最終更新日:2020年06月22日
Mentor Capitalです。
開業時に必要となる設備資金や運転資金などの開業資金は「自己資金で賄うべき」だと言われていますが、全てを自己資金で賄うことは難しく開業資金の調達は頭の痛い問題です。
事業性資金の調達先として一般的な銀行・信用金庫・公的融資で開業資金調達先として効果的な金融機関や融資制度について考えます。
融資を利用した開業資金調達は現実的であるのか?
開業後の一般的な事業性資金の調達先として銀行・信用金庫・公的融資などが挙げられます。
代表的な民間金融機関である銀行は融資審査の際に業歴や事業実績を重視するため、業歴・事業実績が存在しない開業資金融資に対しては極めて慎重で消極的であるのが現状です。
地域密着型の運営スタイルで積極的に事業性資金の融資を行う信用金庫は開業資金融資も行っていると言われますが、
実は公的機関である信用保証協会の保証付融資限定で開業融資を行っているのが実情です。
つまり民間銀行や信用金庫からプロパー融資で開業資金を調達することは事実上不可能であると考えられますが、
信用保証協会の保証付融資を利用することで開業資金調達実現の可能性が無い訳ではありません。
信用保証協会の保証付き融資とは?
信用保証協会は中小・零細企業や個人事業主が銀行や信用金庫などの民間金融機関から融資を受ける際に保証人として金融機関に対して返済の保証を行う公的機関で各都道府県に設置されています。
保証付融資は債務者が返済不能に陥った場合でも金融機関に対して保証協会が代位弁済を行い保証する制度ですが、
通常保証付融資は融資額の80%を信用保証協会が保証し20%は融資を行う金融機関がリスクを負います。
しかし、開業資金の場合は保証協会が100%の保証を行うため金融機関にとってはノーリスクで利息収入を得られる魅力的な制度だと言えます。
信用保証協会の保証を受けると保証料が発生しますが、信用保証協会の保証が付くことで審査のハードルが下がるメリットがあるため魅力的な制度だと言えるでしょう。
金融機関・借入希望者の双方にメリットがある保証付開業資金融資ですが、煩雑な手続きが必要なこともあり民間銀行大手や一部の信用金庫では取扱いを行っていないケースも存在しますので、
融資を依頼する金融機関が保証付融資の取扱いを行っているかを事前に確認しておく必要があります。
信用保証付融資の代位弁済は返済の免責を意味するものではない
保証付融資で開業資金の借入を行った債務者が返済不能に陥った場合、金融機関に対して信用保証協会が返済残金の代位弁済を行います。
しかし代位弁済が行われると債権は金融機関から信用保証協会に移り債務者は保証協会に対して返済義務が生じます。
代位弁済が行われることは金融機関にとって大きなメリットであるものの、債務者に対しては基本的に一括返済が求められるという恐ろしい一面もあります。
実際は毎月返済可能な金額を保証協会と協議し、金融機関で設定した返済額よりも負担の少ない額に減額することも可能です。
つまり保証付融資は仮に代位弁済が行われた場合でも、融資を受けた債務者の支払い責任が免責されるものではなく、
税金を原資として行われる代位弁済に対する支払い責任が新たに発生するということになります。
保証付融資と並んで行政が融資をバックアップしてくれる制度融資
既に紹介した信用保証協会の保証付融資は一般的に制度融資と呼ばれますが、
制度融資は保証協会の保証付融資だけではなく都道府県・市区町村などの自治体が創業支援として実施しているものも存在します。
行政は次に挙げる4つの制度融資で開業資金融資をバックアップしています。
自治体自体が事業者に直接融資を行うものではなく、指定金融機関に融資資金となる預託金を自治体が支払い信用保証協会が返済の保証を行うことで低金利での融資や融資審査のハードルを下げています。
自治体によって採用する開業資金に対する制度融資は異なるため、居住又は開業所在地を管轄する自治体の公式サイトや相談窓口などで具体的な制度融資の内容を確認する必要があります。
自治体の制度融資は利便性に問題がある?
