最終更新日:2024年07月31日
Mentor Capitalです。
今回は「約束手形」について解説したいと思います。
約束手形とは、振出人が、一定の期日に一定の金額を受取人や指図人に対し、支払うことを約束するものです。
これは有価証券として扱われます。
約手(やくて)とも言われます。
この約束手形は現金や小切手の様に支払いの時に使用するものです。
手形と小切手の違いは換金できるタイミングにあります。
小切手を相手に渡せば、相手は銀行にその小切手を持っていけばすぐに現金化できますが、手形は決められた期日にならなければ銀行に持参しても現金化できないのです。
つまり、支払期日が決められた小切手のようなものと理解することができます。
企業同士の決算手段について約束手形によって支払いをする事があります。
この約束手形を使えるようになる為には銀行に当座預金口座を持つ必要があります。
現在はクレジットカードなどの代替的な決済手段が発達していますので、新興の企業の場合は約束手形を使っていないという場合も多いかもしれません。
しかし、業界によっては手形による決済が今でも一般的となっている場合もありますので、
ここでは初心者に対して約束手形とはどのようなものか?約束手形を利用する、メリットとデメリットについて説明します。
目次
手形とひとくくりに言っても、手形には約束手形と為替手形の2種類あります。
約束手形は2社間の手形になります。 世の中で一般的にいわれている「手形」のほとんどはこの約束手形と考えてよいでしょう。
なお、特殊なパターンとして為替手形というものがあり、これはお金の支払いを3社間で行う手形で、振出人が手形を発行して、
指図人(手形の代金の支払いをする人)が名宛人に対して一定期日に一定金額を支払う手形です。
約束手形の金額には大小ありますが、支払期日については1か月から4か月程度の期間を設けているのが一般的です。
また、これ以上支払期日の長い手形もあり、10か月のモノはお産手形、1年のモノは七夕手形という風に呼ばれ、入金までのタイミングが長いため、敬遠されます。
受け取る側の立場からすれば約束手形の期日が長いと債権を現金化するまでに時間がかかってしまうからです。
なお、手形を現金化する事はどの法人でも可能ですが、手形を振り出せる法人は限られています。
手形を振り出すためには、銀行に当座預金口座を持つ必要がありますが、当座預金口座を持つ為には銀行の審査を通過する必要があります。
この審査が普通に銀行に口座を持つのよりも厳しいため、どの会社でも当座預金口座を持てるとは限りません。
一般的に、「○○社が不渡りを出した」というニュースが流れますが、この「不渡り」という言葉は約束手形に関する言葉です。
手形は銀行の残高に関わらず、自由な金額の手形を発行する事ができますが、期日が来て取引先が手形を現金化しようとした際に、
振出人の当座預金に残高が無い場合は、手形が現金化されず不渡りとなってしまいます。
なお、この不渡りを半年以内に2回出してしまうと、銀行から取引停止の処分を受けて、当座預金を使用できなくなります。
また、2年間銀行から融資を受けられなくなります。 また、上場企業ならば上場廃止となります。
銀行から融資を受けられなくなると言う事は、資金繰りが悪化する中で不渡りになった場合は、
さらに銀行からの資金調達も不可能になってしまいますので、事実上、その会社は倒産してしまうことになります。
ただし、1回目の不渡りを出した時点で、各銀行にその旨の通知が行き、そのような会社に銀行は融資しないと考えられるので1回でも不渡りを出せば、会社は倒産する可能性が高いと考えられます。
このような理由から資金繰りが厳しい会社は約束手形の振り出しに慎重になるべきだと言えます。
このように書くと何かの手違いによって口座に預金を残していない場合に会社がすぐ倒産するかもしれないと不安を感じるかも知れませんが、そのような事はありません。
前もって銀行に担保を差し出して当座借越契約を結んでおくと、小切手や約束手形が落ちて当座預金がマイナスになった場合も、
あらかじめ決められた融資枠の分だけ自動的に借り入れができますので、簡単には不渡りは出ないような仕組みになっています。
約束手形は12世紀にイタリアで発明されたといわれています。国際貿易において両替商が決済のサポートをしていたのですが、
金銀の流出に厳しい制限が掛けられたことにより通貨による決済ができなくなった両替商が、手形という仕組みを開発したと言われています。
日本でも手形と似た制度が同じくらいの時代にあり、替銭という証書をお金を払って替銭屋に振り出してもらい、
その証書を受取人に送って現地の決められた人に支払ってもらうという為替手形の原型のサービスがありました。
このように日本は日本独自の手形文化が進化していきましたが、現在の手形制度は明治維新によってヨーロッパから輸入した手形制度がベースとなっています。
約束手形は以上のような性質を持つものですが、約束手形を受け取った側から見た時にどのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。
まず、デメリットとしては受け取れるタイミングですが、手形化する事によって会社に現金が入ってくるタイミングが遅くなるというデメリットがあります。
タイミングが遅くなっても受け取る金額が増えるわけではありませんので、受け取る側とすれば手形取引は避けたいものです。
相手の資金繰りが悪くて支払い期日を伸ばせないか打診された場合、単純に期日を伸ばすのではなく、
延長後の期日の小切手を振り出して貰った方が受け取る側としては有利となります。
売掛金よりも約束手形の方が現金化しやすいからです。
売掛金は相手にお金を支払わなければ期日が来ても現金化する事ができませんが、約束手形の場合は、相手の口座に残高がある限り銀行から強制的に現金を受け取る事ができます。
