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私募債の仕組みは?利用する際のポイント3つ

最終更新日:2019年03月04日

 

 

Mentor Capitalです。

 

 

今回は、私募債について解説したいと思います。

 

 

 

私募債は、少人数を対象に資金調達する方法です。

同様に社債として扱われている公募債は不特定多数を対象にしますので相対する方法で、この私募債はベンチャー企業や中小企業の利用に適しているといえます。

国内では活用する企業が年々増加して来ていますが、他にも認知度の高い資金調達方が多くあるため実際に私募債の利用を検討しているという企業は少ないのではないでしょうか。

ここでは、そんな方達に向けて私募債の仕組みからメリット・デメリットまで徹底的に解説します。

 

 

 

 

私募債とは?

 

 

 

私募債はベンチャー企業や中小企業の資金調達手段として活用されているもので、別名「少人数私募債」とも呼ばれています。

広く支援者を集める公募債とは異なり、比較的小規模で行われる事から「少人数私募債」なる別名がついているのです。

「公募債」や「私募債」と呼ばれる事が多いのですがこの呼び方は通称であり、実際の証券取引上では「募集」と定義されているのが一般的となっています。

ちなみに私募債・公募債ともにどちらも「社債」として扱われています。

 

 

 

私募債の特徴

 

 

    • 「個人」ではなく、何らかの会社組織である「法人」を対象としている。
    • 金融商品取引法において、有価証券「取得勧誘」内で「募集」に該当しない事。(金融機関のみを相手としない場合、50名以上の勧誘を予定している事。)
    • 債権を発行する対象が50名未満である事、または金融機関に所属するプロの機関投資家に限定して発行する事が条件となる。(つまり49名が最大数となります。)
    • プロの投資家に限定して発行されるものは別名「プロ私募債」とも呼ばれており、少人数私募債とは区別される傾向がある。
    • 私募債を発行する際は一口の金額を設定する必要があるが、社債総額を一口の金額で割った際の数を50未満にする必要がある。
    • 公募債と比べて手続きが簡略化されている。
  • 私募債発行後も数は50名未満で一定としなければならないため、譲渡制限を設ける必要がある。

 

私募債には上記のような特徴がある事から、購入してもらう対象は「身内・知人・取引先」が中心となってきます。

 

 

社債の種類

 

上記ご説明だけでは少々分かりづらい部分がありますので、次は「公募債」や「私募債」を含む社債について詳しく見てみましょう。

社債はいくつか分類方法があるため、まだ理解しきれていない方などは少々混乱してしまう事があるいかもしれません。

先に登場した「公募債」と「私募債」は募集の仕方によって分けられています。

また、代表的な分類方法としては以下のように「性質」で分けるものがあります。

 

  • 普通社債(SB、ストレートボンド)
  • 転換社債型新株予約権付社債(CB、チャンジャブルボンド)
  • 新株予約権付社債(ワラント債)
  • 劣後債
  • 電力債

他にもいくつかあるのですが、とりあえず社債の種類についてはここまで理解しておけば問題ないでしょう。

更に社債の種類を詳しく知りたい場合は、下記HPなどを参考にして下さい。

 

 

 

銀行が取り扱う私募債

 

公募債とともに、企業が発行する社債として扱われている私募債。

大きく分けると「50名未満の債権者を探す」方法と「金融機関に所属するプロの投資家に限定して発行」という2つがあるという事は先ほどもご説明した通りです。

また、私募債は発行から募集まで銀行に依頼する事も可能です。

銀行が取り扱う私募債には下記の2つがありますので、念のため確認しておくのが良いでしょう。

 

 

銀行保証付私募債

 

その名の通り、私募債の元利金支払いを銀行が保証するのが銀行保証付私募債です。

発行に関する事務手続きが容易であり、社債自体は無担保である事から近年になって利用する企業が増加しています。

金利や償還方法など、取り扱う銀行によって細かな概要が定められています。

 

信用保証協会保証付私募債

 

上記の銀行保証付き私募債に対し、こちらは企業の社債発行を信用保証協会が保証する私募債です。

保障を受けるためには一定の要件を満たす必要がありますが、近年では基準が緩和した事によりこちらも増加傾向にあります。

 

国内の社債の現状

 

主に国内の投資関連の情報を取り扱う日本証券業協会では、1カ月・1年間ごとに社債の取引情報をまとめて公表しています。

今回ご紹介している「少人数私募債」とは内容が異なりますが、国内で社債がどのように取引されているのか、主要な銘柄などを知る事ができます。

社債の知識を深めるためにも、一度チェックしてみるのがおススメです。

 

 

 

私募債の仕組みや利用の流れ

 

