最終更新日:2021年09月09日
Mentor capitalです。
行融資については、経営者や経理担当者の立場としては可能な限り低い利子で多くの金額を調達したいと考えるでしょう。
一方、銀行の営業員の立場としては事業者に可能な限り債権回収リスクを抑えて融資したいでしょう。
銀行融資における銀行と事業者の交渉は、このようなお互いの立場を踏まえた上で妥協点を模索する話し合いです。
この時に融資を受けたい企業として、どのようなポイントに気をつければ上手く行くのでしょうか。銀行融資を成功させる条件、交渉のコツについて説明します。
銀行融資の両者の立場を理解する
まず、交渉の条件やコツを考える上で、銀行と事業者の立場を明確にする必要があります。
一見すると、事業者と銀行の立場は相反する関係で、ディベートの様に相手を上手く説得する事ができれば、
事業者に有利に貸し付けを獲得する事ができるように思っている経営者や経理担当者がいるかもしれません。
ですが、実はそうではありません。
銀行の営業員は基本的に取引先にお金を借りて欲しいのです。
銀行は、集めたお金を企業などに貸しつける事によって金利を貰って利益を出しています。
ですので、貸付額を増やしたいのが自然で、営業員も融資のノルマがあり、融資契約の結果が給料や昇進に影響します。
つまり、事業者も銀行側も融資を成功させたいため、相反する関係ではなくむしろ融資を実現するための協力関係と言えます。
このように、銀行の営業員は事業者と協力関係にありますので基本的に協力して融資を実現させる為に努力しますが、銀行の営業員の言う事に全て従う必要はありません。
理由は、銀行側の立場として事業者側に不利になる提案をする恐れがあるからです。
まず、考えられるのが銀行は貸し倒れリスクを恐れます。
営業員としても取引している事業者から貸し倒れが発生するとその後の出世に響きますので可能な限りリスクヘッジをします。
その結果、条件的に担保なしでも融資可能な場合でも土地や証券の担保を要求するケースが考えられます。
また、経営者を連帯保証人に設定したり、信用保証協会の信用保証付きの融資にする場合もありえます。
もちろん、本当に担保や保証がなければ融資が行えない場合もありますが、本当に担保や保証人がなければ融資が行えないほど条件が悪いのか、事実関係は確認する必要はあります。
銀行は仕入れ先の一種と考えて交渉する
融資の条件として本来必要のない担保や保証を求める可能性がある点は知識として押さえておきましょう。
現実的に、直接銀行に担保や保証人が必要かどうか聞ける交渉力があれば問題ありませんが、今後の関係性を考えるとストレートに確認できない場合があるでしょう。
また、担保や保証人が必要と言われた場合に、条件としてそれが妥当なのか、他行と比較するなどの方法がなければ実際の評価は難しいものです。
本当に融資の条件が適正かどうか、複数の銀行と付き合わなければわかりません。
一社の銀行としか付き合わなければどうしても銀行の方の交渉力が強くなり、どの程度の条件が適正な融資なのか分かりませんので、事業者は複数の銀行と付き合うほうが自分のためになります。
これは銀行を仕入れ先の様なイメージで捉えるようなものです。
もちろん、本当に銀行を仕入れ先として、複数の銀行から相見積を取って、見積もり内容を比較のうえ良い条件を出させるというのは現実的ではありません。
基本的には銀行の方が事業者よりも立場が強いため、それぞれの銀行の立場を理解した上で銀行を上手に利用する必要があります。
例えば、一番良くないのは、資金調達の度に相見積をとる事です。
詳細な融資金額、貸付金利、融資条件が確定した見積もりを取るためには銀行の審査を通過する必要があるわけですが、
銀行員は審査を通すために稟議書を作成したり、上司を説得したりと審査を通すために様々な社内調整を行います。
このように手間をかけて決定した融資条件を見積もりとして事業者に渡した結果、事業者からの返事が
「今回は他の銀行の方が良い条件で見積もりを出してくれたので、そちらの銀行で借ります」となれば、営業員のモチベーションは著しく低下し、今後の融資契約もなくなる可能性があります。
大体の社内で稟議を通せそうな条件を営業員にヒアリングする程度は良いかもしれませんが、具体的な審査をお願いする事などは辞めた方が良いでしょう。
企業規模によって付き合う銀行を変える
相手のモチベーションに影響を与えない範囲で複数の銀行と付き合う必要がありますが、その他、会社の規模によってその方針は異なります。
まずは信用金庫
創業したての零細企業はまず地元の信用金庫と付き合うのが良いです。
複数の銀行と取引しようとしても事業規模が小さいため真剣に相手にしてくれる可能性が低く、複数の銀行と付き合ったからと言って有利な条件で融資を受けられる可能性が低いからです。
銀行は株式会社として営利化されていますが、信用金庫は非営利法人で地域の発展に貢献する為に設立された機関ですので、
銀行よりも長期的な視点で企業に融資をしてくれる可能性が高く、いざという時も貸しはがしを行う可能性は低いと言われています。
その点からも創業したての零細企業が金融機関との付き合いを始めるのならば信用金庫からはじめた方が良いと考えられます。
次のステップは地銀
そして、ある程度事業規模が大きくなり、信用金庫の融資額で物足りなくなった場合は地銀と付き合う事を検討し始めます。
この時に急成長していると言う評判があって、まだ地銀と口座を開いていない場合は地銀側から営業に来るかもしれません。
このように規模が大きくなった時に、信用金庫との取引を辞めて地銀との取引に絞るというのはよくありません。
先ほど説明したとおり、信用金庫は経営が苦しくなったとしても最後まで自社の資金調達の面倒をしてくれる可能性が高いため少額でも取引を続けておいた方が良いでしょう。
