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グローバル化に役立つ「海外展開資金」とは?

最終更新日:2018年09月26日

 

 

Mentor Capitalです。

 

 

今回は、海外展開資金について解説したいと思います。

 

 

 

 

 

20世紀に入り、急速に経済のグローバル化が進展しています。

例えば製造業においては、中国や東南アジアの安価な労働力なしにモノ作りはもはや行う事ができませんし、中国の富裕層や東南アジアの経済成長を見越して様々な企業が海外に進出しています。

このような海外展開は大企業だけのテーマではなく中小企業においても検討しなければならない重要テーマですが、中小企業にとって海外展開は非常にまだまだ難易度が高い事です。

 

中小企業にとって海外展開が難しい理由は様々なですが一番大きいのは資金の壁です。

海外で事業を展開するという事は、ほとんど海外でゼロから創業するという事に近いので、日本の会社に商品や技術はあるかもしれませんが、

海外での販路を構築したり、仕入先を見つけたり、必要な現地人を採用したりという事はゼロから行わなければなりません。

 

よって、事業所を設立際には多額のお金が必要になりますし、事業が安定するまでは赤字を垂れ流しますし、

いくら頑張っても結果がでなければ撤退する必要がありますし、撤退のときには費用が掛かるからです。

 

このような中小企業の海外展開をサポートする融資制度が海外展開資金で、正確に言えば、日本政策金融公庫が行っている、海外展開・事業再編資金という融資制度になります。

本記事では、海外展開の重要性と、海外展開資金がどの様な場合に使えるのか、その条件について説明します。

 

 

 

企業経営における海外展開の重要性と資金難

 

 

導入で説明したとおり、産業のグローバル化が進んでいるので、中小企業においても海外展開は必須事項になっています。

例えば、この事をよく示しているのがファッション業界です。

明治時代日本の紡織繊維産業は明治維新以降日本の発展を支える重要な産業でしたが、もはや国内に縫製工場はほとんど残っていません。

縫製という産業は労働集約的な仕事なので労働力の安い場所に仕事が集まります。

 

例えばバングラディッシュは繊維産業が盛んで労働力も安いのですが、バングラディッシュと日本で同じような洋服を作ってもコストが何十分の一で同じ商品が作れるので、

日本のメーカーはこぞってバングラディッシュや中国に工場を立てて、日本の縫製工場は激減して、海外に工場を移転できない会社は、

一部の高付加値商品を作っている会社を除いて倒産か厳しい経営状態を強いられています。

 

このような事例は枚挙にいとまがありません。液晶ディスプレイやスマートフォンの半導体など日本メーカーの商品であってもあるとあらゆるものが海外で製造されています。

また、海外市場の魅力にも注目が集まっています。

例えば、世界での日本にシェアが高い産業としては建設機械や農業機械などがありますが、これらのメーカーはいずれ日本の建設業や農業が衰退していき、

海外の都市開発に伴う建設機械需要、農業の機械化に伴う農業機械需要を求めて積極的に海外進出を行って成功している企業があります。

 

このような事例を見ると、日本の中小企業であっても、価格競争に勝ち残るために、また新しい市場を求めて海外展開を行う必要があります。

ただし、この時に問題となるのが資金です。導入の部分で海外進出には様々なコストが掛かる事を示しましたが、海外展開できないから資金に余裕が無いのか、

資金に余裕が無いから海外展開できないのかというのは悩ましい問題です。

先ほどの国内縫製工場の例で言えば、国内で特に高付加価値の縫製を行っているわけではない会社が自己資金だけで海外展開しようとすると、

国内で縫製工場をしているから赤字で海外進出の事業資金が捻出できないと言いつつも、一方で黒字にしたいのならば、

海外進出して製造コストを下げなければならないというどうにもできない状態に陥ります。

 

もちろん、国内の多くの産業はまだこの様な致命的なジレンマを抱えるに至っていませんが、このようになる可能性は常に考えておいた方が良いでしょう。

このようなジレンマを解消するためには、自己資金だけで海外進出をするという発想を辞めて融資を受けて海外進出を行う必要があります

ただし、いざ海外進出をしようとしても、成長産業を行っていて調子の良い会社ならば銀行も融資を行いますが、

衰退産業で活路を海外に見出して、立て直しのために海外展開を行いたいという場合は銀行もリスクが高くて中々融資に踏み切る事ができません。

 

