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「成長期」の資金調達法

最終更新日:2018年06月04日

 

 

Mentor Capitalです。

 

 

今回は成長期における、資金調達法について解説したいと思います。

 

自社の商品・サービスの知名度が上がり、新規顧客がどんどん増えて、売上が右肩上がりになると、導入期と比べて資金繰りがぐっとラクになります。

このとき、たとえ資金調達が必要でなくとも、できるだけ融資を申し込んでおきましょう。

 

 

調子がいいときこそ、たくさん借金をしろ

 

 

「資金繰りに余裕があるのに、どうして借金をしなければならないのか?」
「やっと創業資金の返済が終わったから、資金繰りに問題が発生するまでは、お金を借りたくない……」

その気持ち、よくわかります。
しかし、それでも「あえて借金をしておく」ことが、このあとの成熟期、衰退期への備えとなるのです。

思い出してみてください。
銀行はどのような会社に、積極的に融資をするのでしょうか。
ずばり「順調に利益を出して、確実に返済してくれる会社」です。
つまり、「成長期を迎えた会社」こそ、銀行にとって理想的な融資先なのです。

成長中の優良企業であれば、どの銀行もお金を貸したがります。
営業担当者が頻繁に足を運び、融資金額や金利、返済期間など、他行よりも良い条件を次々と提示してきます。

しかし、少しでも売上高の伸びが鈍くなれば、銀行は好条件を引っ込めて、急に融資を渋るようになります。

「あのとき借りておけばよかった」と嘆いても、後の祭りです。だからこそ、条件が良いうちに、借りられるだけ借りておく。

と肝に銘じておかなければいけません。
とくに成長期はライバルが多く、利益が出ていることに満足して事業拡大の努力を怠ると、あっという間に市場で落ちこぼれてしまいます。
新たな設備投資や商品開発、販路の開拓などを実現し、市場におけるシェアの最大化を図るためには、資金がいくらあっても足りないのです。

売上が伸びているときほど、多くの融資を受けておきましょう。
資金繰りに余裕があるときに、好条件で融資を受けられれば、毎月の返済もラクになります。
問題なく返済を完了することで、銀行の評価アップにもつながります。

資金繰りに余裕があるうちに問題なく返済を行い、実績を増やしていく。

このことも、しっかりと覚えておきましょう。

もし、同じ格付けの会社が同時に融資を申し込んできたとき、融資をどちらに実行するかは「定性評価」、

すなわち、経営者としての能力、過去の返済履歴、将来性などが大きく影響します。
初めて融資を申し込んできた未知の企業よりも、これまで何度か融資を行い、大きな問題もなく返済してきた企業のほうが安心してお金を貸せる、と思うのは、ごく自然なことです。

条件が良いうちに、借りられるだけ借りておく。
資金繰りに余裕があるうちに問題なく返済を行い、実績を増やしていく。

これは成長期の経営者にしかできないことです。

 

 

成長期にオススメの助成金・補助金

 

 

銀行融資のほかに、成長期に活用できる助成金や補助金があります。

 

 

補助金【革新的ものづくり・商業・サービス開発支援補助金】

成長を目指す中小企業および小規模事業所への成長支援を行う制度です。
この補助金を受けるためには、3~5年で「付加価値額」年率3%、「経常利益」年率1%の向上を達成できる事業計画が必要です。

また、認定支援機関の全面バックアップを受けていなくてはなりません。
補助金額は、IoTやAI、ロボットなどの設備投資を行った場合は最大で3000万円、その他は500~1000万円です。

対象は、機械装置や計測機器、ソフトウェア導入にかかる費用などです。
補助金を受けられるかどうかは、事業計画にかかっています。
会社の状態を正確に理解してくれている顧問税理士に相談をして、説得力ある事業計画づくりをしましょう。

 

 

助成金【トライアル雇用助成金】

職業経験、技能、知識の不足などにより安定的な就職が困難な求職者を、ハローワークなどの紹介で最長3カ月間の試行期間として雇い入れた場合に給付される助成金です。

対象者1人につき月額4万円(母子家庭や父子家庭の親は5万円)。
就職困難者の正規雇用の実現が目的で、事業主は試用期間中に適性や業務遂行能力などを見極めてから常用雇用へ移行できるため、採用のミスマッチを防ぐことができます。

一見「就職困難者をお試しで3カ月間雇うだけ」のように見えますが、それほど単純なことではありません。

支給対象事業主の要件には、

 

  • トライアル雇用労働者に係る雇用保険被保険者資格取得の届出を行った事業主
  • トライアル雇用期間中に支払うべき賃金(時間外手当、休日手当等を含む)を支払った事業主
  • 労働基準法に規定する労働者名簿、賃金台帳等を整備・保管している事業主

という内容がずらりと並んでいます。そのため、自社が助成金を受けられる状態にあるかどうか、社労士などの専門家に尋ねてみる必要があります。

 

 

「経営計画書」を見直そう

 

 

成長期にある会社は、導入期よりもはるかに多額の資金を集められます。
ですが、これらの資金を有効活用するには、経営者と同じ目標を持ち、同じように行動できる社員を育成していく必要があります。
そのためには、次の2点が重要です。

 

①経営理念を全社で共有する
②理念の実現に向けて「行動計画」を立てる
①経営理念を全社で共有する

経営理念には「ミッション」「ビジョン」「バリュー」などがあります。

「ミッション」は、社会における会社の基本的な役割や使命。
「ビジョン」は、5年後や10年後に達成すべき目標、会社が目指すべき方向性。
「バリュー」は、社内の共通の価値観であり行動指針や信条、クレドなど。
たとえばヤフージャパンは、次ページの経営理念を掲げています(図❶)。