(ちなみに、従業員300名以下、資本金9億円以下の企業しか信用金庫の融資を受ける事ができません。)
地銀の時には第二地銀も
このように地銀と信用金庫と付き合い始める場合、地銀と付き合うならば第二地銀とも付き合った方が良いと考えられます。
信用金庫より地銀の方が低い金利で多額の融資を実行してくれる可能性が高いのですが、第二地銀も地銀以上に低い金利で融資してくれる可能性があるからです。
バブルの頃ならともかく現代は銀行も倒産しかねない時代ですので、銀行も生き残りの為に融資合戦をしています。
地銀と第二地銀は地域での生き残りをかけて融資合戦をしていますので、メインバンクはどちらかに絞る必要がありますが、
地銀と第二地銀の両方を取引先に入れる事によって自然と銀行同士で自社への融資を争う環境が構築されます。
なお、この位の規模になって自社が積極的に相見積を取らなくても、自社への融資を巡って銀行同士が条件合戦を行うようになった時に検討するべきなのが、担保や保証人を外す事です。
銀行は確実に返済してくれそうな格付けの高い企業に対しては積極的に融資を行いますので、多少金利や条件を悪くしてでも融資を獲得したいと思うでしょう。
競合の銀行がメインバンクになる機会を虎視眈々と伺っているなら尚更です。
ただし、あくまでも銀行を立てた上で交渉を行う必要があります。
このように企業規模に合わせて銀行との取引で気をつけることについて説明してきましたが、メガバンクとの取引についても補足します。
メガバンクとの取引は?
基本的にほとんどの企業はメガバンクから融資を受ける必要はありません。
確かにメガバンクのプロパー融資は金利が低くて魅力的ですが、自社が全国や世界でサービスを展開している大企業でなければ、メガバンクの融資規模は大きすぎる場合がほとんどです。
また、銀行が資金を引くタイミングも早いため安易にメガバンクから融資を受ければ返済計画に混乱をきたしかねません。
BtoCでユーザーから銀行振り込みをしてもらうような通販会社の場合、ユーザーの支払手数料や信用度の関係で大手銀行に口座を持っておくべきですが、
運転資金や設備資金の調達は地銀から行えば十分です。
銀行が融資したくなる条件
銀行と交渉する際には上記の事を踏まえた上で、銀行に融資をしたいと思わせる必要があります。
銀行が融資をしたいと思う会社とはつまり貸したお金をきちんと返済してくれそうな会社です。
銀行にきちんと返済してくれそうと思わせる為には、
が明確であるという3点を整えておく必要があります。
銀行の格付けが上位である事
一点目の銀行の格付けが上位であるということはすなわち銀行員に自社の事業内容をしっかり把握、取引実績があって信頼してもらった上で、財務諸表を銀行が見た時に、
・資本が厚くて会社の基盤が安定している
・事業に成長性と収益性がある
・融資したお金を返済する能力がある
と判断できるような経営を行っているという事です。
この様な条件を満たすと銀行の格付けが高くなりますので、銀行の担当営業員も融資の稟議を通すのが楽になります。
資金繰りについて会社が管理できている
二点目の資金繰りについて会社が管理できているということですがすなわち資金繰り表を作成して経営陣が資金繰りの状況をしっかり把握しているかと言う事です。
例えば、「理由は分からないけれど資金繰りが悪化しているので融資をして欲しい」という企業に対して銀行は慎重になります。
仮に融資を行っても資金繰りが悪化している原因が分からなければ、また融資を使い果たして資金繰りが悪化し、最終的に貸し倒れが発生する可能性があります。
このような理由から銀行に融資をお願いする前提として経営陣が資金繰りの状態を把握している必要があります。
貸したお金が経営計画という形で何に使ってどのような成果をあげようとしているか
三点目の貸したお金が経営計画という形で何に使ってどのような成果をあげようとしているかが明確であるということですが、
銀行の立場からすれば格付けが低い企業に対して何に使うか分からない融資を行うのは怖くてできません。
良くわからない用途にお金が浪費されて、融資が回収できない可能性があるからです。
格付けが低い企業は融資を何に使うのか事業計画という形で明確化する必要があります。
事業計画として融資したお金の使い道が説明されているならば銀行側としても融資の是非が判断しやすいため、担当営業員も融資の稟議があげやすくなります。
最期に
銀行との融資交渉の条件・コツについて説明してきましたが、最初にもお伝えの通り、銀行と事業者は対立する立場ではありません。
協力関係にあるという認識で、自社に不利にならないよう上手に付き合いましょう。
銀行は、信用金庫、地方銀行、都市銀行の順番に面倒見が良いのでこの順番で開拓する必要があります。
まず信用金庫から資金調達を行い、ある程度規模が大きくなれば地銀との付き合いが始まり、
地銀と第二地銀が自社に対して融資合戦を行うような環境が整えば保証や担保を外す交渉する環境ができたと言えます。
なお、都市銀行は融資金額が多く、利子も安いのですがよっぽどの大企業でない限り取引する必要はなく、地銀や信用金庫との関係構築に尽力した方が良いでしょう。
なお、このようなスタンスで交渉した上で、銀行が融資したくなるポイントを抑える必要があるのですが、
銀行側が融資したくするためには、銀行内での自社の格付けを高めた上で、資金繰りをきちんと把握している事をアピールし、
融資を受けた際の使い道を事業計画という形で明確化しておく必要があります。
いかがでしたでしょうか?
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