公的支援である制度融資は自治体が信用保証協会・指定金融機関と連携し開業資金のバックアップを行うケースが多く、
低金利ではあるものの保証料補助があるものの保証協会の保証料が発生すると考えるべきでしょう。
保証付融資を利用する場合、保証協会の保証審査と民間金融機関の融資審査の2つを通過する必要があるため、審査期間が長期化する傾向があり迅速な資金調達を望むケースには対応できないと言えます。
また全ての利用申込に対して融資が行われるものではなく、審査に通過できず融資が見送られるケースも存在するため利便性が高い資金調達手段だと言い難いのも事実です。
事業性資金を幅広く融資する公的融資は開業資金の効果的な資金調達先
開業資金調達に銀行や信用金庫からのプロパー融資を利用することが現実的でなく、
民間金融機関は信用保証協会の保証付融資や行政が融資をバックアップする制度融資を利用することで開業資金調達先として機能することは既に紹介しました。
銀行や信用金庫などの民間金融機関と共に有力な事業性資金の調達先として広く利用されているのが公的融資と呼ばれるもので、全国の商工会議所が窓口となり事業性資金の融資を取り扱っています。
商工会議所で取り扱われる事業性資金融資には公的融資と制度融資が存在する
商工会議所の取り扱う融資の中心となるのが公的融資である「マル経融資」です。
審査基準が緩く低金利で融資を受けられる魅力的な融資制度で商工会議所の経営指導を受けていれば審査を通過できると言われています。
しかし、マル経融資の利用条件として原則商工会議所の経営指導歴1年以上であることが挙げられるため、
残念ながら開業資金の調達に商工会議所の公的融資を利用することはできませんが、開業後に利用価値が高い融資制度ですから覚えておくと良いでしょう。
マル経融資は商工会議所が国から委託されて行う融資制度で実際に融資を行うのは日本政策金融公庫です。
公的金融機関である日本政策金融公庫については後で紹介します。
商工会議所によっては信用保証協会・民間金融機関と連携し制度融資を取り扱っているケースもあります。
日本最大の商工会議所である東京商工会議所では「創業支援融資保証制度」で開業資金の支援を行っています。
創業支援融資保証制度を利用するためには信用保証協会の審査を通過する必要がありますが、
審査時に東京商工会議所が開催する創業ゼミナールの修了証取得者や創業計画審査会で認定された創業計画は加点要素として有利に働きます。
東京商工会議所以外でも創業支援融資保証制度に類似する融資制度が提供されているケースもあるので、最寄りの商工会議所に確認してみて下さい。
様々な公的融資を提供する日本政策金融公庫
商工会議所では公的融資を取り扱っているものの、実際に融資を行うのは日本政策金融公庫であることは前項でふれました。
日本政策金融公庫は、株式会社として運営されていますが政府が株主であることから国営企業として扱われ公的金融機関に分類されると言えるでしょう。
公的機関である信用保証協会が返済に対する保証を行うのに対し、日本政策金融公庫は実際に事業性資金の融資を行い資金調達を支援します。
民間金融機関からの融資を受けることが困難である開業資金に対する融資も積極的に行い、
中小・零細企業や個人事業主の開業を支援していることから融資による開業資金調達を希望する方にとって非常に心強い存在だと言えるでしょう。
日本政策金融公庫は取り扱う開業資金融資制度が豊富!
