最終更新日:2019年04月02日
Mentor Capitalです。
今回は、事業者ローンの種類について解説したいと思います。
会社の資金調達の方法として、多くの企業は銀行からの融資を利用していますが、
銀行プロパーの融資は利率が低いため、銀行は貸し出しに慎重になりますし審査には時間がかかります。
しかし、事業を行っていると、緊急の出費などによって今すぐに資金を確保したいという場合もあります。
その様な場合にスピーディーに資金を調達できる方法が事業者ローンです。
一口に事業者ローンと言っても色々な種類の事業者ローンあるので本記事では経営者や経理担当者が知っておくべき事業者ローンの種類について解説します。
サービス提供元によって銀行系ローンとノンバンク系ローンに分類できる
まずは、事業者ローンに関する基本の確認です。銀行や信用金庫が事業者向けに事業者ローンを行っている場合がありますが、
通常銀行からお金を借りる際に利用するプロパー融資と比較して利率が高いので、なんとなく事業者ローンは損な資金調達の方法だと考えている事業者も多いのではないでしょうか。
この利子について考える際に事業者ローンの種類について知っておきたいのが、銀行系事業者ローンとノンバンク系事業者ローンの違いです。
銀行系の事業者ローンは都市銀行や地銀、信用金庫などの金融機関が通常のプロパー融資とは別に行っているローンサービスの事で、
ノンバンク系の事業者ローンとはクレジットカード会社やリース会社、消費者金融などが提供している事業者ローンの事を指します。
同じ事業者ローンでも銀行系ローンとノンバンク系ローンでは大きく異なり一つの重要な相違点が貸付金利です。
銀行系の事業者ローンの利率が5%~15%程度なのに対して、ノンバンク系の事業者ローンの利率は15%~20%程度になっています。
ちなみにこの利率についてですが、2010年の出資法の改正までは多くの金融業者上限金利を29.2%という風に定めていました。
しかし、出資法が改正された事により上限の利率が今では20%程度まで引き下げられて、これ以上の利息を金融業者がとれないようになりました。
これ以上の利率で融資するという事業者ローンは違法な事業者が行っている可能性が高いので基本的に避けた方が良いでしょう。
また、これに関連して事業者ローンは株式会社などの法人だけではなく、個人事業主も申し込む事ができます。
しかし、2010年の出資法の改正により、個人が利用できる総借入額は年収の3分の1までとする総量規制という制限が設けられました。
法人は適用対象外ですが、個人事業主の場合も一定の要件を満たせば総量規制の上限を超えて事業者ローンによって資金を調達する事が可能です。
ちなみに、銀行系事業者ローンの方がノンバンク系事業者ローンよりも利息が安い反面、銀行による審査なのでやはり時間がかかってしまうケースがあります。
ノンバンク系の事業者ローンの場合申し込みを行ってから数日で融資が下りる場合もあるので、
急な資金調達が必要な場合は利率が高くてもあえてノンバンク系の事業者ローンを利用するという場合もあります。
しかし、だからといってノンバンク系の事業者ローンについては悪徳業者がサービスを行っている場合がある事には注意する必要があります。
この様な悪徳業者は即日融資OKや激安利息などのキャッチコピーでお得な条件で融資する様に見えますが、
融資の金利とは別に莫大な手数料を請求したり上限を超えた違法金利での取り立てを行っていたりします。
この様な事から考えるとノンバンク系の事業者ローンを利用する場合は有名なクレジットカード会社やリース会社のローンを利用するようにし、
身元の良くわからない会社のローンの利用は避けた方が良いでしょう。
担保によって分類できる事業者ローンの種類
上記の様にローンサービスを提供している会社が銀行かそれ以外かによって銀行系とノンバンク系の事業者ローンに分類する事が可能ですが、
それ以外にも担保によって事業者ローンの種類を分ける事が可能です。
まずは一番わかりやすいのが担保を必要としない無担保ローンで担保や保証人なしで利用できるローンがあります。