また、中小企業の場合は大口取引先が海外に進出するので、自社もサプライヤーとして海外に進出する事を求められて、

海外進出しなければ大口取引先との今後の取引に差し障りがでるのが海外進出せざるをえないという場合もあります。

 

このような場合、たとえ銀行から融資を断られても、海外進出しなければ日本の事業に影響する可能性があるので何としても海外進出する資金を工面する必要があります。

そのような時に役に立つのが日本政策金融公庫の海外展開資金で、正式な融資制度の名前は海外展開・事業再編資金という名前になります。

 

 

 

海外展開・事業再編整備資金の概要

 

 

では、海外展開・事業再編整備資金とはいったいどのような融資制度なのでしょうか。海外展開・事業再編整備資金の概要について説明します。

まず海外展開・事業再編整備資金とはどの様な費用に関する融資制度なのかですが、海外進出に関わる費用はもちろんの事、海外事業の拡大にも使用できます。

また、「事業再編」という名前がついている事からもわかるとおり、海外の事業所からの撤退や海外事業所の再編にも使用できる融資制度です。

 

 

 

融資の対象となる企業

 

 

この融資制度に応募できるわけではありません。海外展開資金を利用できる事業者は限定されています。

要件としては次の3つがあり次の3つのうちのいずれかに該当している必要があります。

 

 

1つ目の要件:海外展開を行う事が経営上必要であると認められる場合

 

経営上必要などうかの判断基準は、3つのありこれを全て満たしている必要があります。

 

 

    •  1.国内の事業の延長と認められる程度の規模を有する事
    • 海外に行って日本国内の事業とはまったく別事業を行う場合はこの融資制度を利用できません。

 

    •  2.海外に進出しても日本国内の本社は存続させておく事
    • 完全に海外に本社をおいて日本国内から撤退する場合はこの融資制度を利用できません。

 

  •  3.取引先の海外進出、原材料の供給事情、労働力不足、国内市場の縮小などの海外に進出しなければならない事業があるかどうか
  • 国内市場が十分なのに更なる事業拡大を目指して勝手に海外進出する場合はこの融資制度を利用する事はできません。

 

 

 

このような1番目から3番目までの条件を満たした企業は、海外展開する事が経営上必要であると認められるので1つ目の要件を満たしていると言えます。

 

 

2つ目の要件:海外における経済構造の変化に適応するために資金が必要な場合

 

具体的には、

 

  •  海外に展開している事業を再編する事が経営上必要である事
  •  再編を行った後も日本での事業は継続して、なおかつ中長期的に発展する見込みがある事

 

が必要だとされています。

 

 

3つ目の要件:海外事業の業績悪化によって日本国内の事業に影響がでていて、海外事業を再編整備しなければならない場合

 

上記の1つ目から3つ目もいずれかの条件満たせば海外展開・事業再編資金を利用する事ができます。

 

 

 

 

 

 

 

資金の用途

 

 

資金の使い道の幅は広くて、海外事業を行う為に必要な設備資金、事業の再編整備に伴う資金全体に仕様する事が可能です。

ただし、海外事業の場合は現地法人の株式を過半数以上取得できなかったりという事で、実質的には子会社だけれども制度上別会社なので、

その会社に資金を投入しようと思えば転貸が必要になる場合があります。

転貸資金については判断が難しいので日本政策金融公庫に取り扱いの詳細を問い合わせる必要があります

 

 

融資の条件

 

 

次に融資の条件について説明します。

 

限度額

 

日本政策金融公庫の国民生活事業から融資を受ける場合・・・7200万円のそのうち4800万円までが運転資金に使用できます

中小企業事業から融資を受ける場合・・・直接貸付7億2千万円のそのうち2億5千万円まで運転資金に使えて、代理貸付は1億2千万円までです。

 

返済期間

 

返済期間は国民生活事業の場合も中小企業事業の場合も同様で、
設備資金・・・最大で20年うち据置期間は2年以内
運転資金・・・最大7年でうち据置期間が2年以内
となります。

 

利率

 

