を調達する方法の一つです。ベンチャーキャピタルとは、未上場の新興企業(ベンチャー企業)に出資し、その新興企業が成長して株式上場した際に自身の株式を売却して、値上がり益を得ることを目的とする投資企業です。将来的に上場を目指している企業にとっては、有用な資金調達手段といえます。出資であるため、弁済の必要もありません。
ただし、他者に株式を取得させることになるため、経営に介入されるリスクがゼロではありません。
クラウドファンディング
クラウドファンディングとは、インターネットを通じて不特定多数の人から出資を募る手法のことです。クラウド(Crowd)は群衆、ファンディング(funding)は資金調達を指す単語です。クラウドファンディングには製品を購入してもらう「購入型」、プロジェクトへの融資を求める「融資型」、支援者に対して見返りのない「寄付型」などがあります。自社の姿勢や方針に共感してくれる不特定多数から資金を募れるため、社会や地域への貢献を理念とする企業に適しています。
ただし、当然ながらいつも資金が目標金額に達するとは限りません。また製品や理念を公開するため、ライバル企業にそれらを真似されるリスクもあります。
ファクタリング
ファクタリングとは、売掛債権をファクタリング会社に譲渡(売却)して資金を得る資金調達方法です。通常、売掛債権は支払期日まで待たなければ現金化できませんが、ファクタリングを利用すれば、迅速に資金が調達できます。
ファクタリングで売掛債権を売却した場合、原則として未回収リスクはファクタリング会社が負うため、万が一売掛先が倒産しても利用企業のリスクがありません。ただし、利用には手数料がかかることを認識しておきましょう。
ファクタリングにも審査はありますが、融資と比べると基準は易しい傾向にあります。また融資では自社の信用力が主に問われるのに対して、ファクタリングでは売掛債権の信頼、つまり売掛先の信用力が問われます。赤字や債務超過に陥っていたり、税金の滞納があったりする企業でも利用できるのは、ファクタリングならではのメリットです。
事業資金の主な借入先
事業資金をどこから調達するかは、経営において重要なポイントです。自社の状況に適した金融機関を選びましょう。主な借入先をご紹介します。
銀行などの金融機関
事業資金の借入先として特に一般的なのが、銀行や信用金庫などの民間金融機関です。銀行は株主の利益を目的とした株式会社で、信用金庫は組合員の相互扶助を目的とした共同組織という違いはありますが、基本的な機能は変わりありません。
銀行の融資は金利が低く、多額の融資も期待できる一方、審査が厳しめで時間がかかるというデメリットがあります。信用金庫は多少審査難易度が下がる反面、金利は高く、融資限度額は低くなる傾向があります。
日本政策金融公庫
日本政策金融公庫は、国が100%出資する政府系金融機関です。銀行や信用金庫、ノンバンクなどの民間金融機関の機能を補完し、国民生活を向上させることを目的としています。
民間の金融機関と比べると金利が低めで弁済の期間を長く設定しやすく、中小企業でも借りやすいのがメリットです。一方で審査にかかる時間が長く、提出しなければならない書類も多い点には注意しましょう。
自治体の制度融資
制度融資は、中小企業や個人事業主の資金調達の円滑化を目的とした、自治体が行う融資です。
制度融資は自治体と金融機関・信用保証協会の3機関が協働して行うものです。金融機関が融資を行い、信用保証協会が債務の保証(利用者が弁済できなくなった場合の肩代わり)を行い、自治体は利子や保証料を補助して利用者をサポートします。細かな条件は自治体によって異なるため、詳細については都道府県もしくは市区町村まで問い合わせましょう。
ノンバンク
ノンバンクは、預金機能を持たない民間金融機関の総称です。具体的にはクレジットカード会社や信販会社、消費者金融などが該当します。ノンバンクの多くはビジネスローンの名目で事業性資金の融資を行っています。
ノンバンクのメリットは審査スピードの速さです。銀行の融資の審査は3週間~1カ月程度かかる傾向にありますが、ノンバンクのビジネスローンは数日程度で済むことが多いです。一方で金利は高めに設定されるケースが多いため、長期間の借り入れには適していません。
融資を受けるための準備
金融機関から融資を受ける際には、事前の準備が欠かせません。審査の通過率を高め、経営の悪化を防ぐためにも、ここで紹介するポイントを押さえておきましょう。
目的や期間、支払い計画を明らかにしておく
事業資金を融資で準備する場合は、事前に目的や期間、弁済計画を明確にしておきましょう。特に銀行や信用金庫などは利用目的を考慮した上で合否や融資条件などを決めています。そのため融資を受けた後で当初とは別の目的に資金を流用すると、信頼を失うかもしれません。また安易な借り入れは、財務の悪化につながるため注意が必要です。
自己資金を計画的に準備しておく
開業をする場合は、事業資金の一部を自己資金で賄うことをおすすめします。自己資金が多ければ「開業準備が順調に進んでおり、なおかつ弁済能力も高い」と金融機関へアピールできるためです。融資を受ける場合に、借りやすくなる可能性があります。
また自己資金の条件が設定されている融資もあります。例えば福岡市の創業支援資金では、以下の通り条件が定められています(※)。
“創業予定者又は税務申告1期未終了者に限り、創業資金総額の1/10の自己資金を有すること”
自治体の制度融資ではこのような条件が定められていることも多いため、事前に確認しておきましょう。
※出典:福岡市 中小企業サポートセンター.「各資金の概要」.