しかし、担保や保証人を必要としないという事はローン事業者から見れば回収リスクが高まるので、金利は高くなりがちで、融資額も低く返済期間も短くなりがちです。
無担保、無保証人にこだわるのであれば代替の資金調達手段としては銀行にプロパーで無担保無保証人の融資を依頼してみるのも手ですし、
創業に関連した資金調達の場合は政策金融公庫の新創業融資制度を利用する事によって原則無担保・無保証人で融資を受ける事が可能となります。
一方で担保を利用した事業者ローンの典型例としてわかりやすいのが、不動産を担保にして事業者ローンの借り入れを行う不動産担保ローンです。
不動産を担保にする事によって、ローン事業者は債権回収のリスクを軽減する事ができるので、決算書だけではなく不動産の担保力に基づいて貸し出し額を決定する事ができます。
これによって借入額は土地の資産価値に応じて大きくなり、返済期間も無担保ローンよりも長く設定する事が可能になります。
最大の違いは融資に対する利率の違いで、ノンバンク系のローンで無担保の場合利率15%程度が一般的な利率となりますが、
不動産を担保にした場合利率が5%前後という様に通常の事業者ローンよりも圧倒的に安く銀行のプロパー融資よりも少し高めの金利での資金調達が可能となります。
更に調達した資金の用途は自由で、自分だけではなく家族の所有する不動産も担保にする事が可能で、審査も通りやすく、借入額も大きく、
利率も低い事から借り換えや、ローンを一本化する際には重宝します。
しかし、不動産担保ローンを利用する場合は担保になる不動産の評価を行う為に無担保ローンと比較して時間はかかりますし、
不動産鑑定費用、抵当権の登記費用、印紙代、事務手数料などの費用が別途必要となります。
また、担保にできるのは土地だけではなく、株式、国債やゴルフ会員権などの有価証券を担保にして借り入れを行う有価証券担保ローンという商品もあります。
有価証券担保ローンも不動産担保ローンと同様に担保があるので低利率での借り入れが可能で、有価証券の時価評価額や額面の60~80%程度までの借り入れを行う事ができ、
有価証券を担保に入れても、株主やゴルフ会員の権利はそのまま保持し続ける事が可能となります。
ただ一点注意しておくべき事は土地と比較して有価証券の価値は変動しやすいという事です。
有価証券を担保に融資を受けた場合、その後有価証券の価値が著しく低下してしまい、担保割れが発生する事も考えられます。
このように担保割れが発生した場合、有価証券担保ローンの契約の中身によりますが追加の担保を要求されるか、担保できない融資部分について返済する事が求められる可能性があります。
また、有価証券の評価額についても上場企業の株式や先進国の国債などは高く評価されますが未上場企業の株式や不安定な国の国債については評価額が低くなりがちな事にも注意する必要があります。
債権を担保にした事業者ローンの種類
担保にできるのは不動産や株式の様な資産だけではなく、売掛金や受取手形の様な債権を担保にして事業者ローンを借りる事も可能です。
ここでは債権を担保にした事業者ローンの種類について解説します。
事業者にとってまず債権を担保にしたオーソドックスな事業者ローンは売掛債権担保ローンです。
売掛債権担保ローンとは企業の保有している売掛金を担保にしたローンです。
売掛金は企業に将来入ってくるお金なので、ローン事業側から見ても担保に値します。
同じように売掛金を利用した資金調達の仕組みとしてはファクタリングが考えられます。
売掛債権担保ローンとファクタリングの違いは売掛債権を自社で保有しているか否かです。
売掛債権担保ローンの場合はあくまでも売掛債権を保有しているのは自社であり売掛金の回収も自社の責任で行う必要がありますが、
ファクタリングの場合は売掛債権をファクタリング会社に売却してしまうので売掛金の回収はファクタリング会社の責任となります。
また、ファクタリングでよく使われる3社間ファクタリングという仕組みを利用すると、契約を成立させるためには売掛金の相手先の企業の承諾も必要となりますが、
売掛債権担保ローンを利用する場合は相手先の企業の承諾を必要としません。同じく相手先の承諾が必要ないファクタリング手法としては2社間ファクタリングという手法が挙げられますが、