利率は国民生活事業と中小企業事業によって違いますがそれぞれの基準利率が適用されて、中小企業事業の方は上限3.0%となります。

また、日本政策金融公庫が掲げる一定の条件を満たせばより低い利率での利用も可能となります。

 

 

 

海外展開・事業再編整備資金の申込方法

 

 

申込方法が通常の日本政策金融公庫から融資を受ける際の手続きと同様です。

 

個人事業主の場合

 

  •  直近2期分の申告決算書
  •  法人の場合は直近2期の確定申告書と決算書
  •  最近の試算表
  •  設備投資が伴う場合は見積書
  •  初めて利用する人は企業概要書と法人の場合は履歴事項全部証明書か登記簿謄本
  •  海外展開・事業再編整備資金を申し込む場合は海外展開事業計画書

 

上記の書類を用意して相談・申し込みを行います。

そのあと申込書が受理されて面談があって融資に関する相談を行い、公庫内で融資の決定がでれば、融資契約を結んで融資実行となり、その後に約束に従って返済していく事になります。

事業計画書に関しては海外展開事業計画書のフォーマット通りの資料だけを提出しても事業の概要を日本政策金融公庫に理解して貰う事が困難なので、

別途きちんとした海外事業の計画書を用意しておいた方が良いでしょう。

 

 

地方自治体などの補助制度も要チェック

 

 

また都道府県や市町村によっては海外への事業展開に対して補助金を出していたり、融資に対して利子の補助を行っていたりサポートを行っている自治体もあります。

例えば東京都においては、東京都中小企業制度融資として海外展開支援融資という制度があり、必要に応じて融資を行いますし、

海外展開に融資を受けたすべての事業者に対して信用保証料の2分の1を補助しています。

 

また融資を受ける金融機関を経由してジェトロの支援を申し込む場合、ジェトロの支援経費が累計1企業50万円になるまで、無料で支援を利用できるようになっています。

このように地方自治体が特別に海外展開を行う企業を補助している場合もあるので、活動している地域に何か補助制度が無いかは、

海外展開・再編整備資金に申し込む前に合わせてチェックしておいた方が良いでしょう

 

 

 

最期に

 

 

以上のように海外展開資金について説明してきました。

産業構造が著しくグローバル化している昨今、中小企業においても海外進出が珍しい事ではなくなりました。

大口の取引先の海外進出に伴って海外進出をせざるをえなかったり、国内の市場が縮小しているので海外市場に活路を見いたしたり、

価格競争力を保つ為に生産拠点を海外に移したりと理由は様々ですが、中小企業も積極的な海外展開を行っています。

ただし、問題となるので中小企業は資金に余裕が無いので、海外進出に必要な膨大な費用を捻出するのが困難であるという事です。

 

このような際に利用できるのが「日本政策金融公庫の海外展開・再編整備資金」です。

この融資制度は、海外展開が必要である、海外事業の再編整備が必要である、海外事業によって国内事業が影響を受けているなど一定の条件を満たす事業者が申し込む事がでます。

ただし、国内の事業を継続しない場合はこの融資を受ける事は出来ません。

 

国民生活事業の場合は最大で7200万円、中小企業事業の場合最大7億2千万円の融資を受ける事ができます。

返済期間も設備投資は最大20年以内、運転資金は最大7年以内の返済で利子の上限も中小企業事業は最大3%となっています。

 

 

【 申し込み方法 】

 

通常の日本政策金融公庫の融資と同様で必要書類を集めて申し込み

➠融資の面談を行う

➠公庫内の稟議を経て融資が決まれば契約書が送られてくる

➠契約書に必要事項を記入して公庫に送り返せば契約成立

➠融資が実行

後は返済スケジュール通りに返済していくだけです。

なお、海外展開・再編整備資金の融資を受ける場合は海外展開事業計画書という書類を提出しなければならない事には注意してください。

 

ちなみに、海外展開に使える制度は日本政策金融公庫だけではなく、都道府県や市町村などの自治体が独自の補助制度を設けている事があるので、

海外展開資金を申し込む前に、事業を行っている自治体の補助制度も合わせて調べておいたほうがよいでしょう。

 

 

 

いかがでしたでしょうか?

 

何か不明な点等が有れば、お気軽にメンターキャピタルまでお問合せ下さい!!