最終更新日:2024年08月30日
Mentor Capitalです。
ファクタリングを利用すると、取引先から受け取る予定の売掛金を、支払期日より前に受け取ることができます。
欧米諸国に比べ日本ではあまり浸透していないシステムですが、きちんとした知識をもっていればこれほど利便性の高い金融サービスは他にありません。
このファクタリングについて「2社間契約・3社間契約」という契約の違いや、「一括・国際・信用・診療報酬債権」という種類について詳しく解説します。
目次
まず「3社間ファクタリング」を紹介します。
通常ファクタリングを行う場合、ファクタリングで資金調達を行いたい会社(以下、自社)とファクタリングサービスを提供する会社(以下、ファクタリング会社)、
自社が売掛債権を保有する取引先企業(以下、相手先)の3社が関わります。
ファクタリングの際に相手先の同意が必要となります。
売掛債権を譲渡することを相手先に通告し、同意を得る必要があるため手間が掛かるのが特徴です。
取引内容がオープンになるため、一度信用を得られれば問題が発生する確率は下がります。
流れとして、自社はファクタリング会社に債権の買取依頼を行い、ファクタリング会社は債権の内容や相手先の信用情報を元に買取条件を決定します。
これに自社が納得すればファクタリング会社は相手先に対し自社とファクタリング契約を行い、債権が自社からファクタリング会社に移動し、支払いもファクタリング会社に行う旨を通知します。
これに対し相手先が同意すればファクタリング契約が成立し、ファクタリング会社から自社に対して債権金額から手数料を引いた債権買取額が支払われます。
その後、自社は何も行う必要はありませんが、相手先は支払い期日が到来するまでにファクタリング会社に対し支払いを行う必要があります。
この際何らかの理由で支払いが滞った場合、債権自体が自社からファクタリング会社に譲渡されているのでファクタリング会社が相手先から取り立てを行います。
手数料は比較的安く、売掛金の1%〜5%が相場となっています。
他にも事務手続きで多少の出費が発生する可能性がありますが、2社間取引と比較すると大きな違いがあることがわかります。
この3社間契約ファクタリングは相手先の同意が必要になる点に配慮が必要です。
相手先の立場を考えた場合、自社の資金繰りや会社の経営状態の悪化を懸念する可能性があること、
及び、払いを渋る様な企業だと思われているのではないかという推測が働き、今後の取引に影響を与えかねません。
この様な理由から自社の立場からすればファクタリングで資金調達は行いたいものの、今後の取引もあるので相手先には知られずに行いたいと考えます。
この様なニーズに応えたのが2社間ファクタリングで、これを利用すれば相手先に知られる事無くファクタリングが可能となります。
2社間ファクタリングは自社がファクタリング会社にファクタリングしたい売掛債権について申し込みを行います。
ファクタリング会社はその情報を元に、相手先の信用情報や売掛金の内容を精査し買取額を決定します。
ここまでは3社間ファクタリングと同様ですが、2社間ファクタリングの場合この買取額に自社が同意すればそれでファクタリング契約成立となります。
その後、自社は買取代金をファクタリング会社から受け取りますが、3社間ファクタリングとは違い売掛金の回収は自社が行い、自社から後日ファクタリング会社に売掛金の回収額を支払います。
これなら相手先企業に通知せずに自社はファクタリングを行う事が可能ですが、その分ファクタリング会社にとってリスクが高くなります。
自社が資金繰りに困っている場合、相手先が自社に支払った資金をファクタリング会社に支払わずに運転資金に流用する可能性や、
税金などを滞納している場合はファクタリング会社に支払われるまでに差し押さえられる可能性もあります。
また、2社間取引はスピーディーに現金化が行え、相手先との関係を損なう可能性が低い反面、手数料が割高になります。
手数料の相場は売掛金の10%~30%になるため、手間がかからない分お金がかかる形です。
債権譲渡登記を行わなければ法的な裏づけがとれず、売掛金の所有権を主張できない場合があるためか2社間ファクタリングでは売却が成立すると債権譲渡登記が行われるのが一般的です。
注意したいのは、登記を行うと第三者がそれを確認することが可能になる点です。
取引先が確認する可能性はほぼ無いものの、銀行で大口の借入などを予定している場合、確認される可能性があります。
売掛金の債権化を行う事は収入が不安定になる可能性があるという事であり、融資を断られる原因となるケースもあります。
ファクタリングは2社間、3社間で分類する事もありますが、それ以外にも対象となる債権の種類によって様々なファクタリングがありそれぞれに特徴があります。
