最終更新日:2018年09月27日
Mentor Capitalです。
今回は、日本政策金融公庫のデメリットについて解説したいと思います。
みなさんは日本政策金融公庫をご存知でしょうか。
「名前だけは聞いたことがある」
「低金利でお金を貸してくれるところ」
「半分は公的な金融機関でしたよね」
など、多くの方は常識的にある程度のことはご存知かもしれません。
では、どのような貸出制度があって、どのようにしたら利用できるのか、今回はさらに貸出を考える上での注意点もしっかり抑えておきましょう。
代表的な融資制度
まず、代表的な融資制度を具体的に見ていきましょう。
まず、普通貸付というものがあります。
これは読んで字のごとく、普通の貸付です。限度額が4,800万円以内(特定設備資金の場合は7,200万円)で運転資金の場合は5年(特に必要な場合は7年)、
設備資金なら10年、特定設備資金にあてはまれば20年お金を借りることができます。
気になる金利ですが、担保を不要とする融資でかつ基準金利が適用された場合は1.8%~2.4%となっています(H29年7月12日現在)。
これだけ聞くと、利回りがすごくお得というわけでもないかもしれません。ご参考としてご紹介しますと、
三菱UFJ銀行の「極め」という商品だと金利0.4~1.3%(追加で保証協会の保証料が0.3%前後程度かかります)。
プロミスのフリーキャッシュプランだと4.5%~17.8%となっています。
一時的な金利だけで見ればメイン金融機関で、貸し付けをしてもらえるほど信用があるのならば、そちらを利用するほうが有利かもしれません。
(消費者金融はごく短期的に資金調達できるというメリットだけですね。)
ただ、一度日本政策金融公庫から融資をしてもらえれば、さらに低金利でお金を借りられたり、場合によっては月返済額の減額申請も受け付けてくれる場合があり、
その点は、借り手にとって一般の金融機関に比べて有利なように感じます。
また、一般の金融機関では融資ができないと断られた場合でも、融資をしてもらえる可能性があります。(セーフティネットと呼ばれる所以でもあります。)
しかしながら、そのメリットと引き換えにデメリットもありますので、注意しておくべきでしょう。
その注意点について紹介してきます。
1.相談窓口が分かりづらい
そもそも民間の銀行ではないため、「支店が近くにない」「接点がない」など、地方であったらこのような状態から始まります。
最近では、地方金融機関(地方銀行の支店)や税理士事務所、商工会議所などに出張している場合があるものの、
例えば島根県であれば、支点があるのは、松江と浜田のみ、鳥取県でも鳥取と米子というように支店の数がかなり少なくなっています。
「日本政策金融公庫の利用の流れ」HPをご覧いただいても分かる通り、融資制度の相談を事業資金相談ダイヤルにて行った後は、支店窓口に創業計画を提出する必要があります。
この支点の窓口までの距離や、近傍に定期的に出張してもらえる場合はスケジュールを確認しておいたほうがよいでしょう。
都心部であれば、問題のないことであっても、地方であれば、事業説明や融資審査の面接のために移動に何時間も取られるなんてことも発生するかもしれません。
メイン銀行であれば、毎日でも担当者がまわってくるのに、日本政策金融公庫は相談するのも一苦労みたいなことにもなりかねませんので、
利用を検討する以前に現状をしっかりと確認しておきたいですね。
また、日本政策金融公庫との面談に際しては代表者の面談が必要になる場合もあり、代表者が多忙な中小企業の場合、
代表者のスケジュールも調整案件が進むのと同時並行で行う必要があります。
2.借入のために用意する書類が多い
中小企業の場合、まず相談する前に
を用意します。
これは銀行から融資を受ける場合でも同じですが、所定のフォーマット(書き方も紹介されています)がありますので、ご注意願います。
まずこれを一通り記載するのにも一苦労があるかと思います。一期分の数字を埋めるのも、日々の試算表や成績をいかに気にしていたかが浮き出てくることでしょう。
しかも、この時点で、決算書や事業計画書の記載内容を確認するために、過去3期分、将来3期分の業績検討をしておく必要があります。
(個人事業主や小規模法人の場合は必要な決算書が2期分でいい場合もあるようです。)
日本政策金融公庫の融資担当者によっては、面接時のヒアリングを重要視する場合があり、
(創業まもなくで実績がないなどの場合にはさらにですが)資金使途や目的、返済見通しなどを自分の言葉で報告できるようにしておく必要があります。
また、2014年改正により、保証人がいるから融資ができますということがかなり少なくなったようです。
(2014年改正では、無担保、無保証人で融資を実行するように改正されました。
言い換えれば、融資を受ける方当人(当法人)のみの与信によって融資の額が変わるように新規で借り入れる方にはある種、不利になるように改正されております。)
さらに、具体的に話を進めていくと
が必要書類に加わります。
この際に、融資先に対する与信を見極めるために、日本政策金融公庫は追加の資料を請求することができ、会社のお金の流れが分かる預金通帳のコピーなども要求される場合もあるようです。
HPなどで公表されている資料はあくまでも代表的なものだけで、事業計画や、業績見通しを証明するのにさらに必要なものがあればそろえなければいけなくなります。
例えば、法人であれば、「納税証明書」だけで、源泉所得税の納付などを行っているかが証明できなければ、源泉所得税の納付書控えを持ってきてほしいといわれる可能性もあります。
メイン銀行では、提出済みの資料であっても、日本政策金融公庫から融資を受ける場合は一から揃えなおす必要があり、非常に煩雑といえるでしょう。
