最終更新日:2021年08月06日
Mentor Capitalです。
事業規模拡大の際の資金調達手段として「金融機関からの融資」と「新規発行株による増資」などの手段が挙げられます。
融資に対しては返済義務が発生するのに対し新たに発行した自社株の販売で資金調達を行う増資には返済義務がなく、経営者にとって増資は魅力的な資金調達手段に映るのではないでしょうか。
しかし増資による資金調達で生じるリスクやデメリットも存在し、増資が最も優れた資金調達手段であるとも言い切れないのも事実です。
資金調達手段として増資を検討する際に掴んでおきたい「資金調達手段としての増資」について解説します。
【増資とは?増資によって行う資金調達とは?】
株式会社が資本金を増額するために自社株を新規発行することを増資と言い、増資は新規発行した自社株を出資者に販売する「有償増資」と、
会社が保有する資本準備金などを振り替え株式を発行する「無償増資」の2つに分類されます。
資金調達を目的とした増資は通常、有償増資で行われるためここでは「増資=有償増資」の前提で解説します。
一般的な資金調達手段である増資と融資の違いとは?
設備資金や運転資金などの事業資金や事業規模拡張のための新規事業の起業資金を得るために、増資や融資は一般的な資金調達手段として行われています。
株主1人1人が会社の持ち主であるため、会社の自己資金として扱われ増資による調達資金は返済の必要がないのに対し、融資による調達資金は他人資本の借入れであるため返済義務が生じます。
増資による資金調達の募り方は?
新規発行した自社株の対価として資金調達を行う有償増資は「募集株式の発行」と呼ばれ、公募増資・株主割当増資・第三者割当増資の3つの方法に分類されます。
・公募増資
上場企業が株式市場で不特定多数の一般投資家からの投資を募る方法です。自社株が未公開の会社では通常行われません。
・株主割当増資
既に発行済みの自社株を保有する株主に対して、持ち株割合に応じた新規株を割り当てる形で発行します。株主の数が少なく株主の増加を望まない会社で用いられます。
・第三者割当増資
取引先・役員・従業員など事業運営に関係する会社や個人に対して新規株を発行し資金調達を行います。主に中小企業の資金調達手段として用いられます。
増資による資金調達の流れとは?
上記のいずれの方法で増資による資金調達を行う場合でも、新規株式発行による資金調達は一般的には次の流れで行われます。
1. 増資額・募集方法・振込日時などの募集事項を株主総会で決定する。
2. 投資家に対して募集事項を通知する。
3. 投資家からの申し込みを受け付ける。
4. 投資家が会社の指定口座に出資の履行を行う。
5. 振込期間最終日から2週間以内に会社が募集株式発行の登記申請を行う。
6. 登記手続き完了後、株主名簿の更新が行われ株主名簿に目名義が記載され株主の権利が保全される。
【増資による資金調達を行うことのメリットやデメリットとは?】
増資は株式会社にとって魅力ある資金調達手段の1つだと考えられます。
しかし会社が株主の持ちものとなる株式会社のシステムでは、増資による資金調達にはメリットとデメリットが共存していると言えるでしょう。
増資による資金調達のメリットとは?
増資による資金調達には「返済の必要がない」という非常に大きなメリットが存在しますが、それ以外にも以下のメリットがあると考えられます。
・負債を増やすことなく資本金増加が行える
仮に融資で資金調達を行っても、他人資本には返済義務が生じるため増加した資金が減少することが決まっています。
融資の資金調達には返済がキャッシュフローの悪化に繋がり業績に悪影響を与える可能性が潜んでいると考えられますが、
増資であれば確実な財務基盤の強化を行えるのがメリットの1つです。
・社会的信用の向上が期待できる
出資者である投資家にとって返済の必要がない出資は、回収不能リスクの高い金融商品となります。
投資家は株式購入で得られる配当や、株価の値上がりで得られる売却益を見込んで投資を行います。
こうした投資家からの投資を受けるだけの価値がある会社として、社会的信用の向上が期待できるのもメリットだと言えるでしょう。
・株主の参加意識で事業運営のサポートが期待できる
新規発行の自社株が一般投資家以外のベンチャーキャピタルなどに購入されると、これらの出資者から出資以外の面で力強いサポートを得られる可能性が期待できます。
また第三者割当で得意先や仕入れ先などの取引先や役員や従業員から出資を募ることで、
取引先からの事業運営への協力や役員・従業員のモチベーションの向上が見込まれるのもメリットだと言えるでしょう。
増資による資金調達のデメリットとは?
増資の際には法務局への登記申請や税務署・都道府県税事務所・市町村などへの各種提出が必要となり、
手続きに時間がかかる上に登録免許税や司法書士・行政書士・税理士などへの報酬も発生します。
また増資で資金調達を行うことで配当金が増額することをデメリットに感じる経営者の方もいるでしょう。
さらに増資による資金調達には以下のようなデメリットや注意点が存在します。
・事業運営の自主性が損なわれるリスクがある
株式会社では持ち株割合が高いほど行使できる権利が増加します。
増資によって株主の持ち株割合のバランスが損なわれると、増資以前の事業運営よりも事業運営に対する干渉が増え自主性を保てなくなるリスクがあります。
・新規発行株の発行価格の設定が難しい
新規発行を行う株価には適正な価格設定が求められます。
適正価格より安価で発行すると新規株を購入した株主が受贈益や寄付金課税の対象となるケースがあるので、株価の設定は税理士と相談しながら慎重に行う必要があります。
・増資後の資本金額によっては納税額が変わる
増資後の資本金が1億円を超過した場合は中小企業向けの優遇措置の適用から外れ、年間800万円以下の所得に対する法人税率が15%から25.5%に引き上げられます。
また30万円未満の少額減価償却資産の特例や交際費の定額控除措置が適用されなくなります。
また設備投資に対する税額控除・特別償却が認められなくなるうえに、事業税の外形標準課税の対象として赤字でも一定の事業税が生じることもあります。
・起業直後の消費税免除が取り消される
資本金1,000万円未満の会社は設立後第1期・第2期の消費税の納税義務が発生しませんが、増資により資本金が1,000万円を超過すると納税義務が発生します。
【資金調達手段としての増資は増資額とタイミングを慎重に検討すべき!】
業績が好調で資金調達を行い事業拡張を予定する方にとって、増資による資金調達は運営事業の成長を感じられる魅力的な資金調達手段ではないかと考えられます。
しかし増資を行うことで発生するデメリットや注意点は決して看過できるものではなく、せっかく順調に行っている事業運営の躓きになりかねないリスクを秘めているとも考えられます。
現在の事業規模と事業鵜拡張後の事業規模の差を埋め合わせるだけの事業資金調達は絶対に必要なものですが、
増資による資金調達を行う際には増資額と増資のタイミングを慎重に検討したうえで決定するべきだと言えるでしょう。
【最後に】
増資による資本金の増額は事業を運営する事業家であれば「いつかは!」と夢見る存在ではないでしょうか。
しかしファクタリングなどの資金調達手段も登場し資本のオフバランス化の推進が叫ばれる現在は、増資による資金調達を行うことなく事業資金の調達が可能な時代だとも言えます。
特に起業後間もない会社に対する公的融資の充実などから、増資による資金調達にこだわる必要性は低下したとも考えられます。
事業資金調達が事業運営に欠かせないことには変わりがありませんので、増資以外の様々な資金調達手段の情報を収集した上で検討を行うことをおすすめします。
いかがでしたでしょうか?
何か不明な点等が有れば、お気軽にメンターキャピタルまでお問合せ下さい!!