ファクタリング会社としてもリスクの高い手法なので手数料がどうしても高額になりがちです。
売掛金の相手先にばれずに資金調達を行いたい場合は2社間ファクタリングではなく売掛債権担保ローンを利用した方が良いと考えられます。
また、利率の違いにも注意してください。
売掛債権担保ローンは資金の融資なので、貸金業法、出資法、利息制限法などの法律によってお金を借りる人の権利が保護されており、利率も最大20%程度となりますが、
ファクタリングの場合は債権を買い取っているだけなのでこれらの法律の適用対象外となります。
よって、ファクタリング会社によっては実質30%以上の利息分の手数料を請求する企業もあります。
ちなみにファクタリング契約であると言いつつ売掛金を回収できなかったら売掛金を買い取った企業に対して不足分を請求するファクタリング会社がありますが、
これは売掛債権担保ローンになり、貸金業の許可登録が必要となりかつ出資法の利息の範囲内でしか貸し出しを行えません。
売掛債権担保ローンだと言いつつ20%を超える金利での融資を行っていたり、ファクタリングだと言いつつ売掛金の回収保証を求める業者は違法なので注意した方が良いと考えられます。
また、資金調達の仕組みは売掛債権担保ローンと同様ですが、医療機関に特化したローンサービスとしてメディカルサポートローンという医療機関専用ローンがあります。
メディカルサポートローンでは診療報酬債権を担保とした融資を行っています。
保険治療を行う場合は通常利用者に治療費の3割を請求し、残りの7割を社保や国保に診療報酬明細書を送って請求します。
しかし、この社保や国保に対して請求すればすぐに診療報酬は支払われるわけではなく2か月程度入金までのタイムラグがあります。
メディカルサポートローンはこの様な診療報酬債権を担保にして即日で銀行にお金が振り込まれる仕組みです。
なお、国保や社保を相手にしているので回収不能リスクも低いため、メディカルサポートローンの利率は低く設定されていいます。
売掛債権担保ローンと同様に、メディカルサポートローンにも同じように診療報酬債権を利用したファクタリングサービスがありますが、
社保や国保相手に貸し倒れるリスクはまず考えられないので利率の低いメディカルサポートローンを利用した方が良いと考えられます。
なお、病院の診療報酬だけではなく、調剤薬局の調剤報酬債権、介護保険事業者の介護給付費債権についても同様の仕組みでローンを組む事が可能です。
最期に
以上の様に事業者ローンの種類について説明してきました。サービス提供会社別に銀行系ローンとノンバンク系ローンがありますが、
すぐに資金調達を行いたいなどの事情が無い限り金利の安い銀行系の事業者ローンを利用した方が良いと考えられます。
また、銀行融資と比較検討するべき事業者ローンとしては無担保ローンや不動産担保ローン、有価証券担保ローンなどの担保なしあるいは資産を担保にしたローンです。
銀行のプロパー融資についてもこの様な担保を利用した融資はありますし、銀行のプロパーでの貸付金利は低いので銀行も確実に回収できる貸付先に困っており、
信用情報の確かな企業についてはプロパーでの融資を行いたがります。
よって自社の信用情報が確かで銀行が土地や有価証券を担保にした融資に応じてくれる場合は、事業者ローンではなくプロパー融資を利用した方が良いと考えられます。
しかし、逆に言えば信用情報に不安がある場合は担保があっても融資を渋られる場合が考えられるので、その様な場合にはこの様な事業者ローンを利用した方が良いと考えられます。
他の事業者ローンとしては債権を担保にしたローンは考えられ、ファクタリングによる資金調達と比較検討する事になります。
ただし、ファクタリングの場合は手数料が高く、一般的に相手先の承諾が必要となるために、
売掛金の回収が自社だけでは困難な事が予想される場合などを除いては、
売掛債権担保ローンやメディカルサポートローンの様な債権を担保にしたローンを利用した方が金利を抑えられて相手先の承諾も必要としないのでお得です。
いかがでしたでしょうか?
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