最終更新日:2019年12月24日
Mentor Capitalです。
今回は、ファクタリングの意外な効果について解説したいと思います。
ファクタリングの効果について企業の経営者でも意識が薄い部分があります。
ファクタリング取引の利用自体がここ数年盛んになったばかりですので仕方ない面もありますが、ファクタリングの効果を知ることでより活用できるケースがあります。
例えば、ファクタリングの一般的な効果・メリットといえば、
⇒即日の現金化も可能なためスピーディな資金調達ができる
⇒融資ではないため担保不要で資金調達できる
などがよく言われる効果です。
ですが、その他にも実は以下の効果があります。
これらのファクタリングの効果について詳しく解説します。
中小企業の財務戦略のセオリーとは
ファクタリングの効果を解説する前に、中小企業の財務戦略のセオリーをおさらいします。
ファクタリングの効果を知る上で大事なポイントになります。
上場企業は株式市場から資金調達を行う事が容易ですが、中小企業は必ずしもそうではありません。
中小企業の資金調達と言えばまず思いつくのが銀行からの融資ですが政策金利が安いので信用の低い企業に対して、なかなか融資してくれません。
そこで手元資金を手厚くしようというのが中小企業の基本的な方針になります。
ここで注意したいのが、会社は赤字か黒字かという事と手元資金が豊富か否かは直接的な関係が無いと言う事です。
仮に会社が大赤字でも、銀行が融資してくれる場合や投資家が投資してくれる場合など、何らかの方法で資金調達できれば企業は存続します。
一方、収支が黒字でも売掛金のまま滞留して現金化できない等により手元資金が尽きてしまうと会社は倒産します。
特に、赤字の会社は納税額も少ないので出ていくお金が少なくて済みますが、黒字の会社は手元資金が少なくても税金を払わなければいけませんので会社から現金が流出します。
このような事から中小企業の財務戦略について2つのセオリーが導き出されます。
もちろん、必ずしもこの通りにするべきとは限りません。
会社の方針によっては、支払いを早くした方が取引先との契約条件が良くなる等、あえて短い支払いサイクルで契約するケースや、
投資家との兼ね合いで黒字を大きくしておきたいという場合も考えられますので、あくまでもセオリーの1つです。
このようなセオリー通りに財務戦略を行うと、実は重要であり且つ効果的な手法がファクタリングです。
ファクタリングには以下の効果があり、手元の現金を厚くするためには有効な手段の一つだと言えます。
このファクタリングの効果についてさらに詳しくお伝えします。
節税しながら手元資金を増やす効果
まず、ファクタリングには誰もが知る通り資金調達の効果があります。
この時のポイントは債権の売却に手数料が掛かっているという事です。
例えば、通常、銀行から融資を受ける場合は返済期間に応じて徐々に利息を返済していくため、融資を受けた利子を返済期間に応じて、
今期、来期、再来期と手数料を損金に算入する事になりますが、ファクタリングは融資を受けた時に一括で手数料を損金とする事ができて黒字から差し引き可能です。
このように同じ資金調達でも黒字がでている期に節税のために利益から引く為に一括で手数料を損金算入したいという場合はファクタリングが効果的だと言えます。
<貸倒引当金の違いとは?>
同じように、債権を利用して損金を作る方法としては貸倒引当金の計上が考えられます。
債権に対して貸倒引当金を引き当てて損金を作る方法とファクタリングによって損金を作る方法にはどの様な違いがあるのでしょうか。
まず債権が現金化されているか否かの違いです。
ファクタリングは債権の売却によって資金を得る方法ですので、資金を調達すれば一方で保有している債権をファクタリング会社に移転します。
一方で貸倒引当金の場合は、債権自体は保有し続けます。
保有している債権額に対して、そのうちの何パーセントが貸倒引当金という損金を設定するだけなので、債権自体は保有し続けます。
実際の資金の流れについてもファクタリングと貸倒引当金は異なります。
ファクタリングは債権を売却する事によって手数料を差し引いた金額がそのまま手元に入ってくるのに対して、
貸倒引当金は保有している債権の貸倒引当金という架空の損金を設定しているだけなので、実際に債権が現金に代わる事はありません。
また、貸倒引当金の金額の現金が社外に流出する事もありません。
債権を回収できない場合の違い
また、債権を回収できなかった場合も両者では異なります。
ファクタリングの場合は、債権を売却しているので、売却した債権が回収できなかったとしてもそれは回収できなかったファクタリング会社の責任となり、
債権の金額から手数料を差し引いた分の資金は会社の手元に残ります。
一方で貸倒引当金の場合は、債権は会社が保有しているためきちんと債権が回収できなければ手元に現金が入ってくることはありません。
また、債権を回収できた場合は一度設定した貸倒引当金に対して貸倒引当金戻入益を設定するので結局損金は発生しなくなります。
<ファクタリングの方が有利なのか?>
