借入金での運転資金の資金調達は有効か?効果的な借入金返済期間とは?
最終更新日:2019年01月28日
Mentor Capitalです。
今回は借入金について解説したいと思います。
事業運営を行うなかで、運転資金の資金繰りに奔走した経験がある方が大多数ではないでしょうか。
事業運営に関わる事業資金の中でも運転資金は生物で言う血液のような機能を果たし、血液不足が生物を死に至らしめるように運転資金の枯渇は企業生命に関わる重大な問題です。
運転資金の調達手段として、金融機関からの融資が広く利用され運転資金を借入金で賄う会社は非常に多く見られます。
しかし借入金での運転資金の補填後、借入金返済で結果的にはキャッシュフローの悪化を招くケースも少なくありません。
企業生命を左右する非常に重要な存在である、「運転資金と借入金」の関係について考えます。
【企業生命を左右する非常に重要な存在の運転資金とは?】
事業資金は設備資金と運転資金に大別され、設備資金は事業運営の基地となるオフィスや生産拠点となる工場の建設や借入れ、
オフィスのパソコンや工場の設備機械などの購入資金で、会社の資産の調達資金だと言えるでしょう。
一方運転資金は事業運営で必要となる流動性の高い手持ち資金、つまり現金を指します。
未回収の売掛金や現金化期日前の手形などは会社の資産ですが、運転資金には該当しません。
一般的に運転資金を売掛債権や、手形債権などを現金化するまでの支払い用の資金と捉える傾向があります。
しかし運転資金は適用範囲が広く借入金で資金調達を計画する会社に対し金融機関では運転資金の使用用途を確認し審査します。
設備資金よりも運転資金は適用される範囲が広い?
使用範囲が限定的な設備資金に対し運転資金設は適用範囲が広いのが特徴で、運転資金の資金調達先として利用される金融機関では運転資金を次の4つの項目に分類し区別しています。
・経常(通常)運転資金
買掛金や手形決済・人件費や家賃、光熱費など事業運営で発生する支出に備えるのが経常(通常)運転資金で最も適用範囲が広い運転資金です。
・増加運転資金
急激な業績成長や事業規模拡大などで未回収の売掛金や手形資金化までの支払いが増加し、
資金化と支払いのタイムラグを埋める繋ぎ資金としての運転資金が不足した際に必要となるのが増加運転資金です。
黒字倒産のリスク回避に必要となる運転資金です。
・減少運転資金
売上規模の縮小で支払いが困難となった際に必要となるのが減少運転資金で増加運転資金のように建設的なものではない運転資金です。
減少運転資金が必要となる場合はキャッシュフローの健全化のために、業績の立て直しや経費削減などの対策を早急に行う必要があります。
・季節運転資金
社員のボーナスやシーズン商品の仕入れなど、定期的に発生する支払いに対する運転資金です。
季節運転資金は短期間で返済するべきで、借入金の返済機関が長引くとキャッシュフローが悪化し事業運営に支障をきたす可能性があります。
【運転資金はどのような手段で資金調達を行うことができるか?】
事業運営の継続に欠かせない運転資金の不足が予想される場合は、速やかに資金調達を行う必要があります。
資金調達は次に挙げる3つの調達手段に分けることができます。
- アセットファイナンス
- デッドファイナンス
- エクイティファイナンス
アセッドファイナンスは会社の保有資産を資金に置き換える資金調達手段で、資産価値が認められる有形資産や無形資産を売却し資金調達を行います。
資産のオフバランス化も行える資金調達手段として注目される「ファクタリング」もアセッドファイナンスの1つです。
デッドファイナンスは融資を受け借入金で資金調達を行うもので、3つの資金調達手段の中では最もポピュラーだと考えられます。
割引手形が不渡りになると買戻す必要がある手形割引は、売却ではなく借入金に分類されデッドファイナンスに属します。
エクイティファイナンスは投資を募る資金調達手段です。
大手上場企業が行う資金調達手段のような印象を受けますが、クラウドファンディングの普及で個人・中小・零細企業にも投資を募る道が開けたと言えるでしょう。
運転資金の調達に適した資金調達手段とは?