ここでは、代表的なファクタリングとして、一括ファクタリング、保証ファクタリング、国際ファクタリング、診療報酬債権ファクタリングを紹介します。
一括ファクタリングは、一般的に「ファクタリング」と言われているファクタリングの正式名称で前述の通り2社間ファクタリングと3社間ファクタリングの2種類の方法があります。
急に資金が必要になった時などに現金化のスピードが早い特徴があります。
その他のメリットとして、まず、支払い企業のメリットとして考えられるのが手形発行の作業コストや印紙税の削減です。
受け取り企業のメリットは手形の期日管理の作業コストや手形受領書の印紙税の削減が期待できる点と、売掛金・受取手形のオフバランス化で会社の財務状況が改善される点です。
保証ファクタリングは通常のファクタリング同様に売掛金や受取手形に対するファクタリングですが、債権の買取は行いません。
ファクタリングと呼ばれますが債権の金額を保証する保険的商品です。
なお、債権の売却よりも債権の保険的な性質を持つ商品で、相手先からの債権回収を行う必要もない事から2社間ファクタリングの仕組みで利用されます。
保証ファクタリングの流れは自社が保証してもらいたい債権を指定しファクタリング会社が相手先企業の信用情報などを元に保証料を決定し、それを自社が支払う事で保証ファクタリングが成立します。
ファクタリング会社から支払いが行われるのは相手先が倒産などで支払い不能状態に陥った時です。
この保証ファクタリングは建設業界でよく使われるもので別名「下請債権保全支援」と呼ばれます。
建設業界は元請けから下請けまで企業のピラミッド構造ができており、上の企業が倒産すれば、企業体力のない下請け企業まで連鎖倒産する可能性があるので債権の保証は重要な問題となります。
国土交通省も建設会社が保証ファクタリングで債権回収リスクを担保する事を推奨しており、
国から保証の利用について助成を受ける事ができます。(2017年度の場合、保証料率の1/2、上限年率1.5%までの助成が受けられます)
貿易の際に利用されるファクタリングとして輸出債権を対象になるのが国際ファクタリングです。
一般的に貿易を行う際には信用状(L/C)取引が用いられますが変則的な手法として国際ファクタリングが用いられる場合があります。
L/C取引の場合は輸出者と輸入者の間で売買契約が成立し商品を移動する事になった場合、輸入者が輸入地の銀行に対してL/Cの発行を依頼し、
輸入地の銀行から輸出地の銀行にL/Cを発行した旨を通知することで通知銀行から輸出者にL/Cが発行された事が通知されます。
この情報を元に輸出者は輸出の手続きを行いますが、このL/Cは銀行が輸入者の支払いを保証する書類で、L/Cの記載条件を満たして船積みを行えば輸出者が料金を受け取れるようになっています。
貿易では銀行が仲介する信用状で輸出代金を保証しますが、輸入国の制度などで信用状の発行が難しいケースや、代金回収を確実に行いたい場合は次の要領で国際ファクタリングが利用されます。
輸出者が輸出地ファクタリング会社に輸入者の信用保証の引き受けを依頼します。
この依頼を元に輸出地のファクタリング業者が輸入地のファクタリング業者に保証引き受けを打診し、輸入地のファクタリング業者は輸入者の信用情報を調査した上で保証を引き受けるかを決定します。
この時にファクタリング会社を利用する場合は輸入者への通知と同意が必要となり国際ファクタリングは3社間ファクタリングの仕組みを用いて行われます。
輸出者・輸入者・ファクタリング会社が承諾しファクタリング契約が成立した場合、輸入者は支払い期日までに輸入地のファクタリング業者に代金を支払い、
そこから輸出地のファクタリング会社に送金され輸出者に支払われます。
ファクタリングに手数料はかかりますがL/Cと比較すると必要書類が少なく、
輸入者の与信管理もファクタリング会社が行い輸出債権の決済保証も取立管理も行うので輸出業者としてもメリットがあるファクタリングだと言えます。
診療報酬債権に対して行う診療報酬債権ファクタリングになります。
通常保険診療では、病院や診療所は診察に掛かった費用の3割を患者から受け取り、残りの7割を国保や社保などの組織に医療報酬の明細書を発行して請求します。
この国保や社保に対し医療報酬の明細書を元に請求する債権を医療報酬債権といいます。
相手が私企業ではなく、国保や社保という公共の団体のため債権譲渡を行う事によって取引先との関係が悪くなる懸念もないので3社間ファクタリングの仕組みを使ってファクタリングされます。
3社間ファクタリングとはいえ、国保や社保の同意は必要なく、支払団体に通達が完了すればファクタリング会社から代金が支払われます。
