【女性活躍推進法の背景と問題点】 女性のキャリアアップ支援制度となり得るのか?
最終更新日:2019年07月30日
Mentor Capitalです。
今回は、女性活躍推進法の背景と問題点について解説したいと思います。
女性活躍推進法が施行されたことによって、女性の採用比率を向上させようとしたり、
管理職において女性の割合を向上させていくためにはどのようにすればいいか、
などと女性社員が社内で活躍するためにどのような策定をなすべきか終始悩まされ続ける企業が増加しているのが現状です。
女性活躍推進法の制定によって、301人以上が在籍する企業は自社に雇用している女性が活躍するに当たってどのような状況にあるのかを知るとともに、
今後どのようにあるべきかを予測しておかなくてはなりません。
そして、どのような計画を実行していくかを定めるとともに、社内に周知徹底させるに留まらず、社外にも公開しなければなりません。
さらに、定めた計画を労働局へ報告することなどが義務付けられています。
他方で、従業員数301人に満たない企業においては努力義務に留まっています。
女性がキャリアアップしていくための支援制度としては、この制定されたばかりの女性活躍推進法が近時において目立つものといえるでしょう。
女性活躍推進法には罰条に相当する条項は存在しないものの、法定された報告義務によって厚生労働省によるウェブページでのデータベースにて確認することが可能です。
もし報告をしていなければ、このデータベースに掲載されていないために、
第三者から女性のキャリアアップをおざなりにしているものと誤解されかねず、その会社の印象を悪化させてしまう可能性もあるわけです。
そうしたことから、未だ報告をしていなければ、すぐにでも報告できるように取り組む必要があるといえるでしょう。
報告を済ませている段階であっても、さらなる女性のキャリアアップに資するためにはどのようにすればいいのかと逡巡している経営者もいらっしゃるかも知れませんね。
そうしたことから、女性のキャリアアップに際して女性活躍推進法に基づく方途は、ほかにどのようなものがあるのかを解説していきます。
女性のキャリアアップないしは活躍を図り、ますます企業を発展させていきましょう。
【国としての意向は?女性活躍推進法制定に至る経緯】
日本は少子高齢化時代に突入し、このまま放置しておけば就業者の数が減少していくことでしょう。
国としてもかかる状況を受けて危機意識が顕在化し、女性の労働力に着目している次第なのです。
特に労働力として不可欠な30代で辞職している女性が顕著であるため、このような現状を打破していきたいと考えたものであり、
政府のする政策の一環として女性のキャリアアップの支援制度として、女性活躍推進法が施行されたのでしょうね。
無論のこと、これまでも男女雇用機会均等法や育児介護休業法に加えて次世代育成支援対策推進法など、
女性の労働に係る法律は存在していたのですが、勤労婦人福祉法の後継とも評される女性活躍推進法は、女性の意思を尊重する旨の法律でもあるようです。
現実に女性としても、仕事は継続したい反面無理は避けたい、管理職にはなりたくない旨の意見もあるでしょうから、
そうしたことを受けて女性であればすべからくキャリアウーマンに仕立て上げようという趣旨のもとで制定されたものではありません。
国の本心としては、女性を活躍させていこうというものかも知れませんが。
女性活躍推進法にも、女性のみならず男性との兼ね合いや女性の意思そのものを尊重する旨の文言も記載されているために、必ずしも女性が絶対に働かないといけないということではありません。
女性の仕事のみならず、生活にも配慮していることが特徴で、育児などの面からして生活面も密接な関連性を有するとされているほどです。
他方、従前からある男女雇用機会均等法は、労働環境における男女差別の撤廃が主眼であり、
この後制定された育児介護休業法や次世代育成支援対策推進法などによって、家庭と仕事とで両立できるように支援がなされてきたようです。
そのような法規が制定されても、未だ労働する上では、男性同様の勤務の仕方が求められてきたという慣習が継続されてきたために、今般の女性活躍推進法が制定されたといえるのでしょう。
【女性活躍推進法に照らして企業がすべき事項とは】
女性活躍推進法によって、従業員が300人を超える企業は、下記の事項を実践していく義務が生じます。
1.自社における、採用比率、平均勤続年数、労働時間、管理職などについて男女間でどの程度の差があるかを調査しなければなりません。
女性の採用比率や平均勤続年数が極端に少なくないか、管理職にどの程度の女性が存在するかなどといったことを確認するとともに、自社は今後どのように策定することが望ましいかを検討していきます。
2.上記のような状況を改善するためには、何を実践していけばいいか、具体的な目標を策定していきます。
一例を挙げれば、もし勤続年数に男女差が生じていた場合に、その差を「◯年以下に短縮する」などというように、
具体的な数値を指標として提示したものを企業内に徹底させた後、社外にも公開していきます。
3.このような目標を策定した後は、管轄の労働局へ報告します。厚生労働省は、このような報告をどのようにすべきかのマニュアルや入力を容易にするツールを用意しています。
ただ、これらの1ないし3の事項をいくら忠実に実践した場合であっても、単なる現状把握と要望に留まることでしょう。
企業はこれらの策定にも照らして、現況を反省し改善していくことが要求されてくるようです。
この点、厚生労働省は、企業が女性のキャリアップを意欲的に遂行できるように「えるぼし認定」という動機付けを設けています。
このえるぼし認定とは、いわば女性のキャリアアップなどに意欲的な企業に対しての評価のようなもので、一定の基準を満たすことによって認定されるというわけです。
【えるぼし認定とは】
えるぼし認定を受けることによって享受できるメリットには、国が供する公共調達などに際しての競争や落札などで優勢になり、
えるぼしマークを自社の製品に刻印したり広告や求人に掲載することが許可され、