運転資金の資金調達は既述した3つの調達手段の中から、自社の事業規模や調達目標金額などの調達条件に合わせたものを選定する必要があります。
エクイティファイナンスは道が開けたと言うものの、実際に投資を募り資金調達成功には未だハードルが高いと考えられ、
アセッドファイナンスとデッドファイナンスが現実的だと言えるでしょう。
アセッドファイナンスはデッドファイナンスに比べ資金調達速度が速く、売却益が運転資金となるので借入金のように返済が発生しないのがメリットですが、
資金に置き換えるだけの保有資産があることが資金調達の大前提となります。
デッドファイナンスは金融機関の審査に時間がかかり、調達資金は借入金となるため返済が必要となりますが、まとまった金額を調達できる可能性があるのが魅力です。
多くの企業が金融機関からの借入金を返済しながら運営される事実もあり、非常に有効的な資金調達手段だと考えられます。
【借入金での運転資金調達を実現させる資金調達先や効果的な借入金返済期間とは?】
借入金で運転資金調達を行うデッドファイナンスは運転資金の調達手段として、非常に魅力ある調達手段だと考えられます。
しかし借入金返済がキャッシュフローに悪影響を及ぼすようでは本末転倒となりますので、資金調達先の選定に注意し借入金の返済計画をしっかりと練った上で利用するべきです。
運転資金の融資を行っている金融機関とは?
金融機関には様々な業態があり運転資金の融資に対しても各金融機関ごとに融資審査や担保設定の有無、利率などが異るので比較・検討した上で選定する必要があります。
次に挙げる金融機関が運転資金に対する融資を行っています。
- 民間銀行:都市銀行・地方銀行・信用金庫・信用組合など
- 公的金融機関:日本政策金融公庫・商工組合中央金庫などテキスト
- 消費者金融などのノンバンク
民間銀行は営利を目的として運営されるため、一般的に融資に対する審査のハードルが高いと考えられていますが、
2002年に公表された「金融検査マニュアル別冊(中小企業融資編)」の影響で審査のハードルが低くなったと言えるでしょう。
公的金融機関として機能する日本政策金融公庫は個人・中小・零細企業や新興企業向けに積極的に融資を行っています。
無担保・無保証で万一事業に失敗しても借入金の返済義務が生じない融資あるので近年資金調達手段として注目されています。
消費者金融などのノンバンクは審査基準が緩い傾向にあり、スピード融資が魅力ですが、ご存知のように金利が高めに設定されているので、緊急時以外は資金調達手段としてはあまりおすすめできません。
効果的な運転資金の借入金返済期間とは?
例えば日本政策金融公庫では整備資金の借入金返済期間は20年以内ですが、運転資金の借入金返済期間は7年以内に設定しています。
一般的に運転資金は設備資金よりも借入金返済期間が短く設定され、民間銀行では運転資金の借入金返済期間を1年未満の短期資金と1年以上の長期資金に分けて扱います。
長期間の借入金には相応の金利が発生することから運転資金を借入金で調達する際には、できるだけ短期間で借入金の返済を行うべきでしょう。
しかし短期間で借入金返済を行いキャッシュフローに悪影響を来すようであれば、中期的な借入金返済計画をたてるべきです。
【最後に】
借入金に対して「借金」のイメージが強い方は借入金の存在を肯定的に捉えづらいかもしれません。
しかし融資として受けた借入金を運転資金として活用し事業運営が好転することは珍しくありません。
運転資金が枯渇し企業生命が危機に陥る前に資金調達手段の1つとして、借入金の調達手段を検討することは事業運営に対する保険のようなものですから、
1度検討しておいても決して損にはならないと考えられます。
いかがでしたでしょうか?
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