診療報酬債権ファクタリングを利用するメリットとしては、新設の診療所などで早急に手元に現金が欲しい場合でも銀行の融資枠を削る事無く早期にキャッシュフローが改善できる事です。
しかし、現金が手早く入手できる反面3社間ファクタリングの仕組みを用いても手数料が20%前後発生する為、少し割高な資金調達手法であると言えます。
また、診療報酬債権に対するファクタリングなので病院や診療所しかこの仕組みを利用する事ができません。
介護事業者が介護保険サービスの報酬債権に対しファクタリングを行う場合も同様の仕組みが成立し、診療報酬債権ファクタリングの派生として介護事業者向けのファクタリング商品もあります。
ファクタリングは専門のファクタリング会社に依頼して行うのが一般的です。
ファクタリング会社は売掛債権を譲り受ける対価として代金を支払います。
3者間ファクタリングやノンリコースでの契約の場合、売掛債権回収はファクタリング会社が行うため、取引先が突然倒産した場合などの損失回避が可能になります。
注意したいのは、ファクタリング会社が厳しく審査を行うため倒産の可能性がある会社の売掛金の債権化は難しい点です。
また、取引にあたり手数料が発生し売掛金が目減りする点も注意が必要です。
短期的に資金を集中させたい場合や、売掛金回収に時間がかかる場合に利用するのが基本で、ファクタリングを前提に業務を行うようになると経営が圧迫されやすくなります。
既に限度近くまで融資を受けている場合もファクタリングであれば利用できることから、ファクタリングは銀行からの借入が難しい場合に利用されることもあります。
ただし、ファクタリング手数料は銀行金利より割高になる傾向にあり、スピード重視で現金化を依頼した場合、売掛金の3割程度が手数料で差し引かれる場合もあります。
手間は増えるものの1%程度の手数料から引き受けてくれる業者も存在するため、ケースに合わせた選択が必要になります。
融資枠に余裕がある場合は銀行から融資を受け、どの程度の期間で返済できるかを確認し比較するのが基本になります。
ファクタリングは早期に売り上げを現金化するために効果的ですが、急ぐほど手数料が割高になる確率が高まります。
3社間取引は手数料が割安な反面、交渉や調整が長引くケースも珍しくなく、急な資金の枯渇に対応しきれない可能性が出てきます。
大切なのは利用のメリットを明確にすることです。
資金難が予測される場合は早めに行動するのが重要で、リスクを避けるのが基本になるからです。
3社間取引のメリットは、手数料が安く済む点です。
場合によっては銀行の融資よりも割安になるケースもあります。
そのため融資を前倒しで完済し、キャッシュフローの健全化に利用する選択肢も登場します。
本来支払うべき利息を節約できるため、ファクタリングを利用する方が安くなる可能性があるのです。
取引先にある程度内実を話し、信頼を勝ち得ることも大切になります。
長期的な成長や財務の健全化に資金を充てることを明確にすれば、経営が危ないという誤解を解ける可能性があるからです。
手形取引で売掛金の回収が長期化することで手持ち資金が不足するケースもあります。
ビジネスモデルによっては、事業が順調でも手持ち資金が無いということは珍しくありませんが、トラブル発生時に手持ち資金が無いと対処が難しくなるのも事実です。
急な現金化を求められ、2社間ファクタリングを利用する企業も珍しくありません。
前々から行動をし、常に手持ち資金を確保しておけば機動的な対処も可能になります。
ただし、交渉作が多ければ不振を招きやすいだけでなく、交渉が長引けばそれだけ人件費がかかります。
手数料を節約できても総合的にマイナスになる可能性もあるため、あくまでバランスを考慮する必要があります。
攻めの姿勢で2社間ファクタリングを利用するケースもあります。
スピードが求められるビジネスは少なくなく、資金力があると認識された方が交渉がスムーズに進む可能性もあります。
交渉力や機動性の提示のために2社間ファクタリングを利用し、早期に取引をまとめることでその後のやり取りもスムーズに行えるケースもありますが、
乱発すると手数料で首が回らなくなる可能性もあります。
あくまで選択肢の一つであり、常に有効な手段にはなり得ないと言えます。
ファクタリングは担保にできる資産に乏しい中小企業が利用できる貴重な資金調達方法になっています。
ただし、ファクタリングの契約の違いや種類など、しっかりと特性を理解しなければマイナスに働く可能性がありますので注意が必要です。
とりわけ取引形態の違いと手数料の違いには留意が必要です。
資金繰りが苦しければそれだけ選択肢が限られるため、必要に応じて検討するのも良いですが、自社の状況に合う契約を行うことを念頭におきましょう。
いかがでしたでしょうか?
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