女性がキャリアアップできるように取り組んでいる企業と評価されやすく、企業の印象が向上するために有能な人材の確保がしやすいことなどが挙げられます。
さらに日本政策金融公庫による一部の融資において、標準となる金利よりも低金利で融資を受けることも可能なのです。
公共調達で優勢になるということは、事業に際しても多大な享受があるといえることから、女性活躍推進法に基づく厚生労働省の取り組みは相当のものと窺い知れることでしょう。
しかし、えるぼし認定を得るためには相当難解な条件をクリアしなければなりません。
まず、
- 人材を採用するに際して競争倍率が男女であまり変わらないこと
- 平均勤続年数につき男女差があまりないか、あるいは10年ほど前から就業し10年程度勤続している従業員の男女差があまりないことに該当すること
- 法定時間外労働及び法定休日労働時間を平均して、いずれの月においても45時間に満たないこと
- 産業による管理職の女性比率が平均を上回っているか、過去3年以内に課長クラスに昇進した男女差があまりないこと
- 女性を非正規雇用から正規雇用にしたり、育児休暇取得後などに再雇用する取り組みを採用するなど女性のキャリアアップに係る仕組みが執られていること
以上のような条件があるのです。難関ではあるのですが、えるぼし認定を受けている企業は徐々に増加しつつあるようです。
【女性のキャリアアップについての企業の取り組み】
女性のキャリアアップに関して企業が取り組んでいた事項とは、女性がキャリアアップについて考慮できるようにし、
管理職に従事している者が女性に係る事情について把握することに努め、さらに能力を向上させていくような土台を作ること、
そして、女性に係る出産や育児に際してのサポート体制を執っていることです。これらについて詳論していきます。
キャリアアップの支援制度が法定されたにも関わらず、管理職を忌避していたり何らの興味がないという女性は8割以上にも上っているのが現実です。
管理職に求められる要件を問えば、女性の場合であれば、職務における能力に対する自信と回答する女性は6割以上であるのに対して、男性は2割弱という結果です。
これは何を意味するかというと、男性からすれば、出世することが当然のことである反面、女性からしてみると出世や昇進することはあまり視野にないということでしょうね。
女性がキャリアアップしていくためには、まず女性自らがキャリアアップに対してポジティブに受け止める必要性があるといえるわけです。
そのようにしていくためには、何らかのセミナーなどを設けるなど女性がキャリアアップを考慮する場作りが必要なのかも知れません。
女性活躍推進法のような法律が制定されたところで、一元的な管理職のイメージが存在しているのは事実なのですが、
女性活躍推進法の制定によりどのように変遷していくかが注目されるところでしょう。
女性が自らのキャリアアップを一顧だにしない傾向があるのは、管理職として育成されてきていない実情もあるかと思われます。
このような見地からすれば、女性が部下にいる部署の管理職からして意識改革する必要性があるといえます。
【女性がキャリアアップしていくためには】
女性が管理職に至らず退職してしまう最大の根拠とは、出産や育児に係る事項にあるでしょう。
現実として既婚であろうと未婚であろうと女性管理職に子供がいない割合は高いようです。
管理職に就業していながら育児をもこなす女性は現状では少ないといえるでしょう。
女性がキャリアアップを成し遂げるためには、出産や育児をした後であっても復職が容易であるように何らかのサポートをしていくことが重要です。
具体的には、育児休暇やフレックス制をさらに充足させていくこと、育児を支援していくための手当を支給したり、
ベビーシッターなどの導入をサポートするなどといったものが挙げられます。要するに福利厚生の一環として位置づけられるものです。
【女性が起業する場合にはどのような支援制度があるか】
■女性・若者/シニア起業家支援資金
ここで、本題から逸れますが、女性が起業するに際してどのような支援制度があるかを解説していきます。
女性であろうと男性であろうと老若男女関わりなく資金調達の必要性は生じてきます。
一例を挙げれば、男性の場合、若者やシニアでなければ融資対象として申請できないのに対して、
女性であれば年齢を問わず利用できる融資方法に「女性・若者/シニア起業家支援資金」という支援制度があります。
起業してから7年以内である起業家を対象とした支援制度で、男性であれば35歳未満及び55歳以上でなければ申請できないのに対して、女性であれば年齢を問わず申請可能です。
若者や女性にも起業の門徒を広げようと2014年から開始された制度で、融資限度額は7200万円とされており、運転資金としては上限額が4800万円です。
■女性小口創業特例
起業してから2年経過していない段階にある女性が申請可能な融資制度です。新創業融資制度の一環としてスタートしました。融資限度額は300万円です。
【最後に】
以上のとおり、女性のキャリアアップに係る支援制度となり得る可能性の高いといえる女性活躍推進法などについて解説してきました。
まさに当該支援制度といえることが明らかな女性活躍推進法も制定されたのですが、実務としてはどのように至るかは未知な部分が多いといえます。
女性活躍推進法に基づいて計画を策定したにしても、内実に関しては関与されないばかりか罰則もないために、
その企業次第としかいいようがありませんから、女性活躍推進法が本当の意味で女性のキャリアアップになり得るかは、まだ判然とはしません。
ただ、企業がどのように女性を取り扱うかを示さなければならなくなった以上、女性のキャリアアップとしては一応の進捗を来したというべきなのかも知れません。
女性活躍推進法の制定によって、企業がどのようなスタンスであるかを知ることが容易になるといえます。
そして、女性からしても、現在勤務している企業、または転職を検討している企業がどのようなものであるか、
キャリアアップしていくのに適しているかをあらかじめ知っておくことが可能となります。
いかがでしたでしょうか?
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