最終更新日:2019年12月24日
Mentor Capitalです。
今回は、ファクタリングにおける希望額と調達額との差異について解説したいと思います。
ファクタリングは便利な資金調達の手法ではありますが、日本ではなかなか浸透していません。
ファクタリングを利用する事によって取引先にファクタリングした事がばれれば、今回の取引に影響があるかもしれないという恐怖も浸透しない理由の一つですが、
何よりもファクタリングの普及を妨げているのはその手数料の高さです。
ファクタリングの手数料は2社間ファクタリングの場合20%、30%という手数料もあります。
ファクタリングを行う度にこのような手数料が掛かったのでは会社の利益が大きく減少し、儲かる商売も儲からなくてしまうので、
どうしても資金が不足しているけれども、銀行が融資してくれない、審査が間に合わないという時の急場しのぎのピンポイントの資金調達方法として使われがちです。
本記事では、なぜファクタリングは手数料が高すぎて、希望額と調達額の間に大きな差が発生してしまうのか、
買取予想額はどのように計算すれば良いのか、希望の買取金額に近づけるためにはどのような事をしたら良いのかについて説明します。
ファクタリングはなぜ高いのか?
まず、なぜファクタリングの手数料は高くて希望額と調達額の間に大きな差が生まれてしまうのかという事について検討します。
ユーザーの感覚としてはファクタリングの手数料は高いと言うのが一般的です。
確かに銀行融資は1~2%程度の利子で借り入れを行う事が可能なので確かにそれと比較すると3社間ファクタリングでもまだ手数料が高いですし、
2社間ファクタリングの手数料も言うまでもなく高いと考えられます。
しかし、ファクタリング会社の事業を考えればこの手数料は決して高くないと考えられます。
まずファクタリングを行う際に必要となるコストが債権回収のコストです。
ファクタリングの場合は債権をファクタリング会社が買い取るので、すんなり回収できれば良いですが、回収できなければすべてファクタリング会社の損害となります。
特に2社間ファクタリングの場合、債権回収もファクタリングサービスを利用する会社が行う事になります。
2社間ファクタリングを行ってでも資金調達をしたいという会社は、取引先にばれると以降の取引に影響があるのでできればファクタリングを使いたくないですよね。
けれども、急場の資金繰りの為に高い手数料を払っても資金を調達したい、端的に言えば資金繰りに困ってジリ貧となっている企業であるケースが多いのです。
このような事から2社間ファクタリングの場合、ファクタリングした債権をきちんと相手先から回収したけれども、
ファクタリング会社にきちんと回収した金銭を振り込まずに自社の運転資金として使ってしまうというケースも当然考えられます。
しかし、ファクタリング会社は制度上何らかの担保を取ったりしてこのようなリスクに備える事はできません。
ファクタリングは債権の売買契約という性質上担保を必要としませんし、仮に担保を取ると、
担保付きの融資契約と見なされる可能性が高くその場合ファクタリング会社の手数料は利息制限法の制限以上の利息をとっていると見なされる可能性が高いからです。
このようなに2社間ファクタリングの場合は、ほとんど無担保、無保証でファクタリングを利用する会社にお金を貸すのと同じような状況が発生しています。
このような理由からファクタリングの手数料が高いのはファクタリング会社からすれば、リスクに対しての当然の代金だと言う事ができます。
また、利用者が支払った料金の全てがファクタリング会社の利益となるわけではありません。
特に2社間ファクタリングの場合は、債権の登記に費用が掛かります。
3社間ファクタリングの場合は、買い取る債権先の企業の同意が必要なので、二重売却を防止する事ができます。
2社間ファクタリングの場合ファクタリング会社とサービスを利用する会社の間だけで契約を行うので、
利用者が騙そうと思えばファクタリングした債権を別の第三者に既にも売却して、1つの債権を同時に複数のファクタリング会社に販売するという事も可能です。
このような多重売却を防止し、債権の保有者を明確にする為に2社間ファクタリングでは債権の譲渡登記を行います。
この債権の譲渡登記にはもちろん費用が必要となり、登録免許税に最低7,500円必要、抹消登記に1,000円が必要となりますし、司法書士にお願いすると報酬も必要となります。
この他にも窓口申請する場合は法務局までの交通費なども当然必要になってきます。
このような手数料が必要になるために2社間ファクタリングの手数料が高くなるのです。
また、もちろんファクタリングはビジネスであるという事を考えると、手数料の中から利益を出さなければなりません。
ファクタリングの手数料の中から従業員の給料や、事務所の家賃、契約を獲得するための営業・広告宣伝費、債権が回収できなかった場合の余剰資金という風に考えていくと、
ファクタリング会社が利益を出す為にも、銀行融資よりも高い手数料を取る事は仕方ないとも言えます。
このように、利用者側の考えと、ファクタリング会社側の考えの間に大きな隔たりがある事が、希望額と調達額が一致しにくい原因となっています。
ファクタリングの買取予想額の計算方法について?
