最終更新日:2021年11月16日
Mentor Capitalです。
今回は、銀行が行う貸し剥がしについて解説したいと思います。
社会性や公益性が高いことから公的機関のような印象を受けがちな銀行ですが、メガバンク・都市銀行・地方銀行など事業規模の大小に関わらず全ての民間銀行は利益を追求する私企業です。
取扱う商品がお金であるだけで一般的な企業と何ら変わることなく営利目的で運営されるため、時には利用者にとって不利益が生じることでさえも自行の利益のために行います。
銀行の貸し剥がしについて考えます。
【銀行の貸し剥がしとは?】
「貸し渋り」や「貸し剥がし」という言葉を見聞きした経験がある方は少なくないのではないでしょうか?
会社が倒産に追い込まれるケースも少なくない貸し渋りや貸し剥がしに対して「銀行から受けた融資の返済が滞った結果では?」と
考える方もいるかも知れませんが貸し剥がしは返済が滞った融資の引き揚げではありません。
金融機関が融資残高を減らし自己資本率を向上させることで自行の経営安定を目的に行われるのが貸し渋りや貸し剥がしです。
貸し渋りや貸し剥がしによって資金調達計画が大きく狂い倒産に至る会社も決して少なくないのが事実です。
審査基準を通過する案件に対しても融資を行わない貸し渋りとは?
銀行に対して融資を依頼しても審査と呼ばれる銀行が行う与信調査に通過できない場合は融資を受けることができません。
業績が順調で現在受けている融資の返済を滞ることなく行う会社などでも追加融資を依頼した際などに融資を断られるのが貸し渋りです。
事業運営に全く問題がなく銀行との関係も良好であったとしても、社会的な不景気の際などは融資の未回収リスクが上がるため銀行は融資を控えます。
取引銀行のノルマ達成のために協力したり、銀行の担当営業から融資を持ちかけられた事業拡張計画用の事業資金の資金調達であったりと様々な事情があっても、銀行の融資不可の決定は覆りません。
資金繰りに困ったタイミングで融資の返済を迫る貸し剥がしとは?
大口の取引先の経営が傾いた影響で資金繰りに困ると運転資金の調達が必要となるものですが、
融資の依頼に対して貸し渋られた上に現在受けている融資に対して返済期限前の返済を迫られるのが貸し剥がしです。
本来受けた融資は期限が来るまでは債務の履行を行わなくても良い債務者の利益である「期限の利益」で守られています。
しかし融資契約の際に結んだ契約には債務者が契約書の記載内容に反した場合は期限の利益が喪失し、金融機関は強制的に一括返済を求められる「期限の利益の喪失」が盛り込まれています。
一般的に期限の利益が喪失するのは次に挙げる契約違反が債務者にあった場合です。
・返済の滞納が発生した場合
・契約書の記載内容に違反や虚偽があった場合
・債務者が破産手続や民事再生手続などを開始した場合
・債務者に対して保全処分や強制執行などが行われた場合
上記の契約違反が確認された場合は融資を引き揚げられますがこれは貸し剥がしとは呼ばれません。
契約違反の事実がないにも関わらず返済期限前の一括返済を迫るのが貸し剥がしです。
既述した貸し渋りと貸し剥がしを行う銀行を揶揄する言葉に「雨の日に傘を取り上げ晴れた日に傘を貸す」がある通り、
貸し渋りや貸し剥がしにはひどい仕打ちを受けたと感じる経営者たちの銀行に対する不満がこめられていると言えるでしょう。
【何故銀行は貸し渋りや貸し剥がしを行うのか?】
利用者にとって必要な時に融資をしてくれない銀行は、魅力を感じない金融機関だと言えるでしょう。
自行の経営安定を目的に行われるのが貸し渋りや貸し剥がしだと紹介しましたが、行った融資の利息で利益を得る銀行が融資に対して消極的になるのには理由があるはずです。
銀行が融資に対して貸し渋る理由とは?