ここでさらに注意しておきたいのが、揃える書類が多いということは書類を揃えるために時間がかかるということです。
必要な書類を持ってきてください、集めました、さらにこれを持ってきてくださいというやりとりが発生します。
このやり取りも含めて審査に1か月~2か月ほど時間がかかるようです。これはメイン銀行がメガバンクであった場合、おそらくメガバンクからの融資より少し遅いくらいの速さです。
つまり、カードローンや消費者金融よりははるかに遅く、メイン銀行が地方銀行か信用組合であった場合はほぼ同じくらい時間かかかると思われます。
「緊急に今すぐ〇万円欲しいのです」という方向けではなく、ある程度調査が長引く可能性なども勘案したうえで、資金調達の見通しを立てておく必要があります。
3.融資条件が多岐にわたる
先のコラム、必要な書類というところでピンときた方もおられるかもわかりませんが、「納税証明書」が必要になります。
つまり、個人事業主様であれば、過去2期分の所得税を納めている必要があります。
今まで資金繰りがうまくいっていなかったという場合には、先に所得税等の清算・納付を行う必要があります。
一方、メイン金融機関からお金を借りる場合には、必ずしも完納しておく必要はないようです。
主には信用保証協会付きでの融資という形になりますが、1年以内に税金等を完済できると認められれば借りられる場合もあります。
数年かかる場合はすぐに返答を頂けず、実績を確認してからのお取り扱いになる場合もあるようです。
2014年の改正により保証人は基本的には不要となっておりますが、法人の場合は代表者が保証人になる場合があり、
また、実質的な経営者(創業者会長などがいる場合など)がいる場合や事業承継を予定している場合には、保証人が必要になる場合もあるようです。
さらに開業資金等を借りる場合は、必要資金の全額を借りることができない場合があります。
2014年改正により融資金額の10分の1は自己資金で賄うよう指導がされています。
(従前は3分の1自己資金が必要でしたのでずいぶんと緩和されましたが)、結局複数の金融機関から借りなければいけない状況になってしまうと、ありがたみが薄れますよね。
4.日本政策金融公庫からの返済が遅れないように気を付けないといけない
使い勝手の良さを追求したときに、日本政策金融公庫と一般の金融機関からの融資は並行して受けることができます。
ですので、
というメリットがありかつ、一度でも返済が遅れたら、その後は融資してもらえないことがあるというデメリットを回避するために、
日本政策金融公庫への返済を優先し、他社からお金を借りる場合は、被害が広がるのは避けるようにしたいですね。
というのも、極短期であれば、無利息のカードローンなどを賢く使っていくか、場合によっては消費者金融かと思いがちですが、
安易に借りてしまうと利息が払いきれず、借金が増えてしまう結果につながりかねません。
日本政策金融公庫への返済をするために、別の金融機関からお金を借りてしまうと、他の金融機関のほうが、
借りやすさなどの利便性から金利が高い場合が多いことから、全体で見たときに損失が膨らんでしまうことも多いのです。
余計な損失を発生させないように、返済している間も、きっちりとした金銭管理をしていく必要があります。
まとめ
総合的に見返すと、日本政策金融公庫から融資を受けるには、
上記のことが大切になります。
他の借金と同じですね。なので、日本政策金融公庫の厳しい融資条件をクリアし融資を受けるならば、
よほどのことがない限りはメイン銀行よりも書類審査等の条件が厳しく、そのメイン金融機関がメガバンクであったり、
特別キャンペーンをしている金利で融資が受けられる場合にはメイン金融機関から借りるほうが有利になります。
さらに創業者支援の場合には、お金を借りられたとしても、必要な資金を全額調達できないので、
まさに「帯に短し、たすきに長し」状態になってしまう可能性があります。
メイン銀行からどうやったらお金を借りられるか、をきちんと詰めていくほうがメリットが大きい場合もあります。
さらに最近ではVALUやミュージックセキュリティーズを始めとしたクラウドファンディング型の資金調達の手段も出てきています。
つまり銀行や従来の金融機関に頼らないで資金を調達できるようにもなってきているのです。
さらに言えばVALU(個人型のクラウドファンディングサービス)でお金を集金した場合、株式売買のように資金調達できるため、
返済期限を気にしなくてもよいし、場合によっては返済の金利すら気にしなくてもよい(特典約束等がなしで募集の場合)というメリットまであります。
金融の発展が目覚ましい今日であっては、そもそも銀行やら日本政策金融公庫やら、金融庁などからかなり規制の強い業者から借りていくよりも、
視野を広げて本当に自社(自分の事業)の為に必要な形で資金調達をしていくべきです。
かと言って、あんまり親族など近しい間柄の方から資金を調達すると、贈与とみなされたり、
変な課税関係による税金の賦課などがありますのでその点も勘案しながら資金調達をしていく必要があります。
とはいえ、お金を借りられる資金調達先が増えることは法人であっても、個人であっても事業の資金繰りに対してのリスクを大きく減らしていくことにつながります。
その際に検討すべき問題となる、借り入れ可能期間や金利、どのくらいの速度で融資資金を手に入れられるのか(振り込みをしてもらえるのか)という項目を総合的に勘案すると、
実は日本政策金融公庫じゃないとダメという場合は、あまりないのではないでしょうか。
資金調達先の特性を比較しながら賢く使って、事業拡大の糧としていきたいですね。
いかがでしたでしょうか?
何か不明な点等が有れば、お気軽にメンターキャピタルまでお問合せ下さい!!