では、利用者はどのようにファクタリングした際の買取予想額を計算すれば良いのでしょうか。
買取予想額の算出方法について説明します。
まず、2社間ファクタリングと3社間ファクタリングによって手数料相場が異なりますので、どちらのファクタリングを利用するか考えてください。
2社間ファクタリングは債権先に債権を譲渡した通知を行わず、利用者が債権を回収してファクタリング会社に支払うので債権先にばれるリスクが低くなりますが、
その分ファクタリング会社からすればリスクが高いので手数料が高くなります。
3社間ファクタリングは債権を譲渡する際に債権先の同意が必要な契約であり、債権先にはファクタリングを利用した事がばれてしまいますが、
その分ファクタリング会社からすればリスクが低くなるので手数料が低くなります。
手数料の相場としては
3社間ファクタリング | 1~5% |
2社間ファクタリング | 10%~30% |
が相場となります。
もちろん、利用するファクタリング会社によって手数料は異なりますが、どのファクタリング会社利用するか以外にも、
ファクタリングする債権の金額の総額や利用する企業や債権先の企業の財務・信用状況、利用者の取引実績などによっても手数料が異なります。
ですので、
その上で、
売却する債権の金額×予想手数料率=買取予想額
という式で買取予想額を算出する事が可能になります。
ただし、この買取予想額が一度に自社に入ってくるわけではありません。
ファクタリング会社では「掛け目」というのが設定されており、買取代金の一部の支払いはきちんと債権が回収できるまで留保されています。
一般的な掛け目の割合が80%から90%程度となっていて、買取代金のうちすぐに入ってくる費用は80%~90%だけで、
後の10%~20%の代金は債権を回収した後に入ってくる事になるので注意してください。
調達額を希望額に近づけるためには?
以上の用に買取予想額の算出方法について説明しましたが、では予想はともかくファクタリングによる調達額を希望額に近づけるためにはどのような事を行う必要があるのでしょうか。
第一に必要な事が2社間ファクタリングではなく3社間ファクタリングを行う事です。
3社間ファクタリングで条件が良い場合は銀行から融資を受けるのとほとんど変わらない手数料で利用する事が可能となりますが、
2社間ファクタリングになると手数料相場は10%~30%となってしまうので、どうしても希望額と調達額の間に大きな隔たりが出来てしまいます。
このような理由から、ファクタリングをした事が取引先にばれる恐れがあったとしても、
事前に取引先と交渉して3社間ファクタリングができる関係性を作ってでも3社間ファクタリングで資金調達した方が良いでしょう。
また、ファクタリングする債権の質も重要です。特に自社の信用情報に不安がある場合でも、
3社間ファクタリングであれば極端な話をすると、自社の信用情報はファクタリング会社にとって関係ないのでファクタリング会社にとって質の良い債権をファクタリングするようにしてください。
ファクタリング会社に質の良い債権とは大手企業や公共団体などの企業の身元がはっきりしていて、踏み倒される可能性が低い債権です。
例えば、診療報酬債権は回収不能となるリスクが低いために低い手数料が設定されています。
ちなみに大企業に対する債権だからと言ってすぐに質が良い債権だと見なされるわけではなく、その企業とどの位継続的な取引を行っているかも重要な要素となります。
なお、入金サイトの長い債権よりも入金サイトの短い債権の方が手数料は低くなります。
資金調達額を希望額に近づけたい場合は入金サイトの短い債権を中心に売却した方が良いでしょう。
また、継続的に取引を行う事も必要です。取引実績が豊富な利用者の方が、取引実績の少ない利用者よりも、ファクタリング会社から見た時に信用が高いので手数料も低くなる傾向があります。
とはいえ、相見積がしっかりとっておいた方が良いので、きちんと相見積を取る様に心がけてください。
このように債権の買取額を希望額に近づける方法はあります。
しかし、質が良かったりサイトの短い債権を売却する事は買取金額自体を上げる事にはつながりますが、必ずしも会社全体のキャッシュインを考えた時に最適だというわけではありません。
質の良い債権を売るという事は確実に回収できそうな債権を割引で販売して、手元に債権回収リスクがある債権を残すと言う事です。
またサイトの短い債権を売却するという事は1か月なり我慢すれば手に入る資金について手数料を支払ってすぐキャッシュインさせるという事なので、
それよりも半年後や1年後のような長期的な債権を売却して運転資金として事業投資した方が、利益が大きくなるケースも考えられます。
このようにどの債権を売却するかは、経営者や経理担当者の考えによって判断が分かれるところなので、
単純に手数料を下げるために質の良い債権、入金サイトの短い債権をファクタリングするべきではない事に注意してください。
最期に
以上のようにファクタリングした際に得られる資金調達額の予想方法や調達額を希望額に近づける方法について説明してきました。
利用者の目線で考えればファクタリングの手数料は高いと思われるかもしれません。
しかし債権回収ができないリスクや、2社間ファクタリングによって使い込まれるリスク、債権譲渡登記の費用など不可欠な経費は存在します。
事業としてファクタリングを行うのであれば、家賃や人件費、広告宣伝費なども掛かってくるのでファクタリング会社の目線で言えば、必ずしもファクタリング手数料は高いと言えません。
ファクタリングを利用する場合は、利用者の目線だけではなくファクタリング会社の目線も持った上で利用した方が良いでしょう。
ファクタリングで得られる調達額は
売却する債権の金額×予想手数料率=買取予想額
という式で算出します。
手数料率は、
3社間ファクタリング | 1~5% |
2社間ファクタリング | 10%~30% |
が相場となります。
手数料率を決める要素としては債権の質であったり、自社や債権先の信用状況、債権の金額、過去のファクタリング会社との取引実績などがあります。
キャッシュインのタイミングとしては二つあり、まず代金の8~9割はファクタリングしたタイミングでキャッシュインされますが、
残りの1~2割は債権を回収し終わった後にキャッシュインとなるので注意してください。
ファクタリングによる調達額を希望額に近づけるための方法としては3社間ファクタリングを利用する事、
質の良い債権、入金サイトの短い債権を売却する事、ファクタリング会社との間に取引実績を作る事などが挙げられます。
ただし、質の良い債権、入金サイトの短い債権を売却する事はファクタリングの手数料を下げる事には繋がりますが、
資金運用全体で考えた時に必ずしも全体最適につながるわけではないので、どの債権をファクタリングするかは慎重に考えた方が良いでしょう。
いかがでしたでしょうか?
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