社会的な不景気を理由に銀行が融資に対して消極的になると既述しましたが、回収リスクが高い融資は行えないというのが銀行側の理由の1つであることは間違いないようです。
また銀行は融資を行った会社を債権者区分で分類し貸倒引当金を積み立てます。貸倒引当金は通常取引で融資金額の5%ですが要注意先の場合は融資金額の50%を積み立てます。
貸倒引当金は銀行にとって負債となり銀行の収益を圧迫することから貸倒引当金を抑えるために貸し渋りが行われるとも考えられます。
銀行が融資を返済期限前に一括返済を求める貸し剥がしを行う理由とは?
融資を行った会社が資金繰りに追われる状況を銀行が察知すると、銀行の本行から融資の一括回収の指示が出されます。
融資を行った会社に運転資金が残っている限り融資の回収を行えると考え、返済期限前であるにも関わらず一括返済を求められるのが貸し剥がしです。
また既述した貸倒引当金の存在が銀行の貸し剥がしの理由の1つになっている可能性も考えられます。
銀行にとって負債でしかない貸倒引当金は融資が完済されれば切り崩され銀行にとっては収入が発生することになります。
債権者区分で要注意先となる資金繰りに頭を抱えている会社から融資を一括回収することは、貸倒引当金からより高い還元率で収入が発生することになります。
キャッシュフローが健全で安全な会社に対しては融資を行い、資金繰りにあえぐ会社からは融資を引き揚げることで
貸倒引当金からの収入が期待できるのが銀行が貸し剥がしを行うもう1つの理由だと考えられます。
【銀行の行う貸し渋りや貸し剥がしの被害に遭わない方法とは?】
資金調達手段として銀行からの融資は心強い存在であるものの、貸し渋りや貸し剥がしを行われると事業運営計画の歯車が大きく狂ってしまいます。
絶対的な効果が期待できるものではありませんが、銀行の行う貸し渋りや貸し剥がしに対しての対抗策を紹介します。
銀行の行う貸し渋りに対する対抗策とは?
銀行からの融資を予定して行った資金繰りも肝心の銀行が貸し渋りを行うと資金調達計画を初めからやり直すことになり、
事業運営に悪影響を及ぼしますので貸し渋りに対抗する油断を準備する必要があります。
公的機関である信用保証協会の保証が付く制度融資であれば万が一融資の回収が不能となった場合でも未回収分の融資を信用保証協会が代位弁済(返済)してくれるので銀行も貸し渋りを行いません。
貸し渋りで資金調達計画が狂わされることがなくなります。
銀行が行う貸し剥がしに対する対抗措置とは?
資金繰りにあえいでいるタイミングで融資の一括返済を求めてくる銀行は会社にとっての死刑執行人にもなりかねませんから、貸し剥がしに対する対抗策を持っておくことが重要です。
銀行から受けた融資を契約内容通りに返済している場合は仮に銀行から一括返済を求められても応じる義務がないことをまず知っておくべきだと言えます。
貸し剥がしに応じるケースでも取引先の動向を銀行よりも先に掴んでおくことで、
貸し剥がしを受けた際の返済額を別のルートからの融資で賄えますので取引先の動向に対する情報収集を怠らないようにして下さい。
また銀行には金融円滑化と呼ばれる、行った融資に対する返済支援に努める義務があります。
金融円滑化の中で理由のない貸し渋りや無理な貸し剥がしは禁止されていますので、金融円滑化を盾に金融庁への相談などを行うのも良いでしょう。
しかし融資に対する貸し渋りの際には金融円滑化を謳うことが「返済能力のない融資依頼者」と囚われかねませんから貸し剥がしの対抗策として持ち出すのが得策だと考えられます。
【最後に】
銀行は事業運営を行ううえで有効な資金調達先として期待できる企業です。
できるだけ良好な関係を保ちたいものですが、銀行から不当な貸し渋りや貸し剥がしの圧力を受けた際には金融庁の「金融サービス利用者相談室」に相談してみるのも良いでしょう。
しかし銀行以外の資金調達手段の情報を収集しておくことが経営者には求められているのかもしれません。
いかがでしたでしょうか?
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