手形が現金化できない不渡りの形は、事実上倒産状態となってしまうため、約束手形の振出人の支払いにかける本気度も変わってきます。
このような理由から売掛金を確実に回収したい場合、売掛金の支払い延長を行うのではなく、約束手形を振り出して貰った方が確実に回収できるという点でメリットと言えます。
また、約束手形を貰うと債権の現金化のバリエーションが広がります。
例えば、ただの債権の場合その債権を現金化しようと思えばファクタリングの様な方法しかありませんが、
一般的にファクタリングの手数料は高いため、債権をファクタリングしようと思えば手数料の分、受取金額が減ります。
なお、手形を現金化する方法として手形割引があります。
手形割引とは、約束手形のファクタリングのようなもので、銀行や専門業者に約束手形を持っていけば期日までの利息を割り引いて前倒しで現金化する事が可能です。
ただし、手形割引の手数料はファクタリングの手数料よりも安いため、期日前に現金化しても大きな影響はありません。
ただし、手形は銀行や業者に譲渡する事になります。また、実質的には同じような効果が発生するのですが、手形を担保として銀行から融資を受けるという方法もあります。
債権の回収については、可能な限り現金や銀行振込によって回収するのがベストですが、取引上やむを得ず取引先の要望を受けざるをえない場合もあります。
そのようなケースで、売掛金として債権を支払期日まで保留するよりも、約束手形を振り出してもらったほうが確実に回収できます。
次に、約束手形を振り出す側から見たメリット・デメリットについて説明します。
約束手形を振り出すメリットとして一番大きいのは、約束手形を振り出す事によって支払い期限を延長できることです。
建設業などの様に実際に仕事を行って経費が支出されていくタイミングと、売上が入金されるタイミングの間にタイムラグがある企業にとっては、
約束手形を振り出す事によって支払いのタイミングをずらすのは資金繰りにおいて重要です。
また、通常の買掛金の支払いと違い、一度手形を振り出すことで期日に受取人が手形を現金化してくれますので支払い忘れを防ぐ事もできます。
また、約束手形を利用した融資というのも存在します。1年以内の短期資金の調達に使用する融資ですが、
手形信用貸付や手形担保貸付と呼ばれるタイプの融資で、約束手形の振出人を自社、指図人を銀行などに設定しておき、その約束手形を担保にする事によって、融資を引き出す融資です。
メリットとしては融資までの実行スピードが早い事ですが、融資までの実行スピードが早い分、返済期間のリスケなどを設定しにくく、
期日までに返済できないと銀行の格付けが大幅に低下してしまうのがリスクです。
この様に約束手形を担保にする事によって融資を引き出せるという事が、約束手形を振り出せることのメリットです。
大前提として、約束手形を振り出しても支払いに猶予が与えられるだけで、いずれ約束手形は現金化されます。
ですので約束手形を発行する事によって資金繰りは良くなりますが、約束手形を振り出しても貸借対照表の状態がよくなるわけではありません。
約束手形を振り出す側のデメリットとして、一部の財務指標は悪くなります。約束手形を振り出すと資産が減らない代わりに、
約束手形の分だけ負債が増えるわけですが、これによって代金を支払ったときよりも自己資本比率が低下してしまいます。
また、債務を買掛金のまま保有しておくよりも、約束手形にすることで、債務者としてはプレッシャーがかかります。
もしも支払期日になって、手形が落ちなければ不渡りを出して会社が実質的に倒産してしまうかもしれないからです。
買掛金は最悪の場合、支払いを督促されて訴訟化しますがそれでも会社を即倒産させる要素にはなりません。
このような事から債務を買掛金のままにしておけるなら、約束手形化はしない方が良いと考えられます。
以上のように、約束手形について説明しました。
手形制度は12世紀にイタリアで誕生した制度で現在の日本の手形制度も明治時代にヨーロッパから輸入した制度がベースとなっています。
手形は約束手形と為替手形にわかれており、約束手形は2社間の決済、為替手形は3社間の決済に使われ、今日使われている多くの手形は約束手形です。
債務者である振出人が約束手形を振り出し、それを債権者である受取人が期日まで待って銀行に約束手形の証書を持って行き現金化するというのが約束手形の仕組みです。
一見したところ小切手と同じように見えますが、小切手の違いは振り出しから支払いまでのタイムラグがある事です。
手形の支払期日の設定は自由ですが、一般的には4か月以内、長くても1年以内で手形の支払期日が来るように設定されています。
なお、手形の支払期日になって受取人が銀行に行って、手形を現金化しようとした時に口座の残高が足りなくて現金ができないことを不渡りといい、
1回でも不渡りを起こすとその後銀行からの融資が期待できないため倒産する確率が極めて高まります。
振出人から見た時の約束手形のメリットは支払期日を延長でき、資金繰りが良くなる事です。
しかし手約束手形を発行する事によって、自己資本比率が下がる可能性があり、手形が期日に落ちなければ不渡りとなってしまいますので、そのまま債権の状態で持っておくよりもリスクが高まります。
買掛金などについて支払期日伸ばしてほしい場合でも、できれば約束手形はさせない方が良いでしょう。
一方で受取人から見た約束手形のメリットは、債権を回収できる可能性が高くなる点です。約束手形は銀行が間に立つことになります。
債務者が支払えない場合は不渡りとなり倒産するかもしれませんので、債務者が支払う確率はただの債権よりも高いと言えます。
また、手形割引や手形を担保にした融資など、手形があるからこそできる資金調達手段も利用できる様になります。
この様に支払い期日が伸びるケースでは受け取る側から考えると約束手形化したほうが良い場合もあります。
いかがでしたでしょうか?
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