このように、比較するとファクタリングの方が債権の回収リスクがなくなり、手元に現金が入るので有利だと思われるかもしれませんが実際にそう上手くいくわけではありません。
ファクタリングの手数料は一般的に銀行融資よりも高く、債権を高い手数料を支払って現金化していますので、長期的にファクタリングを繰り返す場合は資金繰りが悪化していきます。
しかし、手元の資金が不足しているけれども、決算書上は黒字経営になっている時などには手数料の金額によっては、節税効果も期待できるので便利な手法だと言えます。
なお、手元現金に余裕があるのでファクタリングではなく貸倒引当金で損金を作って節税したいという場合について、
資本金一億円以上の企業は貸倒引当金を設定するためには一定の制限があるので注意が必要です。
債権のオフバランス化によって融資が受けやすくなる効果
節税対策になる以外にも貸借対象の見栄えを良くして、銀行からの資金調達をよくする効果も期待できます。
売掛金の金額が大きな企業の貸借対照表は銀行の視点で見た時に、不良債権が含まれている可能性があります。
また、現金が少なければ、融資後にいずれ現金が尽きて倒産するなど、融資が回収不能の事態になるかもしれないと考えられます。
このようなリスクを考えると、銀行は融資を行う事を躊躇してしまいます。
このような時に有効なのがファクタリングです。
ファクタリングによって売掛金を現金にする事によって、貸借対照表上から売掛金が減って、現金が増えるため財務バランスが良くなります。
このように合法的に資産の部から、債権などのようにリスクのある資産を除外する方法をオフバランス化と言い、貸借対照表の見かけを良くする効果として使われる手法の1つです。
<債権担保の融資は?>
ちなみに、銀行などからの資金調達を行う為に財務諸表を良くするのならば、債権を担保にして銀行からの融資を獲得するという手法も考えられます。
確かに、こちらの方がファクタリングよりも資金調達コストが安いため効果的だと考えられますが、
貸借対照表上の左右に現金と借入金が入って自己資本比率が下がってしまうので貸借対照表上の見かけは悪くなってしまいます。
また、担保にしていた債権が回収できなかった場合は別の担保を用意しなければいけません。
更に、担保にしていた債権を回収できなかったとしても、銀行に融資を返済しなければならないのです。
債権の回収リスクを第三者に転化できる効果
次に債権回収リスクを第三者に転化できるというのも大きな効果で、ファクタリングのメリットと言えます。
きちんとお金を払ってくれる相手先の債権であれば保有しておいてもそれほどの手間ではありませんが、現金がなく金払いの悪い相手先の債権の回収は困難です。
今は払えないと約束以上の期間支払いを伸ばされるかもしれませんし、やっと払って貰える事になっても債権の値引きを要求してくるかもしれません。
また、そもそも一般的な事業会社は債権回収のプロではありませんので、債権を回収する為の労力は時として莫大なものとなります。
このような観点から、債権回収のリスクと手間を無くす、というのもファクタリングの効果であると考えられます。
債権回収に大きな労力がかかる可能性があると感じた債権について、専門のファクタリング会社に移転させることも選択肢の1つとなります。
ただし、このように債権回収の手間を回避するためのファクタリングは3社間ファクタリングになる場合がありますので、その場合は債権の相手先の同意が必要となる事は注意が必要です。
ファクタリング活用とリスク・コスト
このようにファクタリングには様々な効果がありますが、最終的にはファクタリングを利用するべきか否かはそのリスク・コストによって決定します。
節税、債権のオフバランス化、債権回収リスクの第三者への転化など様々な効果がありますが、一方でファクタリングを利用するリスクもあります。
まずファクタリングというとネガティブなイメージがあるため、債権をファクタリングされた事がわかると取引先には何のリスクもありませんが、
どうしても今後の取引に支障ができる事が懸念されます。
また、手数料も一般的に高額です。
ファクタリング会社も債権が回収できないリスクを背負うため手数料を高めに設定します。
なお、初回の手数料が高い場合でも2回目以降に信用が高まって手数料が下がっていくケースがあります。
ファクタリングは債権の売買であり、金銭の貸付ではなく利息制限法などの法律が適用されないため、いくらでも高い手数料が設定可能です。
このような観点から、ファクタリングの手数料が企業の利益を圧迫しない程度に、資金繰りに苦労する企業が急場を凌ぐための資金調達方法として利用される傾向にあります。
ファクタリングの効果と活用法について最後に
以上のようにファクタリングの資金調達以外の効果について説明してきました。
ファクタリングには資金調達効果以外にも様々なメリットがありますが、活用するにあたっては、リスクとコストに見合うかを冷静に判断した上で決定した方が良いでしょう。
ファクタリングを実際に利用する際は、事前に改めてメリットとデメリットを比較した上で自社にとっての効果が大きいか判断してから決めましょう。
いかがでしたでしょうか?
何か不明な点等が有れば、お気軽にメンターキャピタルまでお問合せ下さい!!