事業計画書を作成する
融資の審査を受ける際には、借入先から事業計画書の提出を求められることが多いです。事業計画書とは、事業の内容や必要な資金、収益の見通しなどをまとめた書類です。
事業計画書を作成すれば、考えているアイデアや構想が可視化され、事業の強みや弱み、差別化点が見つけやすくなります。また事業内容を説明できるようになるため、従業員や取引先の協力も得やすくなるでしょう。
事業計画書には決まったフォーマットはありませんが、一般的には以下のような事項を記載します。
・創業の動機と目的
・自身の職歴、実績
・取り扱う商品やサービス、販売戦略
・取引先との関係
・従業員
・現在の借り入れの状況
・必要な資金の調達方法
・売り上げ・経費・利益の見通し
開業届を提出する
個人事業主として事業を開始した場合は、融資の審査を受ける前に開業届を提出しましょう。開業届とは、その名の通り個人事業を開業したことを税務署に知らせるための書面です。
開業届を提出しなくても罰則はありませんが、開業届を出していること自体が事業を行っている証明になります。また開業届が未提出だと、青色申告や屋号を用いた銀行口座の開設ができません。忘れないうちに提出しましょう。
事業資金の調達先を決める基準
通事業資金の調達先の候補は、先述した通りさまざまあります。ここからは、事業資金の調達先を決める基準をご紹介します。
調達可能額
調達したい資金額によって、選ぶべき調達先は異なります。比較的多くの金額を借りたい場合は、銀行もしくは日本政策金融公庫を検討しましょう。例えば日本政策金融公庫の場合、新規開業・スタートアップ支援資金の上限金額は7,200万円(うち運転資金が4,800万円)と高めに設定されています。
一方、調達したい資金額がそれほど多くない場合は、ノンバンクのビジネスローンを検討するのも方法の一つです。銀行などと比べると審査が早く、スピーディに資金が調達できます。
※参考:日本政策金融公庫.「新規開業・スタートアップ支援資金」.
使用目的
事業資金の使用目的を、資金使途といいます。資金使途は銀行や信用金庫、日本政策金融公庫などから融資を受ける際の審査基準となるため、明確にしておきましょう。事業拡大のための費用の支払いなど、前向きな使途があると銀行や信用金庫、日本政策金融公庫などの審査に通りやすくなります。
また、例えば設備資金の確保を目的に融資を受けたにもかかわらず、運転資金に使った場合は資金使途違反と判断されるかもしれません。金融機関からの心証悪化につながる他、一括弁済しなければならない恐れもあるため注意しましょう。
入金にかかる期間
資金調達にかかる時間は、調達先ごとに異なります。先述した通り、銀行からの融資は3週間~1カ月程度かかることが多い一方、ノンバンクは数日程度で入金が受けられることもあります。ファクタリングはさらに早く、場合によっては当日中に入金されるため、とにかくすぐに資金が欲しい場合は利用を検討してみましょう。
まとめ
事業資金とは、事業の開始や継続に必要となる資金のことです。大きく設備資金と運転資金に分けられ、融資や自己資金、ファクタリングなどの手段を通じて調達します。中でも一般的な調達手段は融資ですが、借入先によって金利や借入期間などの条件が異なるため、自社の状況に合った資金調達方法を検討しましょう。
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