会社によっては、経営理念をミッション・ビジョン・バリューに分けて設定していないケースもありますが、

いずれにせよ「この会社が何を目指しているのか」という方向性と、その方向に向かうために「どのような行動を起こすべきか」という行動基準がしっかり浸透していることが大事です。

 

 

②理念の実現に向けて「行動計画」を立てる

融資を申し込む際、経営計画書の提出を求められることがあります。
事業計画書はどの企業でもつくっていますが、社内向けの経営計画書をしっかりと作成している経営者は、そう多くありません。

経営計画書は主に、企業が理想の姿になるために具体的に何をするべきか、社内で意思統一を図るために作成されます。

この経営計画を実現するために具体的な目標を定めたものが「行動計画」です。
何を目指し、どう動いて、何を達成すべきかが詳細に記された、経営計画実現のためのロードマップのようなものと考えてください。

 

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図❶経営理念の共有が社員の行動につながる

 

行動計画に決まった書式はありませんが、次の3つを盛り込むといいでしょう。

 

①ビジョンと戦略
②マーケティング方針
③プロダクション方針

 

最初に①を定め、さらに具体化するために②と③を落とし込みます(図❷)。

まず①では、「何を」「どこに」「どのように」「誰が」「どのくらい」行うのかを具体的に定めます。
たとえば、大まかな数字目標を設定し、ターゲットや方法などを具体化させます。
何を→   「新商品であるAを」
どこに→  「30代の女性中心に」
どのように→「web 広告を活用して」
誰が→   「販促チームが」
どのくらい→「広告費200万円・目標売上5000万円以上・目標利益1000万円以上」

 

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図❷「行動計画」を立てて具体化させる

 

次に、①を実現するための「マーケティング方針」「プロダクション方針」の「戦略目標」を決定し、戦略目標を達成するための具体的な行動を「数字目標」「行動目標」として設定します。
たとえば、マーケティング方針の戦略目標は、「web広告の強化」「広告から自社サイトに来訪したユーザーのコンバージョン率アップ」、

プロダクション方針の戦略目標は「輸送コストの削減」「品質の向上」などが考えられます。そこでこの戦略目標を達成するための「数字目標」「行動目標」を決めていきます。

 

 

目標は融資担当者が納得できるものか?

 

 

行動計画を作成するうえで大事なことは、どの目標にも具体的な数字と行動を記し、誰が見ても「何を目指して、どう動くべきか」がわかること。

目標をクリアしていけば、会社の経営理念が実現できると、社員全員が信念を持って取り組めることです。
そのためには「戦略目標」に対する「数字目標」や「行動目標」が妥当であり、かつ実現可能であることを証明しなければなりません。
経営者であれば、「この目標を掲げるなら、毎月達成すべき数字はこれくらい」という計算が頭のなかでできますが、社員がみんな社長と同じ感覚を持っているわけではありません。
また、融資審査では経営計画の数字は非常にシビアに判定されます。
なぜこの目標数値になったのかと問われて「これまでの実績から、だいたい……」などと答えてしまっては、根拠がはっきりしない数字を目標にしているとみなされ、マイナス評価になってしまいます。
そこで、経営計画や行動計画を作成したあと、もしくは作成段階で、税理士など経営計画策定支援を行っている専門家に依頼すれば、目標数値の信憑性がぐっと上がります。
融資担当者も、専門家が提示した根拠ある数字なら納得してくれます。
経営計画書や行動計画は、市場や経営状態の変化によってその都度修正するものです。

その度に専門家のサポートを受けることができれば、経営者には見えていなかった経営上の課題や、会社発展のための情報を教えてもらえるでしょう。

 

「ローカルベンチマーク」とは?

 

 

最後に、経済産業省が提供している会社の経営状態を客観的に診断するツール「ローカルベンチマーク(通称ロカベン)」についてご紹介します。
ロカベンは経営者、金融機関、商工会などの支援機関が企業の状態を把握し、同じ目線で対話を行うための基本的な枠組みです。

 

①財務分析診断(図❸)

「財務分析入力シート」に、企業の財務情報に関するデータを打ち込むと、企業の経営状態を把握するうえで重要な6つの財務指標に関する数値が出ます。

 

  • 売上持続性(売上高増加率)
  • 収益性(営業利益率)
  • 生産性(労働生産性)
  • 健全性(EBITDA 有利子負債倍率)
  • 効率性(営業運転資本回転期間)
  • 安全性(自己資本比率)

②非財務ヒアリングシート

企業の現状認識と将来目標、課題と対応策に関して、経営者が4つの視点から具体的に記載することで、企業、金融機関、支援機関が対話を深めるための情報を提供します。

 

  • 経営者(経営者のビジョン、経営意欲、後継者の有無など)
  • 事業(沿革、強み、IT に関する投資や活用の状況など)
  • 企業をとりまく環境・関係者:(市場動向、規模、顧客リピート率、従業員定着率、取引金融機関数など)
  • 内部管理体制:(組織体制、事業計画、研究開発、人材育成の取り組み状況など)

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図❸財務分析診断の参考表

経営者が、自社の事業内容や現状、課題、成長の可能性などを、事業計画や面談を通して第三者に正確に伝えることは、容易ではありません。
しかし、ロカベンを使えば、財務に対する客観的なデータが自動的に表示されるので、経営者の思いや目標、現状などの情報が、整理された形でまとめることができます。また、社外との対話に限らず、社内における経営課題の検討や、経営者が会社の現況を知るための資料として利用するなど、幅広く活用できます。
 

いかがでしたでしょうか?

 

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