日本政策金融公庫の融資制度は次に挙げる3つに大別されます。
一般的に開業資金として利用されるのは国民生活事業と中小企業事業ですので、それぞれの事業の開業資金融資制度を確認してみます。
国民生活事業で利用できる開業資金融資
国民生活事業では新企業育成貸付として次の4つの融資制度が用意されています。
融資制度 | 利用条件 | 融資限度額 | 融資期間 (据置期間) |
新規開業資金 | 新たに事業を始める又は事業開始後概ね7年以内であること | 設備資金:7,200万円 運転資金:4,800万円 |
設備資金:20年以内(2年以内) 運転資金: 7年以内(2年以内) |
女性・若者・シニア起業家資金 | 女性・35歳未満の若者・55歳以上のシニアで新たに事業を始める又は事業開始後概ね7年以内であること | 設備資金:7,200万円 運転資金:4,800万円 |
設備資金:20年以内(2年以内) 運転資金: 7年以内(2年以内) |
再挑戦支援資金(再チャレンジ支援融資) | 廃業歴等一定の要件に該当し新たに事業を始める又は事業開始後概ね7年以内であること | 設備資金:7,200万円 運転資金:4,800万円 |
設備資金:20年以内(2年以内) 運転資金: 7年以内(2年以内) |
新事業活動促進資金 | 経営多角化や事業転換などによる第二創業を計画していること | 設備資金:7,200万円 運転資金:4,800万円 |
設備資金:20年以内(2年以内) 運転資金: 7年以内(2年以内) |
中小企業経営力強化資金 | 新事業分野の開拓のために事業計画をたて外部専門家(認定経営革新等支援機関)の指導や助言を受けていること | 設備資金:7,200万円 運転資金:4,800万円 |
設備資金:20年以内(2年以内) 運転資金: 7年以内(2年以内) |
またその他の融資制度として新創業融資制度が利用可能です。新創業融資制度の概要は次の通りです。
中小企業事業で利用できる開業資金融資
中小企業事業でも新企業育成貸付として国民生活事業同様の融資制度が用意されていますが、制度によっては利用条件が異なり融資限度額や融資機関も大きく異なります。
融資制度 | 利用条件 | 融資限度額 | 融資期間 (据置期間) |
新規開業資金 | 新たに事業を始める又は事業開始後概ね7年以内であること | 6億円 | 設備資金:20年以内(5年以内) 運転資金: 7年以内(2年以内) |
女性・若者・シニア起業家資金 | 女性・35歳未満の若者・55歳以上のシニアで新たに事業を始める又は事業開始後概ね7年以内であること | 設備資金:7億2,000万円 運転資金:2億5,000万円 |
設備資金:20年以内(2年以内) 運転資金: 7年以内(2年以内) |
再挑戦支援資金(再チャレンジ支援融資) | 廃業歴等一定の要件に該当し新たに事業を始める又は事業開始後概ね7年以内であること | 設備資金:7億2,000万円 運転資金:2億5,000万円 |
設備資金:20年以内(2年以内) 運転資金: 7年以内(2年以内) |
新事業活動促進資金 | 「経営革新計画」や「新連携計画」の認定を受けたプロジェクトであること。 経営多角化、事業転換などで第二創業又は新たな取り組みなどを図ることなど | 設備資金:7億2,000万円 運転資金:2億5,000万円 |
設備資金:20年以内(2年以内) 運転資金: 7年以内(2年以内) |
中小企業経営力強化資金 | 外部専門家の指導や助言、又は「中小企業の会計に関する基本要領」などの適用で経営力の強化を図っていること | 設備資金:7億2,000万円 運転資金:2億5,000万円 |
設備資金:20年以内(2年以内) 運転資金: 7年以内(2年以内) |
国民生活事業の新規開業資金と新創業融資制度は似て非なる融資制度
国民生活事業で用意されている開業資金融資制度の中で新規開業資金と新創業融資制度は非常に類似した制度であるものの次に挙げる大きな違いが存在します。
つまり新創業融資制度は創業後に事業運営に失敗し債務者が返済不能に陥った場合は返済義務が発生しない驚きの融資制度であるのが特徴です。
しかし新創業融資制度は審査基準が厳しく設定されており、具体的で綿密な事業計画を作成し提出することが求められると同時に希望融資額の1/10以上の自己資金が求められます。
仮に新創業融資制度で2,000万円の開業資金融資を希望する場合は200万円以上の自己資金が必要となるため自己資金なしの状態で融資制度を利用して開業資金を賄うことは不可能となっています。
しかし日本政策金融公庫の融資制度の中でも万一の際に返済義務が生じないものは新創業融資制度だけですので、
自己資金と綿密な事業計画を作れば新創業融資制度は非常に利用価値の高い融資制度だと言えるでしょう。
結論として日本政策金融公庫が最も効果的な開業資金調達先だと考えられ、
数多い融資制度の中でも新創業融資制度を利用することができるような事業計画書と自己資金を用意することを強くおすすめします。
いかがでしたでしょうか?
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