ここからは、実際に(少人数)私募債を発行する時の仕組みや流れについてチェックしてみましょう。

先にご紹介した通り、(少人数)私募債には発行の仕方によっていくつかの方法や種類が存在します。

私募債発行の方法や種類ごとに分けてご紹介しますので、是非チェックして下さい。

 

50名未満、または金融機関のプロ投資家に対して発行

 

「50名未満の債権者を対象」と「金融機関に所属するプロの投資家に限定して発行」ともに、細かな違いこそあれ全体的な流れは同じようなものになります。

 

【事業計画の作成】

 

ベンチャー企業や中小企業向けの資金調達手段とは言え、公募債などと同じく私募債を発行する際には事業計画の作成が必要となります。

私募債で資金調達する際の目的、用途などをこの事業計画で明確に示しておかなければなりません。

この事業計画書は、下記の取締役や株主を納得させるために必要不可欠なものとなります。

 

【取締役会決議(または株主総会)】

 

少人数私募債を発行するには、会社内で取締役会の決議が必要となります。

当然ではありますが、これは資金調達が会社内の重要な事項として扱われているためです。

取締役会が無い会社の場合、株主総会で決議を行う事になります。

 

【募集要項の作成、引受人の決定】

 

募集要項には発行する私募債の利率、償還期限などを記載します。

のちにご説明しますが、私募債の利率や償還期限などは定められた枠内であれば発行する会社の裁量で自由に決める事が可能です。

一般的に利率は2.0%~5.0%、償還期限は3年・5年・10年というように選択されます。

募集要項の作成が完了したら、次に引受人を決定します。引受人の人数は50名未満にする必要がありますが、勧誘を行っただけでもこの人数にカウントされるため注意が必要です。

 

【社債発行趣意書の作成】

 

勧誘を行う際には募集要項とともに、社債発行趣意書を引受人に渡す必要性があります。

社債発行趣意書には発行会社の詳細な情報、私募債を発行する目的などを記さなければなりません。

引受人側としてはこの書類で私募債を引き受けるかどうか判断する事となりますので、社債発行趣意書の作成には十分な時間を割く必要性があるでしょう。

 

【社債取得者の勧誘、申込書の作成・提出】

 

社債発行趣意書まで作成する事ができたら、次はいよいよ実際に勧誘を行います。

上記でもご説明した通り、勧誘を行った人数は正確に把握する必要があります。

実際に引受人が決定したら、私募債を購入・申し込みの際に提出してもらう社債申込書を作成して交付しましょう。

社債申込書には引受人の氏名や住所、希望の購入口数などが記載されます。

 

【発行総額決定、募集決定通知書の作成と交付】

 

購入の口数、そして購入者の人数が決定すると私募債の発行総額は決定されます。

次に、引受人に対して募集決定通知書を作成し、交付します。この段階で私募債の引き受けが成立し、社債の申込人が引受人となります。

 

【申込金額の受取り、社債申込証拠金預証の発行と交付】

 

募集決定通知書を受け取った社債引受人より、私募債の申込証拠金を預かります。

次に、私募債の発行会社は申込証拠金の金額を確認し、社債引受人に領収証として社債申し込み証拠金預証を作成、交付します。

 

【社債原簿の作成】

 

私募債の引受人の情報は、社債原簿を作成し記録しておかなければなりません。

この社債原簿は会社法で作成が義務付けられているものであり、引受人の氏名や住所といった個人情報、発行した社債の枚数や金額、社債権の番号や取得年月日などを記入します。

この段階で、私募債を利用した資金調達はひとまず完了した事になります。また、ここまでで【事業計画の作成】からはおよそ30日の日数がかかります。

 

【社債の償還】

 

募集要項などで定めた利率、償還期限などに基づき引受人に対して社債の償還を行います。

償還が終われば、私募債におけるすべての流れは完了となります。

 

 

銀行保証付私募債、信用保証協会保証付私募債

 

銀行保証付私募債、信用保証協会保証付私募債ともに全体の流れは上記の方法と同じとなります。

50名未満の債権者を対象、または金融機関のプロ投資家に対して発行などの方法と異なるのは、以下のような点です。

 

  • 私募債発行時の事務などは銀行が行う
  • 会社が発行した私募債は銀行が買取り、引受人などを探す
  • 手数料や保証料が別途必要となる

 

必要な手数料は「財務代理人手数料」、「登録手数料」や「引受手数料」など複数あります。

それぞれ0.1%~1%未満が一般的となっていますが、資金繰りが安定していない状況などでは金額が大きく感じてしまうかもしれません。

銀行や信用保証協会の保証があれば間違いなく会社の信頼性は高まりますが、利用には十分検討する時間が必要となるでしょう。

手数料や保証料に関しては銀行によって異なりますのでご注意ください。

 

 

 

私募債のメリット

 

 

私募債を利用するメリットはいくつか挙げられますが、ここでは主に3つのメリットをご紹介しています。

 

金融機関よりも借入しやすい

ベンチャー企業や中小企業の資金調達手段として広く知られているものに、銀行などをはじめとした金融機関からの借入が挙げられます。

これらに比べ、私募債の場合は借入の際に必要となる保証人や担保、審査などが不要で簡単であるというメリットがあります。

公募債、そして私募債はその特性上複数人の対象からお金を借り入れるシステムです。

少々強引ではありますが、例えば100万円を1つの金融機関から借り入れるより、1人につき数万円を集める方がよほど簡単なのです。

 

コストを抑えられる

資金調達の際のコストを安く抑えられるのも、私募債の魅力です。私募債は公募債と比較して、証券会社への依頼や監督機関への申請等を必要としません。

また、公募債などで必要となってくる社債管理会社を通す必要が無い事、私募債発行の際に決定した利率を損金として扱えるなどコスト面でのメリットは多くあります。

自社で資金を集める「直接金融」である事から、銀行などの保証を受けない場合は私募債のコストは安く抑えられると言えるでしょう。

 

発行手続きが簡単である

主に上場企業が発行する公募債は一般的に幹事証券会社の引き受けが必要であり、有価証券届出書の届け出だけでも1カ月程度の時間を要してしまいます。

それに比べ、私募債は取締役会または株主の決議さえあれば発行が行えるため、非常に手続きが簡単であると言えます。

発行以外の手続きをほとんど行ってくれる銀行保証付私募債などを利用すれば、会社側が行う手続きは更に簡略化されます。

 

 

 

私募債のデメリット

 

 

私募債の発行基準は厳しい

公募債などと比べて発行手続きが簡単な私募債ですが、発行の審査基準は厳しいものとなっています。

私募債発行の際には会社の財務状態を厳しくチェックされ、基準に満たない場合は発行する事ができません。

ただし、私募債が発行できる=優良な企業であるという証拠にもなりますので、一度私募債を発行する事さえ出来れば会社のステータスが高くなるのは間違いありません。

 

銀行の私募債は手数料が多い

先にもご紹介しましたが、銀行を利用した私募債は「財務代理人手数料」、「登録手数料」など多くの手数料や保証金が必要となります。

銀行側も会社の私募債を取り扱う事で多くのメリットがありますから、特に決算期末である3月や9月に多くの私募債の勧誘が行われています。

保障が受けられる事をはじめ発行会社側にもメリットはありますが、金利など今後の手数料も考えて入念に検討を行う必要性があるでしょう。

 

 

 

私募債を利用する際の3つのポイント

 

 

基本的にキャッシュフローの改善としては使用しない

私募債の詳細事項は発行会社側が決定する事ができますが、基本的には2年から7年の間で償還期限が来るという事を理解しておかなければなりません。

償還期限に関しては、私募債を利用する際の事業計画でどれくらいの利益が出るかを元に算出するのがベストです。

運転資金やキャッシュフローの改善としてではなく、開発資金などを目的として私募債を利用すれば償還が出来なくなるような事態を避ける事に繋がるでしょう。

 

利率や償還期限の設定に注意

利率や償還期限は会社の財務状態・経営状況によって考える必要性があります。

このため、利率や償還期限の設定には迷ってしまう場面もあるかもしれません。一般的に利率は2%~5%が適当だと言われています。

また、運転資金ならば1年から3年、設備資金ならば3年から5年というように適切な償還期限が存在します。

どうしても迷ってしまう場合は最終的に、「期限までに償還可能か」を判断材料にするのが良いでしょう。

 

自社の情報開示をしっかりと行う

 

50名未満という非常に少ない人数で資金調達を行う私募債は、引受人・債権者との信頼関係が何よりも重要となります。

先にもご説明しましたが、事業計画や会社の情報などは募集要項や社債発行趣意書に記載する事となります。

また、これらの情報とともに会社の財務状況なども公開する事も必要です。

償還期限や利息の支払い時に引受人・債権者に対して状況報告を行うなどすれば、引受人・債権者との強い信頼関係を結ぶ事が出来るでしょう。

 

 

 

私募債の仕組み、メリット・デメリットまとめ

 

いかがだったでしょうか。

今回はベンチャー企業や中小企業の資金調達方法として広く利用されている私募債について詳しくご紹介させて頂きました。

私募債の仕組みやメリット・デメリットをしっかりと理解しておけば、実際に利用を検討する段階になったとしても慌てるような事はないでしょう。

メリットの多い私募債を積極的に活用し、是非自社の発展に役立てて下さい。

 

何か不明な点等が有れば、お気軽にメンターキャピタルまでお問合せ下さい!!